第214話 ポーターが勇者ってアリなの?!
クエストフォオークの優勝セレモニーが終わったと同時に配当が発表された、
予想60倍だったのが最終的に四番人気の9倍となったらしい、
金貨一枚が九枚に、いま来賓用の交換所は大忙しだろう。
(いやいや、これはさすがに駄目だ)
席に戻るとさすがに気まずそうなソフィーさんとベルルちゃん、
なんだか僕にお礼を言いたいという人々(特に貴族)をキリィさんモリィさんが追い返してくれる。
「さあ皆様、なぜか予定より遅くなりましたが、いよいよ最終12レース、砂コースでーす!」
場内音響の軽い声にすらちょっとイラッとしてしまう、
僕は罪滅ぼしという訳では無いが、最後は全然人気のないオークヲオオクとかいう
ふざけた名前のオークに賭けた、まったく面白くとも何ともない、ふざけた名前のオークだ。
(そして無事、後ろから二番目に沈んでくれた)
全てのレースが終わり、警備兵が大忙しでさっさとお客さんを帰している、
メインレースについてゴネる人とかいそうだけれど有無を言わさない感じだ。
「ミスト、私と伯母上は後始末が終わったら夕食後に帰る、話があるならそれからだ」
「いいことミスト殿、今日の出来事について言いたい事は私達が帰ってきてからにしてちょうだい」
「は、はあ」
まるで文句は後で聞いてやるから今は黙ってろみたいな感じだ、
帰り仕度をするみんな、あ、金貨九枚は最終レース買うついでにちゃんと貰いました、
心中複雑だけれども。
(うう、帰るお客様の顔が見られない)
昨日の八百長はまだ良い、
あれはあくまで『ああなってしまった』というだけで、
僕の試合のあとにリア先生無双があってお金払った人は満足したはずだ。
(でも、さすがに今日は……)
人様の大切なお金でこんな事をしちゃあいけない、
こんなの僕は喜ばないよ、不正でしかない、まったくもう。
「ミストくん、浮かない顔ね」
「そんなミスト様に嬉しいお知らせがありますわ」
「……今はどうでもいいかな」
と、ちょっと拗ねてみる。
「もう、とにかく冒険者ギルドへ行きましょう」
「ですわ、ミストシティの冒険者ギルドはもう、ほぼ完成しておりますわ」
「ええっと、絶対行かないと駄目?」
と、いくら僕が抵抗の形を見せても流されるように馬車で冒険者ギルドへ、
その入り口に立派な剣を掲げ、背中にポーターバッグを背負った男の像が。
「誰だろこれ」
「ミストくんです」
「ミスト様ですわ」
「へえ、そうですか」
もう反応する気すら失せる、
近いうちにどこかのタイミングで撤去させよう、
もしくはミスト=ポークレットではない誰かの像って事にするか。
「お待ちしておりました、ポークレットファミリーのミスト様!」
入るやいなやフォレチトンの正式なギルマスになったんだっけ、
ちょっと前に領主邸まで挨拶に来たから覚えてる、
リア先生の被害者、ミストシティ冒険者ギルド所長のプリマさんだ。
「あ、お久しぶりです」
「表の像、見ていただきましたか?」
「あれ、僕じゃない人の名前にして下さい、『謎のX』でもいいので」
「とんでもない! あの像、リア様も喜んでらしたのですよ?
「はあ」
僕が喜んでいない。
「ミストくん」
「はいソフィーさん」
「これ以上、そういう態度を取るならお仕置ベッドへ直行です」
……プリマさんに罪はないか、
ちょっと切り替えよう。
「それでプリマさん、待っていたというのは」
「とりあえずギルマスルームへいらして下さい!」
「わ、わかりました」
新築の匂いがする中、
僕は立派なギルマスルームへと招かれたのであった。
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一方その頃、フォレチトンの噴水前広場にて……
「さあ、昨日の決勝に残れなかった四人に罰ゲームだ」
リアの前に並ぶ元騎士団員で冒険者のガルボナ、
現騎士団員のべベロン、商人で現肉塊のボリネー、
そして現騎士団員で双子の弟に成り済ましていた姉のアラルマ。
「もう日も沈んだし、明日にしないか?」
「明日は合同演習があるんだ、手短に頼む」
「吾輩はどんな罰でも受けるデュフよ」
「お、弟が明日来るので、その、弟にさせるのは」
四者四様の面々を見た後、
リア先生が合図をすると馬車がやってきた、
しかし、引いてきたのは馬ではなく三匹の……!!
