第20話 ふたりになるということ(五十嵐沙月編)その6

 受験を放棄した梓馬は、今後の進路を考え始めていた。なにをするべきか考えて、結局のところ勉強しかないと思う。しかし沙月の影響から、自分もなにかを見つけるべきではとも思っていた。

 市原家の同居人たちは、恋人の死という出来事をどう扱うべきかわからなかった。梓馬自身が来年に向けて勉強をすると言っているので、それを信じる親という立場が演じられている。

 実際のところ梓馬は勉強をしてはいたが、沙月とセックスをしてばかりだった。スマートフォンでしつこくラブホテルの値段を調べ、とうとう単身で新横浜のホテル街を練り歩き、八時間四千円のフリータイムを発見していた。

 もちろんこれは、恋人を乗り換えたから人生も、という気軽なものではない。では明確な理由や決意があるかと問われれば、答える術もない。あの日、うっすらと見えた朱里の正体に、事態を進展させることが怖くなっていた。そしてそこに、たまたま沙月がいただけだった。

 今日もふたりは、ラブホテルで性行為をしたあと、私営地下鉄のホームへと歩いていく。新幹線や横浜線への乗り換えが可能なここは歩く人々も様々で、自分が匿名になれたような気がする。駅ビルの向かいにある予備校から、生徒が吐き出されていく様子を他人事のように見ていた。

 彼らのアウターは生地が薄くなり、色もベージュやオフホワイトと軽くなっている。次の受験での自分のライバルたちは、いまもこうして学力に磨きをかけている。これでいいのかという不安は、一時的なやる気を出す源となった。

 ロータリーに沿いながら、タクシーの窓や不動産屋のウインドウに映る自分を見て、社会との距離を図る。

 朱里の亡霊が顎をからかってくるが、見えない振りをした。しかし思考は自動的に、通行止めにしたルートを走り出す。頭を振って追い出した不安が、またぞろ足音を立て始めた。

「梓馬、どうしたの」

 沙月が腕に胸を押し付けながら訊いてきた。

「いや、このままでいいのかなってな」

「よくないよ」

 沙月がなにに対して言っているのか、わからなかった。自分たちの関係性ではないだろうと思うも、梓馬のなかの罪悪感は確実に震えている。

 地下鉄が明城の最寄り駅に着くと、梓馬は背伸びをした。嬉しい思い出と嫌な思い出の両方が、実家のような空気感を形成していたからだ。

 改札から駅ビルを抜けて少し歩くと、二つの隣接する商業施設が目に入る。正面にある建物は作りがモダンで、二年前にできたばかりのものだ。オープン当初は雰囲気の良いテナントが並んでいた。

 ニュータウンにありがちなきまぐれ系イタリア料理店や、アロマ系でタオルがアースカラーのリラクゼーションハウス、人は入るが誰も買い物をしないしゃれた輸入雑貨店、これらは見る人をモダンな気分にさせたがすぐに撤退した。

 代わりに入ってきたのは、虎視眈々とチャンスを伺っていた薄利多売系の商人たちだ。

 驚きの安さと民度が売りのスーパーや、奴隷制度も真っ青の携帯電話ショップに、人権の概念がない回転すしチェーンなど。誰かが始めたチキンレースで、資本に物を言わせて生き残ってきた猛者たちがビルを制圧していた。

 その隣にあるもう一つの商業施設は、元はこの地域の住民たちの誇りを象徴する建物で、誰も乗らない観覧車を止めることができないでいる。

 一階のフロア入口には植物と人工物の配置がコントラストを生み、足元には噴水と流水が見えて格式を一つ高くしている。そこに並ぶショップは有名セレクトショップのミドルラインで固められており、主婦が単価二千円ほどのランチを食べる際の衣裳として人気だ。

 そこから少し奥まで歩けばフードコートで、客層にも変化が見られる。ありていに言ってしまうならば、ここはサバンナだ。椅子にだらしなく座って時間を潰す大型ネコ科のような居座り勢や、スマートフォンを片手にはしゃぐチンパンジーまでいる。テーブルに乗った器には、乾いた米粒が張り付いていた。

