第184話 マンタ師匠かく語りき
「今日は早めに帰ろう……」
結局、午後の特訓も気分が乗らなかったせいかイマイチで、
初動のパターン七種類をおさらいだけしてコロシアムを去った。
残り期間は短いのに大丈夫かなと思いながらも身が入らないのなら仕方がない。
(アメリア先生は一日でメンタルを治せなんて言ってたけれども……)
いまは領主邸までの馬車だ、
乗り合いではなく騎士団が出してくれた、
これが男爵とかなら歩いて帰れ! ってなりそうだから、爵位の高さって大事だ。
(どう言い訳しよう)
あきらかに帰るには早すぎる時間、
教会や病院、魔法研究所で忙しくしているソフィーちゃんベルルちゃんに申し訳が立たない、
リア先生も騎士団長の仕事が忙しいしアメリア先生は僕が退いたらすぐ新たな指導希望者が立っていた。
エスリンちゃんは病み上がり、いや、いまだ心の病を抱えたままメイド業務に戻っているとか。
(僕ってほんっと、情けないなぁ)
これが伯爵様である。
期間的にはまだ『準男爵になりたて』と言って良いのがもう伯爵、
そしてもうちょっと頑張れば辺境伯、あきらかに異常なスピードだ。
「なにも、なーんにもしてないのに」
乗ってるのが僕だけなのを良い事につぶやいてみる、
これでソフィーさんベルルちゃんリア先生アメリア先生、
キリィさんモリィさんジゼルさん誰か乗ってたら何かしらのフォローを言ってくれただろう。
(サリーさんは……いいや)
ほぼ完成のミストシティへ向かう馬車が多い、
やはり商店や観光地が増えたのが大きいだろう、
コロシアムだって外観だけでも見に来て良かったってなるらしい。
「あ、馬車ストップ、ストップ!」
僕は広がる畑にさしかかった所で引手に止まってもらう、
そして馬車を降り、もうここで良いと告げ、ひとりのお爺ちゃんに駆け寄った。
「マンタ爺ちゃん!」
「おお、これはこれは領主様」
「やめてよマンタ爺ちゃんはマンタ爺ちゃんなんだから!」
よくシッポを振るワーウルフも僕に抱きついてきている。
「で、どうしたんじゃ、ワシにもう構っている暇なぞあるまい」
「……ごめん、聞いて欲しい話があるんだ、相談相手ってもう、マンタ爺ちゃんくらいしか」
「はて、一介の単なる老いぼれ農作業ジジイに、何が言えるかのう」
「この国で十七番目に偉いって昔から言ってたじゃないか」
「昔はの、大昔の話じゃわい」
元宰相代理補佐官、正確な順序は知らないけれどマンタ爺ちゃん嘘はついていなかったんだ。
「エスリンちゃんって覚えてる? 僕の、ポークレット家のメイドだった、栗毛をもこっとさせた」
「あー、昔そういうちっこいメイドを、ちらっと見た気がするのう」
「連れ去られて奴隷にされ、酷い目にあってようやく戻ってきたんだけれど……」
と、途中までは以前に相談したおさらい、
さらにそれ以降の話を一生懸命にした。
「それでワシに何の相談じゃ? もっと他に相手はおるじゃろ」
「もう男として僕の味方になって、話ができる年上はマンタ爺ちゃんだけなんだ、
父上は母上が妊娠して僕どころじゃないし、武神ガブリエル辺境伯も敷居が高いし」
「ワシならお気軽に聞けるというワケか」
「僕にとってマンタ爺ちゃんは男としての師匠だよ、前のアドバイスにも助けられたし!」
「そうよのう……」
空を見上げながら深く深く考えているようだ。
「スケベぼうず」
「はいっ」
「愛する奥さんが今、何をして欲しいか考えるのじゃ」
「エスリンちゃんの、して欲しい事ですか」
「そうじゃ、罪に繋がるような事や倫理的にまずい事でなければ、それを積極的にすれば良い」
エスリンちゃんが僕にして欲しい事、となると……!!
「ありがとうマンタ師匠!」
「おうよ」
「僕、今夜にもやってみるよ!!」
やはりマンタ爺ちゃんの言葉の重みは違う!
さすがフォレチトンを僕が産まれる前から見てきただけの事はある! たぶん。
(領主邸に戻ったら騎士団の人にお願いしなくちゃ)
道を少し進むと僕を乗せていた馬車がわざわざ待ってくれていた、
先に行って良いって言ったのに、申し訳ない。
(でもこれで、馬車の引手に伝言ができる)
ある決意を胸に再び馬車に乗り込んだ僕、
今夜はエスリンちゃんに、めいっぱい喜んでもらおう!
―――そしてその夜遅く、就寝時間。
「リアお姉様ぁ!!」
伯爵邸、寝室に入ってきたリア先生に大喜びのエスリンちゃん、
早速抱きついてスリスリしている、それを手慣れた感じで撫でる先生。
「なんだ、今夜はヴァルキュリア騎士団の宿舎で寝ようと思っていたのだが」
「あ、ご迷惑でしたか?」
「いや、ミストが呼び出したのであれば、それが全てにおいて最優先事項だ」
ガチャッ
「あのー、私は」
「あ、サリーさんこんな時間までメイドしてくれてありがとう、帰って」
「そ、そんなあ!」
「ミストさん、サリーさんも是非ご一緒に」
「ごめん、まだ三人を相手に出来る程は余裕ないんだ」
メイド三人掛かりで襲われた事はあるけど、
あれって僕は本当に何もしなくて良かったからね、
でも今夜はそんな訳にはいかない。
「サリー、領主様がそう申してるのだ、領主代行はおとなしく引き下がってくれ」
「リアお姉様がそうおっしゃられるのならぁ」
「という事でお疲れ様でした」
ゆっくりドアの隙間を閉めて去って行ったサリーさん、
おそらくリア先生しかお目当ては無いだろうから、
変に混ぜちゃうとリア先生エスリンちゃんサリーさん三人だけで成立してなんだこりゃ、になりかねない。
(目の前で寝取られ放置プレイされて喜べるほどまだ変態どMでは無い、多分)
という事で今日は道具抜きである、
一応確認しておこうと部屋を見回しベッドの下も……
「あっ」
何か箱があるううううう!!!
「ミストさん、見つかってしまいましたか」
「まあその何だ、それは後のお楽しみという事で」
「そ、そ、そんなああ!!」
今夜は二人相手とはいえ普通に、と思ったのにい!
「リアお姉様、今夜はミストさんを縄で縛らなくても大丈夫ですよね?」
「ああ、ある意味で私が、身体で拘束するからな」
「どんな意味ですか!」
「こういう意味だ」
「うわああっっ!!」
押し倒されたあっ!!
「エスリン、こういう時のための予行演習は覚えているな?」
「はいっ、リアお姉様っ♪」
「さあミスト、今夜は朝まで何度死んでもらうかわからぬ、覚悟するんだな」
(ひ、ひ、ひいいいぃぃいいい!!!)
エスリンちゃんがとにかく活き活きしていたのが救いかも?
だめ貴族だもの。 ミスト
(マンタ師匠、これが男の試練なのですか……?!)
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