第283話 本当は怖いボリネー=アビタラーナ
「りょーしょさま、またねー」
「領主様、冒険頑張ってー!」
「今度はソフィー様ベルル様を連れてきてねー!」
朝、珍しくひとりで孤児院へ行ってみたらこれである、
いやひとりといっても昨夜ばっちり仲良くなったエルフメイド三人を連れてだが。
(僕ひとりだと孤児院の子たちもなんていうか、気を使ってる感アリアリなんだよな)
サービスモードとでもいうか、
わざわざ領主様が朝食を一緒に食べてくれるからもてはやさなければ、
といった感じが五歳から十一歳くらいまでの孤児から感じ取れるから、なさけない。
(子供に気を使わせちゃったかも)
「僕ってそんなに魅力も威厳もないかなあ」
「いえ、慕われているように見えました」
「少なくとも色々な意味で慕われているかと」
「それにしても大人の女性も孤児に混じって学習していましたが、あれは」
エルフメイドが背の低いのから順に答えてくれた、
大人の女性ってああ、ナスタ国の王子レブル様の、
記憶消した婚約者たちの事かな、聞いてないのか。
「実はあれは元は悪女というか……ってあれ?」
朝から大量にやってきた馬車、
サンネイズ商団の大人数用馬車だ、
中からぞろぞろと大量の観光客が降りてきた。
(すごい人数だな、そういえば今日はサーカスか)
しかし降りてくる客は家族連れとかはほとんどいなくて、
若い男性が中心で、その男性はなんていうか、全体的に、気持ち悪い。
(いや、これを口に出す訳には)
僕はルビエンさんに尋ねてみる。
「色んなタイプのボリネー先輩みたいなのが大量入荷だけど、これって」
「サンネイズ商団の立ち上げたボリネーサーカス団は、亜人の美女と、
セクシー系ティムモンスターを中心にしておりますゆえ、そのファンが」
「ああ、その追っかけがこんなに、それでかあ」
それは今日のサーカスが楽しみになる、
準愛人の枠をひとつ残しておいて良かったって事に……
なんてやましい目で人定めしてたらそりゃ悪徳領主だよ!
(あ、馬車降り場の先に屋台がいっぱいだ)
ボリネー先輩が自ら場所を見定めた屋台村、
寒い朝にぴったりな串焼き、汁もの、焼き饅頭なんてのもある、
その屋台を見回っている肉塊がお供に獣人の奴隷を連れている。
(よく見たら褐色の、ダークエルフの奴隷も連れてるや)
僕が近くまで行くとすぐに気付く、
サラダバーなのに鳥系魔物の蒸し肉ばかり摘まんでいそうで
それ野菜と一緒に食べるために置いてあるんですよって注意されそうな肉先輩。
「おはようデュフ」
「ボリネー先輩はバイキングで包む系野菜と一緒に鶏肉あったら、
サラダよりその肉だけ摘まんで喰うタイプですよね? おはようございます」
「そんなことは無いデュフ、意外とサラダを多めに盛るデュフ、
ただしドレッシングをサラダが埋まるくらいかけるデュフ」
さすが肉塊、そこに痺れない憧れない。
「それにしても屋台、賑わってますね」
「長旅だったデュフからね、お水はそこの噴水で無料なのも良いデュフ」
「抜け目無いですね」
という訳で『4コマ漫画 お肉さん』の主人公と一緒に屋台を見て回ると、
一番人だかりのある屋台にたどり着いた、そこは『オークドック』とかいう店らしい。
「意外とベルベットちゃんのフォローをしてくれている肉先輩、オークドックって何ですか?」
「あの少女にはボクちん、ほとほと困っているデュフ、オークドックはデュフね、
オーク肉を細長く加工したものを、真ん中を裂いたパンに挟んで売ってるデュフ」
「あー、ほんとだ肉が収まっている、だからドックなのか、船の収容みたいに」
で合ってるのかな意味。
「パンと肉が一緒デュフ、朝食に最適デュフ」
「店員さんも忙しそう、あの女性店員ずっと何か喋ってますね」
耳を傾けるとロクな事を言っていなかった。
「はいそこのキモい人どうぞ、次は眼鏡のキモいのね、
あ、そっちの汗臭いキモいの、おつりおつりー! 投げるよ!
そこの爆裂にキモいの、列進めて! あーここの客みんな、きんもーっ☆」
忙しすぎてパニックになっているのかもしれないが、
さすがに観光客相手にキモいキモいは言い過ぎだと思う、
購入している客も半分は笑って済ませたり無反応だが、残りは表情が……
(さすがにここは領主として注意しようかな)
と思ったらボリネー先輩が物凄い勢いで屋台へ入って行った!
「ちょっと割り込みは……オーナー?!」
「お前は外へ出ろ」
うっわ、今まで聞いた事のないドスの効いた声、
しかも語尾にデュフをつけず、真剣に怖い顔をしている!
「いま忙しいの見てわかるっしょ、オーナーでも」
「うっせえよお前みたいな奴は物を売る資格がねえ」
「ちょ、ちょっと迫らないで、き、きもいから!」
ずいずいと圧力で屋台から出しちゃった。
「俺はいいんだよ俺は、俺は何言われてもいい、
むしろ美味しいと思ってるよ、だがな、
お客様に対してそれはねえだろ、客の気持ち考えてねえだろ、あー?」
こええええええ!!
それにしても『吾輩』でなく『ボクちん』でもなく『俺』って。
「いいじゃん、仕事はやってるんだからあ!」
「お前のやってるのは仕事以前の問題なんだよ!
金なら今日の分まで払ってやる、さっさと出て行け、二度と近づくな!
ブラッザ、ジャルム、コイツをとっとと連れて行け!」「「ははっ」」
奴隷獣人女性ふたりに引きずり連れていかれる失礼な女店員、
代わりに誰が売るのかと思いきやボリネー先輩が中に入った。
「さあお待たせデュフ、おいしーおいしーい、オークドックデュフよー!
あっ、そこのお嬢ちゃん、サービスデュフ、半分どーぞデュフー!」
数少ない親子連れの少女に半分あげるボリネー先輩、
切り替え早いな、そして立派な商人だと再確認させられた。
(うん、フォレチトンの商売は肉塊様に任せれば、間違いないな)
感心しながら僕らはサーカス会場へと向かったのだった。
(にしてもあの店員は酷かったなあ)
と思いつつ『キモい』と言われて喜んでいた客にも、ちょっと同意する
だめ貴族だもの。 ミスト
一部のマニアには、ご褒美です!
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