会社

第1話

俺たちの会社はかなりブラックだ。社員を一気に入れたと思ったら、すぐにみんな辞めていく。

それもそうだ。丁寧に仕事は教えないくせに、昼夜問わず現場に連れて行かれるのだから。

俺も入って間もないが、その間に何人の同期が消えていったか。だが不思議と、すぐに次の新入社員が入ってくるのだ。社長の方針なのか、個性豊かな社員。年齢もバラバラだ。

気付けば俺はいつの間にか会社の中で古株になっていた。新しく入る新入社員を励まし、勇気づけたり辞めていく社員にエールを贈り温かく見送ったりした。

ふと、俺は気付いた。俺以外、社員が入れ替わっていることを。なんだ、この会社どこかおかしいのか。俺がおかしいのか。まともな人間は辞めていくのか。

だが俺は辞めれない。何故か絶対に辞められない。

「あれ？お前二千円札持ってんの？懐かしいな」

「あーこれな、なんか使わずに財布に入れっぱなんだよね」