図書室のどこかにあったラブストーリー
白早夜船
*
ゆらゆらと揺れる小さなヤジロベーこんなに揺れても倒れないんだな
ぎこちない笑顔の仮面を取りはずし今日は素顔になれるだろうか
消しゴムをひとつ余分に持っていく。いつでも君に貸せるようにと
雨の日の六時間目を愚痴りつつ部室で寝癖を
夕さりに見つけてきたのは図書室のどこかにあったラブストーリー
放課後のだーれもいない教室で相合傘を書いては消した
じゃんけんでグーを出してと頼まれる。手は正直にグーを出してる
特別な力があると信じてた 七月七日並べた短冊
そっけない字面を読んで脳内であいつの声が再生される
夜が寂しいなんてそんなこと思う自分じゃなかったのにな
二週間前のあんたに激怒したあたしを今は殴ってやりたい
引退の前日までは残してた部室の机の小さな落書き
臆病な自分の絵馬の隣には合格祈願のニコイチの絵馬
嫌いって言えば嘘にはなるけれど でもあんなやつ、嫌ってるから
「笑うまであと五秒ね」と合図して 二秒でパシャリの集合写真
「卒業で離ればなれになるけどさ、いつでも連絡、待ってるからね」
本当に伝えたかった言葉ほど心の奥にしまいこんでて
道端の陽の届かない坂にある葉っぱを拾い押し葉にしてる
黒板に書き残されていた短歌 消さないでいる 消せないでいる
毎日のように来ていた学校も もう私らの居場所じゃなくて
図書室のどこかにあったラブストーリー 白早夜船 @shirabaya_yofune
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