ゴブリンしかテイム出来ないけど俺様には丁度良い

ウメとモモ

第1話 テイマーな俺様は学校を卒業する



「お前のようなクズはこの家から出ていけ!我が家とは金輪際関わるな!」




俺が学校を卒業して家に帰った時に言われた親父の最後の言葉だ。



15歳までは義務教育として由緒正しい名門の学校に通わせてくれたが俺には期待されただけの才能がなかった。



その学校は【テイマー】の名門中の名門で、卒業した生徒は一流のギルドや城で働いたり、卒業前から有名になり活躍してる奴等が殆どだった。



俺も学年ではテストでは毎回ビリ争いをするような底辺の生徒だったがなんとか卒業する事は出来た。………が、働く場所は見つけられなかった。


担任には前代未聞だとも言われたよ。同じクラスの奴等の殆どには【無能】や【脳筋ゴブリン】ともバカにされていた。



それは俺には【テイマー】としての才能がなかったからだ。



100000人に1人と謂われるような激レアなスキルである【テイム】



普通で考えればテイムのスキルを有してるだけでも勝ち組なんだ。



【鑑定】【マジックボックス】【テイム】




この三つのスキル、どれかを持つ物は働き先には困らない筈なんだが、俺には仕事が見つからなかった。



その理由は俺のテイムの能力は【ゴブリン】しかテイムのスキルが発動出来ないからだ。

普通であれば【○○種】というようにその進化系や派生のモンスターが最低でもテイム出来るのに俺の場合は本当にゴブリンしかテイムが発動出来ないんだ。




そうだとしても仕事先が1つも見つからないのは学園で王子に嫌われてるのが1番の理由であるが、それでもテイマーとしての素質は底辺なのは間違いない。



家系的には【テイム】の才能がある筈なのに俺は別のベクトルで才能が傾いてしまっていたんだ。





「これまで血反吐吐いてまでヤってきたのに最終的には家から勘当されるなんて笑い話だ………」





小さい頃から親の期待に応えようと頑張ってきた。


勉強だって鍛練だって人一倍やって来た。



テイムの能力だって【ゴブリンしかテイム出来ない】としてもどうにかして他のテイマーと肩を並べられるように必死に考えて寝る間も惜しんで勉強して実力を付けようともした。




「それでも親父は俺を認めてはくれないんだな。」




無理もないのも理解はしている。俺の家はこの国の【御三家】とも謂われる貴族の1つ。


国を守る要とされる家柄の長男がゴブリンしかテイム出来ない無能なのだからそりゃあ勘当もするか。


弟はモンスターの中でも強くて有名な【デュラハン種】のテイムが出来る才能を持ち片や俺は底辺のゴブリン。


親族全員が弟に期待してしまうのは分かる。




それでも………





「頭で理解出来ても心は納得しねえよな!!



クソどもがあああ!!あー!!イライラしてきた!!クソがああああ!!」






マジでクソ!お堅い頭した親父も、学校で虐めて来た七光りの王子もこの国の奴等もクソしかいねえ!!



クソクソクソクソ!クソどもだ!!







「だからさっさと学校辞めちゃえば良かったんだよ?イライラするだけでしょ?」




イライラして大声出してる俺の横を一緒に歩いてる好青年が溜め息を吐いて困ったように問いかけてきた。



その好青年は俺の頭1つ小さな身長(大体俺が178センチ)でこの国では珍しい黒髪の中性的な顔立ちのイケメンだ。


それというのもコイツは違う国の留学生で俺の通っていた学校で共に卒業した生徒の1人だ。


学校で唯一出来た友達であり、そして俺の将来を心配してくれてる優しい奴だ。



そんな優しい奴の名前は アオイ ユウ。トウヨウという国の偉いとこの息子らしい。


俺の産まれ住んだこの国からは遠く小さな島国の出身らしい。




「それよりさ?どうせヴァリーは暇でしょ?良ければ僕のお手伝いしてくれないかな?」


「クソオオオ!!………お?ユウの手伝いってあれだろ?【ワイバーン】のテイムだろ?」


「そうそう!ボク1人じゃ大変だし、数も数だからさ?ちゃんと報酬も払うよ?」



元々ユウはこの国に生息するワイバーンというドラゴン種のテイムが目的で留学してきたらしいと本人から教えて貰った。


だけどテイムだけが目的で他の国からやって来たというと密猟になるらしく、国同士で問題が発生する。その為ユウはわざわざ学校に留学して暇を見つけてはワイバーンをテイムして自国に送り届けてるらしかった。



確か学校に通ってる間に50体は国に送り届けたんだよな?



というかその内の10体がテイム出来たのは俺のオカゲでもある。そのせいで俺のテイムしてたゴブリンが全滅してしまったがその分の対価はユウから貰ってはいるので別に気にはしていない。




「んー………別に良いぞ?どうせこれからヤることも決まってないしな。」



「ホント!?やった!!それな…」


「ただし!少し待ってくれないか?この前ので俺のゴブリンが一匹もいないんだよ。」



「あ………そうだった。ごめんね。僕がワイバーンの住みかに突っ込んじゃったから………。」



「イヤイヤ別にお前のせいじゃないし責めてる訳でもないからな?俺1人だと心許ないから、またゴブリンをテイムして戦力増やすからそれまで待っててくれないか?」




ユウには度々ワイバーンのテイムをする手伝いをさせられてるが、つい先日は人生で1番ヤバかった。


安全にワイバーンをテイムするには俺とユウだけではちょっとキツいし、ユウには悪いが少し時間を貰おう。



「待つのは全然大丈夫だよ!!むしろ僕の為になんかごめんね?」



「イヤイヤ、それこそ勘違いするなよ?俺のためにゴブリンが必要だからテイムするだけだからな?


別にユウの為じゃない。あくまでも俺のためにだぞ?」



「ふふふ!そうだね!じゃあヴァリーが準備出来るまで待ってるよ!!」








それからは他愛のない話をしながら町の宿へたどり着きユウとは別れた。


家には勘当されてしまったので町の宿で当分は住むんだが、金は持ってるのでソコソコのランクの宿で寝泊まり出来る。



宿を選んだ俺は荷物を部屋に置くと直ぐに部屋から飛び出し町の外にある近くの森へと足を運んだ。




時刻は夕方過ぎ、そろそろ夜になる時間帯だがゴブリンをテイムするには良い時間帯だ。






「さっさとゴブリンをテイムしなきゃな。」





暗くなる森の中にゴブリンを探しに入っていった。






学校も卒業して親からも勘当されてここからが新たな俺の人生の始まりだ。














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