第282話 ベルベットショッピングセンター キーワードはベルべ!
私が戸惑っていると遅れて階段をボリネー=アビタラーナ卿が上がってきた。
「ベルベットショッピングセンターへようこそ! キーワードは、ベルべ!」
「ベルべデュフ!」
キーワードとは何の事だろう?
「貴殿も『ベルべ』と言わないと買えなくなるデュフよ?」
「ベルべ! ……これで良いのですか?」
「はいごうかーく、という訳で女神像本体まで来た方は、
女神様への恩を一生忘れないため、お土産を買ってくださー!」
綺麗なテーブルに並べられた品々、
合計で五十、いや六十くらいあるのだろうか?
左が高価で右が安くなっていくようだ。
「おすすめはこちらでー!」
一番左の高価そうなクリスタル女神像、
先ほど感じた治癒の魔力をうっすらと感じる……
早速、アビタラーナ卿が興味を持った。
「まさかこれは、先ほどの女神像と同じ素材デュフ?」
「素材はそうです、ししょーにてーきょーして貰いました、
ただ加工やまりょくちゅーにゅーはベルベットなのですえっへーん」
胸を張っているが、かわいい。
「だから女神の彫りが不格好で顔が変なのデュフね」
「お肉は自分の事を言わない!」「デュフデュフデュフ」
我が娘も手に取って眺めている、
ふむ、確かに女神像にしては顔がそのなんというか適当だ、
何せ顔の部分がこれだ、こうなっている。
め め
が
み
それでも透明なこの素材自体が、
とんでもない価値なのは見て取れる。
「それでおいくらデュフ?」
「白金貨十枚でぇーっす」
「高いデュフ」
……正直、手が出ないが、
どこかの国や街が新しく教会を作るとなったら、
その御神体にできるレベルである事は間違いない。
(値段を聞いて娘のアリアが慌てて戻した)
「色違いのこれは安いデュフ?」
「これは四属性魔石でー、一体白金貨一枚でー!」
「でも顔が同じデュフ、これを拝むのは抵抗あるデュフ」
確かに。
「ではこちらのティアラやイヤリング、ネックレスはー」
「これ全部、ベルベット様が造ったデュフか?」
「それはですね、テーブルにある物は全てベルベット大司教様のお手製です、
もちろん女神像のように素材そのものは頂いた物もありますが、魔力注入は全て」
と、離れて見ていた神官クルケが店員のようにフォローを入れた。
アリアが目をきらきらさせながらアクセサリーを見ている、
思えばこういうものを選ばせてあげられる事は今まで無かった。
(付けても今、胸にある亡き妻のネックレスくらいか)
そう思って見ていると金具の部分が同じペンダントを見つけた。
「これは綺麗だが、宝石の部分がこれは、砂?」
「それはー、まものたんちペンダントでー! 魔物の方向に引き寄せられまー!」
首にかけてみせるベルベット、
その砂を閉じ込めてある部分を手に持って、
ぐいっとアビタラーナ卿の方へ引っ張って見せる!
「こんなかんじでー、それほど強くはないから、つけたままにげられまー!」
「吾輩を魔物みたいに言う子はやはり、ベルル様に言いつけるデュフ」
「た、例えばだから、教えただけだから、お願い許してええええええ!!」
よっぽどそのベルル様が怖いのだろう、
アビタラーナ卿もデュフデュフと笑ってらっしゃる。
「ベルベット様、この値段は」
「金貨十枚でー、みっつセットなら二十七枚にしまー!」
この先、アリアが成長して、
他の町に出たり山に入ったりした時に、
近くに魔物が来た時の信号、警告にはなりそうだが……
「この砂、細かい魔石デュフね」
「そうでー! 土魔石を砂のようにして魔力を込めましたー!」
「素晴らしい魔力デュフ、早く量産化するデュフ」
「んー、まだちょっと、できふできがあるのです!」
クルケ神官がテーブル全体を両腕で示す。
「こちらはベルベット様が魔力の練習で作った物です、
多少、不完全であっても売るに十分な物でありますから、
それをこのようにお土産として販売しております」
ケーキ職人が試作品を安く売るようなものか、
もしくは弟子が作ってみたものを試しに売るような。
「この指輪は何デュフか?」
「これはぁー、運が上がるように祈った指輪なのです!」
「実際に上がるデュフか?」
「買っていただいた方の気持ち次第でー!」
「うさん臭いデュフな」「お肉様の顔の事?」「やはりベルル様に」「やめてー!」
テーブルの一番右に置いてあるのは単なる石だ、説明を聞こう。
「ベルベット様、この石は」
「ベルベットがぎゅーーっした石でえす」
「魔力は入っておられるのですか」
「まあそれなりにー、あと字を書きましたー」
「……確かに」
かわいらしい字でインチキと書かれている。
「これはおいくらデュフか?」
「銅貨一枚でー!」
