図書室のどこかにあったラブストーリー

白早夜船

ゆらゆらと揺れる小さなヤジロベーこんなに揺れても倒れないんだな


ぎこちない笑顔の仮面を取りはずし今日は素顔になれるだろうか


消しゴムをひとつ余分に持っていく。いつでも君に貸せるようにと


雨の日の六時間目を愚痴りつつ部室で寝癖をくしけずる指


夕さりに見つけてきたのは図書室のどこかにあったラブストーリー


放課後のだーれもいない教室で相合傘を書いては消した


じゃんけんでグーを出してと頼まれる。手は正直にグーを出してる


特別な力があると信じてた 七月七日並べた短冊


そっけない字面を読んで脳内であいつの声が再生される


夜が寂しいなんてそんなこと思う自分じゃなかったのにな




二週間前のあんたに激怒したあたしを今は殴ってやりたい




引退の前日までは残してた部室の机の小さな落書き


臆病な自分の絵馬の隣には合格祈願のニコイチの絵馬


嫌いって言えば嘘にはなるけれど でもあんなやつ、嫌ってるから


「笑うまであと五秒ね」と合図して 二秒でパシャリの集合写真


「卒業で離ればなれになるけどさ、いつでも連絡、待ってるからね」


本当に伝えたかった言葉ほど心の奥にしまいこんでて


道端の陽の届かない坂にある葉っぱを拾い押し葉にしてる


黒板に書き残されていた短歌 消さないでいる 消せないでいる


毎日のように来ていた学校も もう私らの居場所じゃなくて

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図書室のどこかにあったラブストーリー 白早夜船 @shirabaya_yofune

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