そして、魔法使いは死んだ。
哀畑優
魔法使いの独白
「誰だって、孤独ってのは嫌なもんなんだ」
彼女はそう、主張した。
「人間は例外無く、同志を求めるし、理解を求めるし、共感を求める。そうじゃなきゃ、社会なんて生まれてないだろ?そこで生きようとなんて、しないだろう?」
彼女はそう、問い掛けた。
「大きな括りからハブられた奴だって、結局は違う場所に―――それはもっと薄暗くて、小さくて、汚い所かもしれないけど、そこに確かな安寧を求めて、集まるもんだ。本人は否定するかもしれない。だが、事実そうだ」
彼女はそう、突きつけた。
「優越感。承認欲求。正義感。存在証明。エトセトラエトセトラ。人間にそれらがある以上、群れるという特性が消えることはない。そいつらは皆、他人がいないと成立しないものばかりだからな」
彼女はそう、示した。
「逆に、もしそれらが無いなら、そいつは人間って言えるのか?少なくとも、私は言いたくない」
彼女はそう、固持した。
「ズルい論法だろ?どう転んでも、私の言い分が間違うことはない。でもな、それくらい自明なことだと、私は思うんだよ」
彼女はそう、嘯いた。
「『独りが良い』なんて言ってる奴らもいるよな。でも、そいつ等は気づいてないだけなんだ。自分がもう、人としてぶっ壊れてるってことにな」
彼女はそう、非難した。
「『孤独』──訪れるにはよい場所だが、滞在するには寂しい場所だ。全く、その通りだと思うぜ」
彼女はそう、引用した。
「人間として大切なものが欠けちまってることに、気づかないふりをしているだけだ。何でかって?戻れないからだよ。もしも気づいちまったら、本当に独りになっちまうからな。同族以外に厳しいのは、どこの世界も一緒だ。本当の意味で孤立する。だからそいつらも、必死なんだろう」
彼女はそう、諭した。
「私だって、そうだ」
彼女はそう、自嘲した。
「と言っても、私はもう少し素直だぜ?隠さない」
彼女はそう、笑った。
「私は、独りは嫌だ。独りは寂しい。独りは苦しい。独りは惨めだ。誰かに側にいて欲しい。誰かに理解って欲しい。誰かに慰めて欲しい。誰かに認めて欲しい。誰かに、受け入れて欲しい」
彼女はそう、叫んだ。
「誰かを求めることっていうのは、決して恥かしいことじゃない。それは弱いってわけでもないし、劣ってるって訳でもない。人間としては至極当たり前で、むしろ誇るべきことなんだ」
彼女はそう、結論付けた。
「……分からないか?そうだろうな。私も、偉そうに講釈垂れたが、今に辿り着くには随分時間が掛かっちまった。色んな奴と関わって。その度に傷つけて、こっちも勝手に傷ついて。そうやってやっと、胸を張って言えるようになった」
彼女はそう、省みた。
「だから、もし、もしお前が、『独りが良い』なんて思った時は……私が押し付けてしまった業に耐えきれなくなった時は……それは、危険信号に等しいだろう。お前が、お前でなくなる凶兆だ。分かるか?」
彼女はそう、諫めた。
「それだけは、理解していてくれ」
彼女はそう、今にも泣きそになりながら、そう訴えた。
どちらが子どもか分からないくらいに―――
涙目になりながら、小さく、静かに、しかし強く―――
私にそう、願ったのだ。
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