「買ったデュフ!」
一番安いので済ませるようだ。
「まいどありがとーーーー チッ」
「いま舌打ちしたデュフか? したデュフね?!」
「しりませーーーーー!」
結局、娘が選んだ普通の水魔石ペンダントを金貨一枚で買った。
(これでもなけなしだ)
「ではこちらへ」
神官に誘導され上がってきたのと別の階段を下ると、
出口が見えるがその前にお金を入れる場所があった。
「こちらではお気持ち程度で構いません、拝観料を」
支払いが二種類あるとはこの事か、
最奥の女神像を見た者は払える金額で何かを買い、
そして最後にこの教会に入った者は入場料をいくらでも良いから払うと。
(本当に弱い者が命を助けてもらっても、銅貨二枚で済むという訳か)
「こっちは普通のお布施デュフ、普通に払うデュフ」
金貨二枚を放り込んだ、目がくらむ。
「え、では私は」
「無理しないで良いデュフよ?」
「いえ、では二人分という事で」
私は銀貨二枚を入れる、
拝観料入れの向かいに立つ三十代くらいの聖女に頭を下げられた。
「ではおげんきでー、なおってなかったらまたきてねー!」
大きな杖をブンブン振るベルベット様、
私はそれに深く深く頭を下げる、隣のアリアも、獣人も、アビタラーナ卿も。
「パパー、いっぱいたべなさいってー」
「ああそうだな、この時間でも開いているのだろうか」
「冒険者ギルド隣の食堂は開いているデュフよ、一緒に行くデュフ」
「よろしいのでしょうか」「わぁい」
「いつもツアーでお世話になっている恩返しデュフ、朝食はご馳走するデュフ」
(……本当に、現実に起きている事なのだろうか)
手を繋いでいる娘のアリアをまじまじと見る。
「パパ、パパずっと信じてたよ」
「アリア……」
「ベッドで『きっと良くなる』『必ず治す』って言ってくれてたもん!」
「……アリア、アリア!」
「パパ、ありがとう! パパ、大好きー!」
冷たい冬の朝で私は、
幸福感に包まれた温もりを、
抱きしめた娘から感じ取っていたのだった……
(ありがとう……フォレチトン)
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「……という事があったそうです」
「へー、めでたしめでたし、だね」
もう新年とは呼べなくなった年明け三週間頃、
僕ことミスト=ポークレットは夕食とお風呂を終えて寝室でくつろでいた。
「それでもう、その男爵親子は帰っちゃったの?」
「はい、サンネイズ商団や合同教会に早く恩返しをしたいとのことです」
「へー、じゃあその港町、サゴンヘ領だっけ、早く栄えて観光客を逆に送り込んできて欲しいな」
と話している間に僕の両脚をほぐして肩を揉んでくれるメイドエルフ三人、
まさに王様気分だ、まだ侯爵だけれども! ってその先、目指すんだっけ?
「それでミストくん、メランとサザンヌ国境付近のダンジョンですが」
「あ、日時が指定されているんだっけ、そろそろ?」
「そうですね、明日のコロシアムで行われるサーカスを見て、その翌日にメランへ行きましょう」
「ですわ、ポークレットファミリー再始動ですわ」
「うん、エルフのみんなも参加してくれるんだよね、よろしくお願いします」
右足を揉んでくれている小柄エルフのレジーを見る。
「はい、弓に魔法を込めて打つ能力をお見せできると思います」
左足を揉んでくれているスタイルの良いエルフのルビエンを見る。
「私は魔力を矢に変えて放つ事が出来ます、補充が要らないので役に立つかと」
最後に肩をしっかり揉んでくれている大柄かつ巨乳エルフのセクレドを振り返って見る。
「実は私、ウッドアックスで前衛も出来ますので、ご自由にお使い下さい」
うん、エルフにしては力がありそうだ。
「ではミストくん、今夜は自室で眠ります」
「ですわ、エルフさん三人と、あらためて親睦を深めて下さいませ」
「えっ?!」
エルフメイド三人が密着してくる。
「わかりました、ソフィー様ベルル様のご命令とあらば」
「私達の事を、より深く、より詳しく知っていただく必要がありますから」
「ミスト様がどのような事をすれば喜んでいただけるかは、他のメイドからも聞いております」
と、僕はメイドに寝間着を脱がされる!
同時にメイドエルフも素早く脱ぎ始めた!!
「ちょ、ちょっとソフィーさん、ベルルちゃん!」
「お遊びは結婚式までですからねー」
「ですわー、それまではお楽しみ下さいませですわ」
「そんな、あっ、三人がかりで、わ、うわ、うわああああああ!!!」
……めっちゃ興奮してめっちゃ良かった
だめ貴族だもの。 ミスト
(女エルフさいこー!!)
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