幽霊部員捕獲作戦編

第13話 見せないあの子 その1

「みんなー、今日もありがとー! チャンネル登録といいねよろしくねー!」


 少女は画面越しに手を振って笑い、停止ボタンを押して撮影を終えた。慣れた手つきでスマホを取り出して自分のチャンネルを開ける。ちゃんと動画が終わっているかを確認するためだ。


 画面に映っているのは少女ではない。一枚の絵が少女の顔の動きとリンクしている。

 パソコンの画面が真っ暗になると元来の少女の顔が露わになった。


 そこにはまさに芋っぽい顔の女の子……ではない。

 すっと伸びた鼻筋、大きな瞳、地毛にしては明るく金髪にも見える茶髪。そこにはまごうことなき美少女がいた。彼女は大きく伸びをし、「疲れたあ”あ”あ”……」と先ほどとはうって変わって汚い声を漏らす。


「……お嬢様、はしたないですぞ」

「うひゃあ!?」


 突然、声を掛けられて少女は椅子から立ち上がった。

 背後には執事がおり紅茶を入れている。


「じ、爺や! 勝手に入ってこないでよ! 配信中だったらどうするの!?」

「ちゃんと配信が切れていることを確認しております故。ご心配なさらず」

「わーいそれなら安心だ―、ってなるわけないでしょ!? 恥ずかしいから見ないで!」

「ご無体な。このようにちゃんとメンバーシップなる有料会員登録及び、スパチャなる課金支援もしておりますのに」

「え、何それメンバーなの? いやいやいや待って待って、GIYさんって爺やだったの!? うーわ、やだもう。やめてよ馬鹿ぁ!!」


 はっはっはと笑う爺やの入れた紅茶を、少女はぐびぐびと飲む。程よく冷ましてあるおかげで火傷はしない。でもちゃんと湯気が立っているあたり、雑妙な手腕だった。


 爺やはこほんと軽く咳をする。少女はそれが爺やの本題に入る前の所作であることを知っていた。姿勢を正した少女を見ると爺やは懐から手紙を取り出す。


「お嬢様、こちらを」

「……何これ?」

「天見殿からでございます」

「ひぇ」


 少女は受け取った手紙を持った手をめいっぱい伸ばして遠ざけた。苦々しい顔をして爺やを非難した。


「ちょっとぉ……なんてものもってくるのよ……」

「送られてきた手紙は受け取るが礼儀ですぞ」

「それはそうだけどぉ……」


 恐る恐る手紙を開ける。


『海馬めぐるちゃんへ。オカルト部に新入部員が入ったので、新入生歓迎会を開きます。幽霊部員のあなたももちろん参加です。拒否権はありません。近々お迎えに上がります。天見永依』


「ええ、オカルト部に新入部員……? またどんな弱みに付け込んだんだろ。というか何このお迎えに上がりますって……」


 少女――海馬めぐるは頭を抱える。波瀾の予感がしていた。


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