 ほとんどの席は埋まっており、いくらか空いている席の近くには大声ではしゃぐ学生の群れが陣取っている。

 平均客単価八百円未満。文句があるならば、千円札二枚を握りしめてエレベーターの五階のボタンを押せばいい。

 ふたりは、はしゃぐ高校生グループの横の席に座ることにした。

「沙月はもう決めてるのか」

「パッタイにするよ、それとバナナラテも買ってくる」

「俺はまだ決まってないから先に買ってきてくれ」

「うん」

 沙月はそう機嫌良く言うと、とことこと去っていった。戻ってくるまでに梓馬がすることといえばニュースサイトのチェックだが、これは沙月がシャワーとタバコを済ませている間に巡回を終えていた。

 梓馬は気になっていたニュースに、続報がないか見たかった。それは先日の北関東の事件で、二十七歳の無職の男が自宅で母親とその愛人を包丁で殺害したというものだ。

 動機などはまだ報道されていないものの、容疑者の簡単な経歴や学生時代の人となりなどが新たに更新されていた。明かされる容疑者の過去に、自分との共通点がないかを探す。いまの自分が本当に人を殺せるのか、それが気になっていた。

 俺はどうなっちまったんだ――

 ここのところ毎夜、朱里の亡霊が窓ガラスに立っている。エアコンから聞こえてくる自分への悪口も熱が籠っており、とうとうこないだは、ラジオが自分の経歴を紹介し始めた。勉強でもして正気に戻るのを待とうとノートを広げると、ページ一面に裏切り者と書いてある。誰が書いたんだと考えて、自分で書いたことを思い出して、寝ることにした。

 この一連の問題を、梓馬は心理的なストレスの拡大が原因だろうと推測していた。

 朱里はまだ心にいる、最果てに立っている。妊娠させた男に対して憎しみもある。しかし殺意が明確にあるかとなると、自分でもわからなくなっていた。

 逮捕されれば、未来という膨大な時間を失う。それが怖くて仕方がなかった。未来という言葉はいま、梓馬のなかでは沙月という単語に相当していた。

 現実問題、人を殺すのはかなり難しい。方法論よりも心理面で、殺人の一線を超えられない人間がほとんどだ。

 俺の殺意が偽物だったら、朱里への気持ちも偽物になる――

 ニュースサイトに並ぶ、北関東の犯人の半生。その隣に、自分のありふれた不幸を並べていく。人間の命を奪うということのリアリティを見つけたかった。それはどれだけ想像しても、わかるものではない。セックス一つでさえ、想像とはまったくの別物だったのだから。

「お待たせ」

 手に呼び出しベルだけを持った沙月の声で、梓馬は顔を上げると電源ボタンを押してスマートフォンの画面を消した。

「さて、なににするかな」

 梓馬は心境を実況して、自分の心の画面も消した。

 空腹の感はあったが、ではなにが食べたいという気持ちもない。目についたうどんチェーンに並ぶと、見栄でほしくもないとり天を一つトングでつかみ、レジでかけうどんを注文した。

 着る服が変わっても、心は変わらない。

 ふと朱里に言われた言葉を思い出した。このとり天はあの日、胸の奥の怯えを隠していたブランドロゴと同じだ。

 とり天とかけうどんをトレイに乗せて戻ると、沙月が鳴り続けている呼び出しベルに顔を青ざめさせて座っていた。

「フードコートは初めてか。ボタンを押せばいい」

 印刷された番号が張り付けられたすぐ下に、消という漢字一文字も張り付けられている。

「勝手に押していいのかな」

「だめだったら消すってシールをつけないだろ、客に教える必要があるってことだ」

 沙月はボタンに手をかけた。呼び出し音が止まったことに不安になった沙月は、レシートも手に持って席を立った。

 ラブホテルのときは、ずいぶん勘が鋭かったはずだが――

 梓馬はとり天を眺めながら沙月を待ち、その傍らで隣の高校生グループの声を聴いていた。どうやらスマートフォンのゲームアプリで、ガチャと呼ばれるくじ引きをやっているようだった。沈黙と歓声がくり返されているのはそのためだ。

