第423話 爵位認証式を順番に 前編
魔法花火が派手に打ち上がった後、
引き続きバズーカ・ヤマーさんが芸名? ではなく
クゥオーワン=マウンテプルンという本名で音響装置が響く。
(控室にわざわざ挨拶に来てくれましたが省略)
「さあ、皆さま五ロシアムのステージ中央をご覧ください、
アルドライド国王陛下夫妻のご登場でございます!!」
王都グランセントにある城主謁見の間にあった、
豪華な椅子や赤い絨毯がわざわざ再現されている、
いやこれ多分持ってきたな、宰相さんと宰相代理さんも居る。
(そして陛下の警備は次期騎士団長と次期ヴァルキュリア騎士団長だ)
後者のデカ尻さんはつい先日、昼間っから更衣室で僕と、
などという事を回想している余裕なんか今はない、
僕は固唾を呑んで順番を待つ、まずはジンくん夫妻から。
「まず最初に騎士爵の授与からです」
本来はペラ紙一枚で宰相代理や騎士団のそこそこ偉い人が渡して終わりの物を、
ここまで豪華に、満員のコロシアムで授与されるとは、さすがS級冒険者のリーダーだ、
元々は悪い魔女の眷属にされていたが、今やもう立派な……あ、涙ぐんでいる。
(あっ、音響装置が宰相代理さんへ)
「ジン=ビーフェレットよ、アルドライド国王の名において、騎士爵を授ける!」
陛下夫妻も国王椅子に座ったまま頷いている、
さすがに騎士爵レベルだと直々のお言葉は無しか、
賞状を受け取りバッジをつけてもらって……膝を着いて深々と礼、うん、完璧だ。
(自然に拍手が沸き起こる、僕らもしなくちゃ)
ちなみに僕らは例によってステージ横の目立つ位置に座らされています、
僕とソフィーさんとベルルちゃんとリア先生とエスリンちゃん、
そしてその警備ということでキリィさんモリィさん、あくまで警備。
「以上、ジン=ビーフェレット騎士爵様への授与式でした、
続きまして、勇者爵の授与を行います、まず初めに……」
おお誰だろう、って十二英雄の生き残りで行けばあのお方しかいないか。
「ジェネラルモッコスことモッコス将軍です!!」
伝説の将軍登場に盛り上がる場内、
とはいえ先日の闘技イベントですでに登場はしてるんだけどな、
あいかわらずのバケツヘルムで顔見せはしていないけれども。
(隣りの背が低いバケツヘルムは奥様かな)
それにしても、ついに観念したかイジュー先生、
僕の学院の恩師がこうやってあらためて表彰を受けるのは、
おそらく僕の公爵に華を添え、箔を付けてくれるためだろう。
(あっ、今度は宰相さんが賞状を持った)
「モッコス将軍よ、アルドライドにおけるかつての数々の功績において、
ここであらためて勇者爵を授ける、今後ももしもの時は力になるように」
無言で頷くバケツヘルム夫妻、
ちょっと跪くのがお腹で大変そうな先生だったけど、
しっかり賞状を受け取り立派なごつくてでかい勲章をつけてもらった。
(勇者爵を逃げ回っていたらしいけど、僕のせいで観念したなら申し訳ない)
目立ちたくないからこそ、
あのバケツヘルムなんだろうな、
本来なら不敬とか言われても、おかしくない。
(あっ、喋らないまま観客に向けて決めポーズを!!)
そしてわざわざでっかい馬がやってきて、
夫婦で乗って退場して行った、いやあの馬、
魔物レベルででかいなあ、まるで出陣していったみたいだ。
「勇者爵の授与式、続きましてはアルドライド国における初の合同教会、
そのトップであらせられます……」
一瞬『えっ僕?!』と思ったが、
ズシーンズシーンと巨大なゴーレムがコロシアムをまたぐ!
「ベルベット総司教です!!」
おおー! 中に入ったゴーレムの手から、
ベルベットちゃんが降りて来た、ド派手な演出だ!!
(そして装飾品多すぎぃ!!)
頑張って着飾りました感はさっきも思ったが、
控室での解説によるとあれ全部、様々な魔法付与のあるアイテムらしい、
例えると魔法騎士が十数個師団、常に護衛しているようなものとかなんとか。
(そして今度も宰相さんが読み上げる)
「ベルベット総司教よ、王族含め数々のけが人や難病人を治癒したその功績、
今後の活躍も見込んで勇者爵を授ける、これからも期待しているぞ」
「はい、こくおうへいかのため、このくにのために、がんばりますっ!!」
おおーーー真面目に答えちゃったよ八歳児が!
ちなみにベルベットちゃんの出自は本気で必死に調べれば出てくるだろうが、
他国、隣国の子の可能性が高くなった時点で調べるのを止めたらしい。
(もうすでに事実上の養子とはいえ、さっさと僕とベルルちゃんとの男児と婚約させなきゃ)
今なら八歳差、いや九歳差で済むし。
などと考えていたらベルベットちゃんのそこに勲章をつけようか宰相さんが困ってる、
結局、いくつか装飾品をベルベットちゃん自ら外してそこに付けてもらっていた。
(そしてゴーレムの手まで浮いて戻ってズシーンズシーンと退場だ)
よく見るとコロシアムをまたぐ時、ゴーレム自体も浮いてるな、
錫杖をしっかり握ってるベルベットちゃんの魔法なのは間違いないが、
例のシャマルク魔法国から来たオナラ吹き込み団だっけ、あの連中が見てたら驚くだろうな。
「以上、合同教会総司教、ベルベット様への勇者爵授与式でした」
うん、実はこれが僕がアルドライド暗部の長に頼んだものだ、
表向きは合同教会での人命救助だが実際は帝国をたったひとりで倒した手腕を称えてで、
ゴーレムでの入場もわかる人にはわかる暗黙のメッセージだろう。
(いま動かしたゴーレムは魔法研究所産で、帝国を滅ぼしたのは別だけどね、あまりいう事きかないやつ)
今後あのブロンズゴーレムはお隣りソフィベルランドの名物守護神になる予定。
「名誉爵位は以上です、続きましてはまず男爵の授与式となります」
おお、次はいよいよ!
と思ったら空から雨がぽつぽつと……
(うわー、これから大事なタイミングで……)
うん、確実に間の悪い僕のせいだ
だめ貴族だもの。 ミスト
「ミストくん、あちらを」
「えっ? あっ、ベルベットちゃん」
引き返してにょっこり頭だけ覗かせたブロンズゴーレム、
その頭の上で錫杖を掲げるベルベットちゃん、すると……!!
(うわ、眩しい!!)
あっという間にコロシアムを覆う、
透明なバリアが雨を防いでくれましたとさ。
これも天候魔法に入るのかな? ベルベットちゃんの魔力、うん、半端ない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。