第2話 幸福について

 お父さんは、不幸にはある程度定型があって、幸福に決まった型はないと思っている。

 だから、漠然と幸福になりたいと思ったとしても、それは何にもならないと思う。

 幸福という概念自体が漠然としているから、漠然と、漠然としたことを考えてみても、こんがらがるだけだ。

 そういう時は、なぜ今、自分は幸福について考えたのだろう、という問いに変えたほうが、筋道がつけやすいかもしれない。

 疑問そのものよりも、なぜそれを疑問に思ったか、に立ち戻ると、少し見晴らしがよくなることは、よくあることだよ。


 お父さん自身が思う幸福観は、探求心と関わりがある。

 何かを知りたいと強く希求して、読んだり調べたりして我を忘れている時、好きなことに夢中になっている時、そういう時が、おそらく幸福な状態なのだと思う。

 幸福が何かとか、抽象的な疑問が頭をよぎる余地がないからだ。

 だからお父さんは、自分個人の資質として、探求する心を重んずる。

 不思議と思える人間は、生きることに飽きる確率を減らせる。


 蛇足にひとつ。

 お金は人を幸福にしない。これは間違いない。

 ただ、お金は不幸になる確率を大幅に減弱してくれる。

 そういう意味で、お金と幸福は連関がある。

 お金については、また後日、話をするよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る