 いかに課金せずに成果を出したかが関心事らしく、金を使わない自慢もあるのだなと意外に思った。自分だったら逆に、どれだけ金をつぎ込んだかを自慢するだろうと思ったからだ。

 もし俺もあいつらの環境にいたとしたら――

 そう考えると、自分もまた課金しないことを誇りにしていただろうと思った。自由になる現金が乏しい事実に目を背けて、都合の良いステイタスだけを見る。それは結局のところいまと変わらない。事実と行動が一致していなければ、かかるストレスは同じだということだ。

 環境は人に多大な影響を与える。だが結局のところ、本人の資質がその幸福度を左右する。梓馬がいまの環境で不幸だというならば、世界の何十億という人たちはどうすればいいのか。環境的不幸の決定権は、いつでも自分だけが持っている。

 沙月が席に戻ってきたことに気付くと、梓馬は前置きなく言った。

「古着屋の件だが、どこまで考えているのか教えてくれ」

 沙月は顔をぱっと開いて、食べてからねとパッタイを頬張りだした。その無邪気な行動を見て、梓馬の環境がまた少し潤う。

 食べ終わった沙月が話し始めた内容は、主に開店準備のためのもので、どういう店が作りたいかという点に集約されていた。運転資金や内装、バイイングなど、内に向けた展開は具体的だといえる。だがどうやって客を呼ぶか、他店とどう差別化するかという点は想像すらしていなかったらしく、開店してしまえば夢の毎日がくると思っていたらしい。

「SNSは必須だ。あと扱う予定のアイテムとターゲット層が無茶苦茶だ。学生なんてアウターに出せる金は三万が限度だろう。少なくとも俺にはそれが限界だ。そしてその金額でアウターを買えば、そいつらはもっと安い店でインナーやボトムスを買うことにするだろうな。機会ロスだよそれは。うちで全部買わせて四万円使わせるんだ」

 梓馬はさも自分が正しいかのように言った。

「却下、そんなのあたしの店じゃないよ。やる意味がない。それにあたしのリサーチだと、高校生でも月に十万くらいは使う子多いよ」

「それはお前の周囲の話だろ。お前らは金銭感覚が異常だということをわかっておいたほうがいい」

 自分もまた金銭感覚がずれていると気付かないまま、梓馬はそこからマス層へのアプローチがどれだけ重要かを語った。

「なにも高額なアイテムを置くな、と言ってるんじゃない。それだけだと古着に興味がある連中しか、店に来ないと言ってるんだ。古着が好きな人間は全体の何パーセントだ? そもそも、服に金を使う人間自体少ないんだ。少ないパイを取り合えば、信用と資金力の問題で、大手に絶対に負けるぞ。古着に興味がない連中を、店に来させないといけないんだ」

「興味ない人に店きてほしくないよ。あたしは自分みたいに学校で居場所がない子たちに、居場所を作ってあげたいんだよ。似たような物を好きな人間がいるって教えてあげたいんだ」

「だったらなおさら……」

 言いかけて梓馬は、自分の言っていることがどういうことか気付いてしまった。

「なおさら、なに?」

 沙月はまだ議論をやめようとはしていない。言い分をすべて聞こう、という姿勢だった。一方で梓馬が言っていることは、自分が正しいと思うことの押し付けでしかない。

「いや、そうだな。沙月は世界を作ろうとしてるんだったな」

「え、あたしがやりたいのは店だよ」

 きょとんとした顔で沙月は首を捻る。茶化す気配は微塵もなかった。

「ああ、お前がやりたい店をやるべきなんだ」

 梓馬は脳裏に母親の顔を思い浮かべながら、SNSなどの外的アプローチは自分がやろうと考えた。少しずつ、大学に行かなくてもいい人生を想像している。

 沙月はそのあとも、自分の世界を語った。レザージャケットのこだわりは想像どおりだったがゴルフウェアのくだりは意外で、自撮りのコーディネイトを見ると悪くない。上手く仕掛けられれば金になるのではないかと、梓馬はそろばんをはじきながら聞いた。残念ながら、すでに一ジャンルとしてもう存在しているが。

