第470話 余興にも程がある。

「えーみなさん、今日は僕の結婚式に……」


 僕が喋りはじめたとたん、

 あたりが暗くなってコロシアム内がざわつきはじめた。


「おい、あれは何だ?」

「黒い渦が浮かんでいるぞ」

「むむ、あれは魔界のゲートではないのか?!」


 なんだか物騒な声が聞こえてきた、

 僕を見ていたソフィーさんベルルちゃんも急に杖を構える、

 ステージの真上、つまり僕らの上空に現れたのは……黒く巨大な影?!?!


(あきらかに只者ではない、どす黒い気配を感じる)


 無属性の魔力が少ししかない僕でもビリビリと伝わってくる。


「フハハハハ、我は真の魔王、お前達、勝ったつもりで居るようだな、しかし……」

「ホーリーアロー!」「クリアアロー!」「ぴゅりふぃけいしょんあろーーー!!!」


 ソフィーさんベルルちゃんベルベットちゃんが魔法攻撃をするも、すり抜ける!


「無駄だ無駄だ、これは魔界の奥深くから発信している、お前達の手が届かない所からな!」


 すごいなこれ、どこから映しているのだろうか、

 立体的な影は闇魔法だろうからダークエルフのレイミーさん関連かな、

 当のレイミーさんは……居ないな、うん、という事は彼女の演出、操作か。


「……まだ隠れていたのが居たのですね」

「しかし貴方達はもう、壊滅的ですわっ!」

「それはどうかな? 我が残っているいじょ……ぐふうっっ!!」


 急に巨大な黒い影が歪みはじめた?!

 それを見てソフィーさんベルルちゃんはニヤリとしている。


(悪い顔だ、たまに夜、ベッドでこんな顔を見るな)


 あーなんだろ、影は何かに全身をボコボコにやられている、

 大きな何かの固まりに囲まれて……苦しんでる苦しんでる!


「ぐあっ、ぐああっ、な、なぜ、なぜまだっ」

「こういう事態はもちろん、想定していました」

「ですわ、こちらも隠しておりましたわ、まだまだありますわ」


 あー、みるみるうちに黒い影がやられていく、

 うん、シルエットだけでよくわかる、これはもう……


「く、くそっ、この我がっ! がああっ、ぐぎゃあああああああああ!!!」


 あっ、なんだかバラバラになって飛び散った、

 影じゃなければグロいやつだ、複雑な立体の魔法だなあ、

 余興というよりボリネー先輩とこの新しい商売の宣伝かな?


(暗くなってたコロシアムも明るくなった)


 ソフィーさんたちが杖を引っ込める。


「さあミストくん、悪は滅びたようです」

「これでフォレチトンは未来永劫、平和ですわ」

「あっはい、ありがとうございます」


 なんだか会場から凄い拍手と歓声だ、

 僕が話しやすくするための演出かな?

 盛り上げてくれてるんだろうけど余興にも程があるよ。


「ウッホン、では改めてミスト=ポークレット公爵、頼む」


 イジュー先生にまで響く音響装置で頼まれちゃったよ。


(ええっと何を話すんだっけ、そうそう、例の、いつものやつだ)


「皆さん、余興を楽しんでいただいた所で申し訳ありません、

 この結婚式、あ、ええっと、改めまして、ミスト=ポークレット公爵です」


 あ、ちょっと笑い声が、うん、流れとしてはこれでいいかな。


「今日は僕の結婚式に、こんなにも大勢の人々が来てくれて、ありがとうございます」


 まずは客席に向けてだ。


「この一年でフォレチトンへの投資、融資を相当していただいたと聞きます、

 おかげ様でこんなに立派な都市を作ることができました、皆さんのお陰です、

 そしてまだまだ発展します、隣りのソフィベルランドも絶賛工事中のようです」


 そう、結婚式の当日なのに、

 いつもより工事の音がやかましいくらいだ。

 あのあたり防音魔法か何かかけていたんじゃなかったっけ、それはともかく。


「今日のこの結婚式で、ミストシティは本当に発展している事を証明できたと思います、

 ソフィベルタウンでは新たな地下賭博場も大人の遊戯施設も計画しています、皆さんどんどん、遊びに来て下さい!」


 これでどっかから見ている肉と肉のエクスタシー先輩も目がきらーんってなってるはずだ。


「もちろん家族連れも、良い子のみんなも楽しめる施設を作るよ!!」


 ちょっと弾けてみた、

 いや客席に子供も結構いるなあって思って。


「とまあ皆様への感謝はこれくらいにして、

 あっ、さっきの演出で泣いた子供がいたらごめんなさい、僕も知らされていませんでした!」


 さあ、気を取り直して、

 奥様方ならびに愛人の皆さんへの言葉だ!


(さあ、大事な場面だぞ、しくじるな、僕!!)


「えっとまず、ここに居るのは、愛人とか準愛人とか関係なく、

 十一人の僕の奥さんです、それは僕の中での決定事項ですっ!

 だめ貴族でも十一人も奥さんが居れば、そりゃあ何とかなるでしょう」


 支えてもらうのが前提である

  だめ貴族だもの。  ミスト


「そんな僕が出来る事といえば、僕が貴族である事かなと、

 つまり、貴族としての誇りを持ち続ける事が、僕の仕事です!」


 うん、だめ貴族が貴族ですらなくなったら、それはもう、単なるだめ男だ。


「そして、男として奥様方の期待に応え続ける事が、男としてのプライドです、

 そのプライドを捨てず、保ち続ける事が、僕に出来る最低限の仕事だと思っています」


 よって、それすら捨ててしまったら、だめ男どころか、もう『だめ』でしかない。


「つまり何が言いたいかというと、僕は僕です!

 その僕を奥様方が求めてくれる限り、貴族のプライド、男としての誇り、

 それだけは絶対に落として砕けたりしないよう、この先、生きて行きます!!」


 奥様方はみんな真面目に聞いてくれている、

 それだけでもう、ありがたい、こんな僕も言葉を……!!


(さあ、みんなに気持ちを、僕の本当に一番大切な気持ちを、伝えよう!)

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