出会い、別れ(2)

 あの日話しかけられた後も、なんとなく交流は続いている。

 縁というものは不思議なもので、委員会活動で図書委員になぜか一緒になったり、席替えをしても隣同士なのが変わらなかったりと、学校では夏菜との縁が切れる事はなかった。

 いやまぁ、別に態々「切りたい」なんて思ってはいないけどさ、さすがにおかしくない?

 委員会はともかく、席替えなんてくじ引きだぞ?適当な番号が書いてある紙で適当に決めてるだけだぞ?

 珍しい事でもないんじゃない?と思ってるそこのあなた。違うんですよ。うちのクラスは一年間で三回の席替えがあったんだ。そして三回とも隣同士、と…。

 イカれてるだろ。

 終いには『夏菜咲々良のストーカー』なんて不名誉なあだ名まで頂く羽目になってしまった。何でだよふざけんなよ。何で俺なんだよ。

 夏菜も便乗して「そんなに離れたくなかったのぉ〜?」とか言ってニヤニヤするな。お前の筆箱に消しカス詰めるぞおい。

 他にも、この学校の生徒は特別な理由がない限り部活動に所属するのが原則とされているが、俺と夏菜は部活動には所属していない。

 夏菜は家庭の事情だそうだが、俺は先生に催促されながら悩みに悩みまくった結果半年が過ぎ、遂には「あぁ、あいつはダメだ」みたいに思われ、勧誘も催促も一切無くなった。理不尽。

 そんな事情もあって、俺と夏菜は放課後も一緒にいる事が少なくなかった。

 夏菜が「ここに行ってみたい!」と言えば俺はそれに着いて行ったし、「何か食べたい!」と言えばコンビニで買い食いをしたりと、基本的に夏菜の主導の元、俺は後ろを着いて行くのがデフォルトだ。

 …あれ?この言い方じゃ、ただのストーカーなのでは?

 いや、たまに俺が「ゲーセンにやりたいものがある」と言った時、「じゃあ、私も行く!」と夏菜が着いて来た時もあったから断じて俺はストーカーではない。そう思いたい。

 そもそも、いつも一緒に帰っていたわけじゃないしな。

 夏菜が友達と遊んで帰ったりして誘われる事がなければ俺は一人で帰るし、夏菜が用事で居残りさせられても俺は待つ事はせずに帰る。逆に俺が他に用事があったり、友達に誘われたりした時は夏菜とは放課後は過ごしていない。そんな感じの軽い関係だ。けど、夏菜を学校に最初に置いていった翌日は、登校して席に着いて横を見たら、めちゃくちゃ不機嫌な夏菜がいた時があった。

 その日以降、俺は夏菜が学校に残らなければならない用事がある時は「用事あるからちょっと待ってて」と釘を刺される様になった。

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