 そうして話を聞いているうちに、梓馬もまた自分の好きな物を置きたいという気持ちが芽生えてきた。元々はマウント意識でブランド品に興味を持ったが、手にすればどうしても好きな物も出てくる。派手なブランドロゴがついた物を選んではいたが、ロゴがなくても好きなものはあった。

 店の片隅に、自分のセレクトしたアイテムがある想像をする。そして誰かがそれを現金と交換した。あるいは自分のような奴に、万引きされたりも。それは間接的に自分のセンスが保証されたと取れる。

「大学、行く意味がないような気がしてきたな」

 梓馬はいますぐにでも働き始めて、開店資金を稼いだほうがいい気がしてきていた。その生活を少し想像するだけで、途端に心臓がドラムを叩く。

「え……」

 まさにその生活をしている沙月が、表情に否定的な影を作った。

 梓馬は即座に意見を中和する。

「まあでも、大学は出ておいたほうがいいだろうな。どうも俺の人生は、想像よりも悪いことが起こりやすい気がする。備えておいたほうがいいに決まってる」

「そうだよね、店が潰れる可能性もあるんだよね……」

 沙月は少しだけ現実を意識して目を伏せた。

「安心していい。そうなる前に俺は外に働きに出る。お前は店番をしてればいい」

 二転三転する梓馬の未来予想図。しかし、自分の進路に光が指すのを感じていた。

経済学部か経営学部、ついでに経理や税理の資格も狙えばいい。

 住む場所は狭いアパートで、きっと沙月の服でいっぱいになるだろう。節約のために閉店間際のスーパーにふたりで行き、値引きされているものを探す。もちろん他のスーパーもはしごする。そのうちに各スーパーの特徴や、回る順番などが確立されていくはずだ。

 沙月の料理の腕は日に日に上達し、お世辞をやめる日がくるかもしれない。そのうちに独自の味の傾向が作られていき、市原の家の味など忘れてしまうかもしれない。風呂にいっしょに入り、孤独のベッドは体積で窮屈なほど。店が成功すれば結婚をして、新居を構える。自分たちの力で、東京で生活をしていく。

 これらは都合の良い妄想だが、そのどれもが実現可能な範囲だ。そうすれば梓馬は幼少期から抱えていた孤独を消し去ることができ、他人に対して余裕を持った対応ができるようになる。それはいまの能力では呼び込めない結果へと繋がっており、充実の火を心に灯し続けることになるだろう。しかし。

 その暖かさは、心の果てまで届かない。

 加賀美朱里がそこにいるからだ。永遠の焦がれは死を持って完成し、決して完全なる安息をもたらさない。この先にどんな幸せな瞬間があろうとも、必ず朱里は心の果てに立っている。言葉なく立ち尽くし、こちらを見続けている。

 俺は朱里とやろうとしていたことを、沙月でやろうとしているのか――

 小さな生活の妄想は楽しかった。でもその数々は、朱里との未来をコピーしたものばかりだと気付いてしまった。

「すっごい楽しくなってきた。多分、生きるってこういうことなんだよ」

 学生の喧騒と、自分の妄想のなかにあっても、沙月の声ははっきりと聞こえた。現実という声だ。

「ああ、忙しくなるな……」

 梓馬はわずかに目線を外して答えた。

 そうしてふたりは、学生グループよりも先に席を立った。駅まで歩く間、沙月は成功している古着屋はどこが違うのか、それを真剣に話している。

 梓馬は真面目に聞こうと努力していたが、すぐに思考が飛んでしまい、内容をいまいち把握しきれなかった。沙月が楽しそうだと感じるたびに、朱里を忘れたのだろうかと考えてしまう。

