第292話 途中休憩もあるアンデッドダンジョン攻略

「あー、スネークスケルトンじゃなかったかぁ」


 中階層のボス部屋、

 上から数えて地下80階の大部屋に現れたのは、

 骨の翼をつけた人型スケルトンだった。


(あーでも姿が見えたとたん、浄化されていくううううぅぅ……)


 そして残されたのは闇魔石と頭につけていたピンクの冠だけ。


「ミストくん、今のはサキュバススケルトンでした」

「落としたのは『サキュバスの王冠』だと思われますわ」

「ええっと、それ魔法防御力とか上がったりするのかな」


 あとは空を飛べたり、感度が3000倍になるとか。


「詳細は後で、冒険者ギルドで調べてもらいましょう」

「フォレチトンへ持ち帰って、魔法研究所でも構いませんわ」

「それよりミスト、この部屋も隠し扉があるようだぞ」


 リア先生が壁をゴンゴンと叩くと、

 開いて今度は前より立派な感じの剣や鎧が出てきた。


「あっ、じゃあ回収します」


 全自動回収アイテム袋の口を開く僕、

 こうして中階層は何度かの転移(わな)のおかげで、

 40分くらいで通過できたのだった、難易度どこ行った。


「うーん、このまま本当にラスボスまで楽できるのかな」

「おそらくそうですね、気配的に」

「今のボスが浄化された所を見ると、最下層まで安全ですわ」


 ちょっと僕はそのへんに座ってみる。


「ミストくん、どうされました?」

「いや、本来の冒険者はこうやって休憩してたんだろうなって」

「ミスト様、でしたら休憩に致しましょう」


 キリィさんモリィさんがアイテム袋から、

 椅子やテーブルを出してカップに暖かい紅茶を淹れてくれる、

 こういうのって空気を混ぜるとかいうテクニックがあるんだっけ?


(最後の仕上げにお菓子が置かれた瞬間、ベルルちゃんがパクついた!)


 ちなみに丸テーブルに僕とソフィーさんベルルちゃんリア先生が座っていて、

 メイドの五人はそれを取り囲んで世話している感じ、ちょっと申し訳ない気持ちになる。


「それでミストくん、ここの攻略後の話ですが」

「あっはい」

「メラン国王は定期的に闘技大会を開催していて、

 それに参加して欲しいそうです、勝って国民に強さを示して欲しいと」


 あーそういえばS級冒険者パーティーになる条件だっけ、

 あとメラン自体に我々を、アルドライドを、フォレチトンを認めてもらうために。


(そうすればアンデッドダンジョン攻略も信じてもらえるだろう)


「でも対戦相手の冒険者って、お強いんでしょう?」

「ミストくん、相手はメラン国の兵士です、衛兵や騎士です」

「詳しくは私が説明しよう」


 ぐいっと紅茶を男前に飲み干すリア先生。


「メラン式集団決闘というらしい、6対6だが基本は5勝したら勝ちだ」

「つまりどういうことなんだってばよ」

「なんだその言い方は、まあいい、先鋒、次鋒、中堅、副将、大将でやる決闘はわかってるな?」


 あーうんそれはまあ、よくある集団戦だ。


「それって勝った方が残るパターンと、全5戦やるパターンがありますよね」

「ああ、今回のは前者だ、だがこういうのは互いのメンツのため、最後引き分けで終わらせる事が過去に多かったらしい」


 あー特に冒険者グループ対国の兵士じゃ、

 どっちもメンツを立たせないといけなさそうっていうか、

 メンツが大切なのは兵士の方か、それで大将vs大将を引き分けにして終わらせると。


(新しいケーキが追加されるや否やベルルちゃんがモキュモキュ食べてら)


「じゃあ6人目で完全決着を」

「そういう事だ、最後、大将同士が引き分けで終わった場合のみ、

 互いの総大将が出てきて無制限一騎打ち、それでも引き分けの場合は国王が判定を下す」

「つまり、なあなあでゆるゆるのだるだるのお約束みたいな結末は許さないぞ、と」


 面白いな、これは兵士さんたちも気合いが入るだろう。


「それでミスト、我々の、ポークレットファミリー側のメンバーなのだが」

「えっと僕が決めるのでしょうか」

「いやすでに提出してある、先鋒は私、次鋒はベルル、中堅はモリィ、副将はキリィ、

 大将はソフィー、そして総大将はミストだ」


 うっ、今の話の流れだと、最後の最後で僕が満を持して出る事になるのか?!


