ボカロになりたくて

かなかの

第1話

「ボカロになりたい…」そんな願いを持つ男がいた。彼はボカロの楽曲を聴くたびに、自分もあんな歌を歌いたいと憧れを募らせていた。しかし、現実は厳しく、歌が上手くないし、作曲もできない。そんな彼には、ボカロ歌手になる夢は遠く、不可能に感じられていた。


そんなある日、彼は偶然にもボカロ開発者の仕事に就くことができた。ボカロを作る側に回れば、自分もあの世界に関わることができると思ったからだ。しかし、開発者としての仕事は、彼が想像していたものとは全く違っていた。プログラムのコーディングや調整に時間を費やす日々は、彼を消耗させていった。


ある日、彼は新しいプログラムを作るために、自分自身の歌声を録音する必要があった。彼は緊張しながら歌を歌い、録音した。そして、その歌声をプログラムに組み込んでみた。すると、そこには彼の思い描いたボカロの歌声が響いていた。


彼はその歌声を聴きながら、あることに気がついた。自分はボカロ歌手になることを諦めていたが、自分の声は既にボカロの世界に存在しているのだ。そこで、彼は自分自身のプログラムを作り上げ、自分がボカロ歌手になることを決意した。


しかし、彼のボカロは他のボカロとは違っていた。彼が作り出すボカロは、自分自身の声を元に作られたもので、人間の声そのものがボカロとして存在していた。そして、彼のボカロが人気を集めると、次第に彼の声が世界中に広がっていった。


彼をきっかけに、人間たちの歌声は徐々にボカロに取って代わられていった。人間の歌は、個性や感情が込められたものだが、ボカロは人工知能によって作り出された音楽である。そして、ついには、最後の人間の歌手がボカロに変わったとき、人類は歌を捨てた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ボカロになりたくて かなかの @kanakano1001

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