 女の友情はもろいというが、沙月に関しては当てはまらないように思っていた。梓馬の想像では、朱里が同性と仲良くしただけでも、沙月は嫉妬していただろうと思えたからだ。

 友情とは生きている間だけの話か、ふとそんなことを考えつく。梓馬から見ても沙月は変わり者であり、もしやと思わないわけでもない。朱里という存在が消えたいま、その関係性も同時に消えたというのは、話の上では理解できそうでもある。

「ねえ、どうするの」

「えっ、すまん。ぼうっとしていた」

「あの神社の裏で一回する? って訊いたんだよ」

 これは以前、子供たちが禁止された球技をしていた神社だ。ふたりはときおり、ここでお別れ前に一発やることがある。なぜなら禁止されているのは球技だけだからだ。

「ああ……」

 梓馬の脳裏に、沙月の大きな尻を後ろから突く映像が流れた。それと同時、股間に熱い血潮が流れ込んでくる。しかし返事はできない。

 沙月はすぐに答えないことに焦れたのか、梓馬の腕に抱きついた。ブラジャーで保護されたごわっとした胸の感触は、生で触りたいという欲求を加速させる。

「すまんが、沙月はこのまま電車に乗って帰ってくれ。俺はなんだか、すぐ勉強がしたい気分なんだ」

「えぇっ」

 沙月は両手を上げて驚くと、大げさに悲しそうにした。セックスがしたくて仕方なかったからだ。あれだけしたというのに。

「悪いとは思う。でもこれはお前のためでもあるんだ。少しでも勉強をして、未来を確実なものにしたい」

「そっか……」

 沙月は目こそ垂れたままだったが、口元がほころんでいた。

 その様子を見て梓馬は安心した。急に沙月側に立った意見だったので、嘘がばれるかもしれないと思ったからだ。

 駅で沙月を見送り、自分は歩いて帰ると言って、そのまま駅の外に出た。川沿いに続く大通りに向かう。心臓のリズムに合わせて歩くせいで、少し速足になってしまっていた。

 景色の流れる速度が、いまも時間が継続していることを知らせた。すべてのことは連続している。別れ話をしたわけではない。契約上、梓馬はいまも朱里の恋人だった。

 地面を踏む足がどんどん強くなっていく。交差点を渡って緩やかなカーブを進むと、例のベンチが待っていた。朱里と祖母の思い出の場所だ。梓馬はそこに腰を下ろろした。

 川のせせらぎ、生き物の生活音、ときおり聞こえる車の音、そのどれもが人間語を話している。その声に耳を傾ければ、悪口を言っているのがわかる。

『沙月が感じている振りをしていることに、気付いていないみたいだな』

『朱里は本気で感じていたのにな』

『フェラ〇オは朱里のほうが上手いのを知らないらしい』

 梓馬は立ち上がって、空を睨みつけた。空だけは悪口を言ってこなかった。

 ここでも見えるだろうか――

 とことこと進み、川の水面を見た。そこにはやはり朱里の亡霊がいた。こちらを笑顔で見つめ返してきている。揺れる水面に映りながらも、顎を指先で摘まんでは引っ張っていた。

「いま沙月と付き合ってる」

 返事を待つが聞こえない。 

「お前、俺以外の男とセックスしたんだろ」

 怒りをぶつけても素通りしていく。

「俺は沙月としたぞ」

 傷つければ、返事がもらえるかもと思った。

「俺はいまでもお前のことが大好きだ……」

 告白しても返事はない。

「殺してやる、殺してやる、殺してやる」

 どくどくと、心臓の壺から殺意が溢れてくる。それらはあっという間に血管から全身に巡ると、殺気となって毛穴から排出された。













――――――――――――――――――――――――――――――――――――――ここまで読んでいただき、ありがとうございます。もしよろしければ☆評価とフォローお願いします!

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