「リア先生、その、これって僕が出る事に最初からなってません? 最終戦がお膳立てされて」

「考えすぎだ、今回はミストに加速魔法をかけたり相手に遅くなる魔法をかけたりすれば国際問題になる」

「ですよねー」


 そうなったらわざわざ強さを見せるために来たのに逆効果だ。


「メラン国王によれば、本当に強いのであれば叩きのめしても構わないと言っている」

「じゃ、じゃあ」

「ミストが戦う順番は巡って来ない、私が保証しよう、出来なければ領主お仕置ベッドで全裸で吊るしてもらっても構わない」


 いやいやそんなことしないし!!

 それじゃあまるであそこが『領主が』お仕置をするベッドみたいになってしまう。


「ミストくん、リア先生の強さはご存じですよね?」

「うん、でも相手の強さも未知数ですし」

「その場合は、私が一人でも取りこぼした場合はベルルが完璧に勝つだろう」


 うん、ベルルちゃんはちょっと負けた時のイメージが湧かない、

 それこそソフィーさんレベルの相手で無い限り……ってそんなの居たら逆に見てみたいよ。


「ちなみに相手の総大将は例の、退役したドワーフらしい」

「ああ、ええっと確か、ジタフさんでしたっけ」

「わざと負けてくれる相手では無いからな、メンバーに入っているだけで観客に本気度は伝わるだろう」


 ……こんな形とはいえ、今度こそ本当に真剣勝負か、

 嬉しいと同時にそんな総大将に僕なんかを入れてもらって申し訳ない。


「それで、勝つと何か貰えるんですか?」

「メランの国王陛下から褒めてもらえるらしいぞ」

「あっはい」


 名誉か、この場合、今回はそれが目当てでいいのか。


「言えば何か見繕ってくれるだろうが」

「いえいいです僕は、ただそうなると逆にミストシティでも戦いたいですね」


 いや僕は戦わないけれども!


「ふむ、ホームアンドアウェイというやつだな、考えておこう」

「もしメンツを立てる必要があれば、ヴァルキュリア騎士団選抜でもいいですし」

「……それだがなミスト、結婚式と同時に正式に、フォレチトン領兵団を立ち上げる」

「えっ、いつのまに」

「常識だろう、もちろんヴァルキュリア騎士団とは別だ、あれは国王陛下から借りてるようなものだからな」


 そういえばそうだった。


「じゃあ男性も沢山」

「もちろんだ、そして団長はミストも知る人物だ」

「だ、誰だろう……」


 とまあくつろぎの時間を20分くらい過ごしたのち、

 休憩が終わって下層階、地下81階へ向かうのだが……


「あ、そうだ、この椅子とテーブル、残していきません?」

「ミストくん、その意味は?」

「ミスト様、帰りもここで休憩を取られたいのですわ?」


 アイテム袋へ仕舞おうとしてたキリィさんモリィさんが手を止めている。


「いや、ラスボスを倒したあと、それを確認しに来る人が、

 こんなに優雅に休憩してたのか余裕あるなあって見て貰うために」


 これだけダンジョンを浄化していると、

 最終ボスを倒した後、新しいボスとか生まれなさそうだし。


「ミストくん、攻略した後であっても、ダンジョンを汚すような行為は許されません」

「ですわ、せっかく入った休憩地点に前のパーティーが散らかした跡があったら良い気分しませんわ」

「それにミスト、この椅子とテーブルは意外と高いぞ、もったいないだろう」


 ちょっとした思い着きの洒落を奥様方に完全拒否された

  だめ貴族だもの。 ミスト


「ごめんなさい、やめておきます、はい」


 キリィさんモリィさんが仕舞ったのを確認して、

 いよいよラスボスへ向け下層階を攻略だー! ……攻略、なの、か? 攻略でいいのか。

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