「これはオーク、馬車ではなくオーク車か」
「驚いた、こういうティムオークの使い方もあるのか」
「なかなか面白い乗り物デュフね」
「ま、まさか、リアお姉様、私たちを、これに……?」
馬車ならぬオーク車の入り口を開けるリア。
「罰ゲームはこれで王都まで帰ってもらう、
このオークたちが引っ張って行ってくれるぞ」
「え、テイマーはいないのか?」
「まさか王都への道をオークだけで」
「画期的デュフね、つき合わされる方は大変デュフ」
「中は簡単な椅子しかないようですが、これ揺れるんじゃ」
頑丈だが中は特に飾っている様子は無い、本当に椅子だけだ。
「私も鬼ではない、ほら、コロシアムで売れ残った弁当だ、明日朝までならまだ喰えるぞ」
「こ、こんなに、ひとり六個も!」
「中で食べよという事ですか」
「水なら売ってあげるデュフよ、デュフフフ」
「王都までって、どのくらいかかるんですか?!」
中へ入れると扉をさっさと閉めるリア。
「最速で明日朝に到着する計算だが無事に帰れるかどうかは、わからん」
「そ、そんな」「ひどくないですか」「デュフデュフデュフ」「お、弟にチェンジ!」
「オークが道無き道をほぼ直線で走ってくれる、しっかり捕まってろよ、では元気でな!」
騎士団員のテイマーがオークたちに鞭をふるう!
すると……!!
ガラガラガラガラガラーーー!!!
「わ! わわ! 加速がすげえ!」「すっごく、すっごく揺れます!」
「舌噛むデュフよ! 黙るデュフ!」「いや、いやっ、いやああああ!!」
「では達者でな、騎士団員は明日また会おう、間に合えばな!」
こうして馬車もといオーク車は王都の方向へ爆走して行ったのだった、
凄まじい土煙をあげて……それを見送るリア。
(馬車に変わる新輸送手段のテスト、さて、どうなることやら)
こうして一晩中オーク車の中でシェイクされ続ける予定の四人は、
果たしで無事に王都へ帰れるのであろうか、それはまだ誰も知らない。
敗退四名 王都帰還……か?
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そして戻ってミストシティ、
冒険者ギルドのギルマスルームにて。
「えええ、ぼ、僕が勇者なんですか?!」
「はい、チュニビやフォレチトン南部、さらに砂漠での大活躍、
その中心人物として敵を倒し続けた冒険者ミスト様には、
個人Sランクと共に『勇者』の称号が与えられる事となりました!」
「ちょ、ちょっと待って、僕って登録、ポーターですよね?!」
単なる荷物持ちと勇者はまったく共通点が無い。
「もう冒険者ミスト様はポーターの域を超えております、
今までの実績を称え、『勇者ポーター』と呼ばせて下さい!」
「いやいやいやいや、ありえないでしょう」
「いま、たった今、ここに誕生致しました!」
呑気に拍手するソフィーさんベルルちゃんたち!
「いや、勇者ポーターっておかしいでしょう」
「そうですか、では『ポーター勇者』にいたしましょうか」
「そういう問題じゃなくって!」
ここで耳打ちしてくるソフィーさん。
「……公爵や公爵扱いの辺境伯を相手にする時、勇者の称号は間違いなく力になりますよ」
(うう、そんな事を言われたら昨夜の失態もあって何も言えなくなっちゃうよう)
さらにベルルちゃんも耳打ちを。
「ミスト様は伯爵なので勇者爵はもう貰えませんわ、
そのかわり『冒険者としての勇者』の称号は、他国でも有利に働きますわ」
持っておいて損は無いってことか。
「プリマさん、僕って勇者に見えます?」
「少なくとも実績はそうなります、冒険者ギルド総長も是非にと」
あー王都で挨拶された人だな、名前は覚えてないけど。
「ええっと、じゃあ、貰えるものならば」
「では大々的に宣伝させていただきますね」
「ちょ、ちょっと派手なのは」
「ミストくん、新しい冒険者ギルドには箔が必要なの」
「ですわ、勇者がアメリアさんとミスト様のふたりも居るとなると、それはもう冒険者が殺到するかもしれませんわ」
なるほど宣伝目的か、
あのかっこいい誰だかわからない像もそういう事なんだな、
まあ僕が我慢すれば良いのであれば……
「ええっと確認なんですが」
「はい勇者ポーターのミスト様」
「変に僕単独で高難易度クエストとか依頼されたりは」
「そのあたりはよーく、よーーーくわかっていますから安心して下さい」
「そ、そうですか」
全てわかっていますよってニュアンスで、なんだか恥ずかしい。
「ミストくん、心配はいりませんよ」
「ミスト様は今まで通りの冒険者活動で構いませんわ」
「そう、ミストくんはミストくん、私達の大切な仲間です」
……うーん、
正直、教祖にされたり勇者にされたり大変だけど、
これも僕の、貴族としての格を上げるためだと思えば!
「わかりました、好きに利用して下さい、でも本当に僕は冒険者としての力なんて」
「それではこちらにサインをお願い致します!」
七、八枚くらいあるなプリマさんが出してきた紙、
何の契約書か知らないがソフィーさんが念入りにチェックしている、
次いでベルルちゃんも、どうやら全部問題ないらしい。
「じゃミストくん、いいえ、勇者ミストくん、お願い」
「勇者ミスト、ねえ」
と言いながらもサインしている口元が緩む
だめ貴族だもの。 ミスト
さて、この用事が終わったら夕食済ませて、
今日のミスト=ポークレット杯に言うべき事は言おう。
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