第180話 初めてとは何なのか

(うーん、どきどきする)


 自室、つまり僕の寝室に戻る、

 食事の形跡はまったく無くなっていた、

 お風呂の間に綺麗さっぱり片付けてくれたみたいだ。


(そしてお香の良い匂い)


 室内を暖める回転魔石の近くに置いてある、

 うん、なんだかちょっとアレな気分が盛り上がる感じがする。


(いま準備中かぁ)


 照明は少し暗めにできるんだっけ、と確認する、

 昔は明るいか真っ暗かだったけど、今は四段階くらいにできる、

 真っ暗も合わせたら五段階か、ムード的にはどうだろう、と良い明るさを調節する。


(でもエスリンちゃんが真っ暗が良いって言ったらどうしよう)


 それが望みなら仕方がないか、

 エスリンちゃんのして欲しいようにリードするのが男というものだ。


(お香が聞いているとはいえ、僕の口とか臭くないよね?)


 なんとなくベッドの上でストレッチなんかしてみたり、

 喉が渇いたって言われた時にすぐ持ってこられるよう水差しを近くに移動させたり、

 泣いちゃったりしたらすぐ拭いてあげようとタオルを近くに置いてみたり。


(こんなにそわそわするの初めてかも)


 ソフィーちゃんやベルルちゃんのときは何をどうして良いかわからなかった、

 アメリア先生やリア先生には手取り足取り教えてもらったけどそれが生かせるといいけれども。


(あー、暖かい紅茶も用意した方がいいのかな、あるかな)


 などと室内をうろうろしたり窓の外を見たり、

 ベッドの様子を確かめたり照明の調整を繰り返したりしているうちに……


 コン、コン


「ど、どうぞぉー!」


 声が裏返っちゃった。


「失礼いたします……」


 入ってきた姿は薄いベージュの寝間着、

 うん、地味で素朴な感じだけど、それが凄くエスリンちゃんらしくて良い。


「う、うん、その、いらっしゃい」

「お待たせいたしました、準備に時間がかかってしまって」

「いや、い、いいよ、うん、待ってた時間も、楽しかったから」


 何をわけのわからないこと言っているんだろう僕は。


「あの、私、こ、こういうの、初めてなので、よろしくお願いします」

「うん、よろしく、ねっ」


 緊張している、何とかほぐしてあげないと。


「その、こっち、来られる?」

「はい、まずお願いが」

「何かな」


 近づいてきたエスリンちゃん、とってもかわいい、

 照明が明るすぎやしないかと思ったら顔が間近に!


「眼鏡、ずっとつけたままで、良いですか」

「う、うん、もちろん」

「良かった、これ、精神安定の魔法もかかっているんです」


 じゃあ外さないようにしてあげないと。


「その、照明、暗くしようか」

「いえその、ミストくんを、ちゃんと、見たいから」

「う、嬉しいな、えへへ」


 よし、良い感じで甘々になってきたぞ、

 あとは少しずつゆっくりと僕のペースで、

 急がず慌てず、エスリンちゃんを僅かでも怖がらせないように慎重に……


「ミストくん、初めてで、上手くいかなかったら、ごめんなさい」

「僕だって初めてみたいなものだから!」


 うん、エスリンちゃんとは!


「その、よろしくお願いします」


 床に両膝をついてお辞儀までして、そこまでしなくても!

 僕もベッドの上で丁寧にお辞儀する、高さ的には僕が上になっちゃってるけどいいよね。


「あらためて、ミストくん、私で、私をお嫁さんにしてくれて、いいよね?」

「もちろん! そういう約束っていうか、最初からそうだから」

「気持ちは、変わってないんですね」

「父上は忘れろって言われたけれど、忘れた事なんてなかったから」

「嬉しい……」


うん、多分。


「エスリンちゃん、リハビリの間、手紙ありがとう」

「あ、あれは書かさ……いえ、お返事も、ありがとうございます、全部取ってあります」

「僕も!」


 ちょっと余計な雑音が入った気がするが、

 聞かなかった事にしよう、うん!


「じゃあミストくん、最初は……」


 とベッドに乗ってきて、

 僕の寝間着を丁寧に脱がしてくれたあと、

 エスリンちゃんの方からやさしく唇が……


「?!」


 あまりに情熱的すぎるキス、

 舌で蹂躙してくる接吻にびっくりしていると、

 僕の両腕を捕まえて押し倒してきた!

 そして寝かせて両腕を上げさせ、縄でベッドの上部に縛り付ける!


「えっ、縄?!」

「その、私、僅かでもミストさんに責められるのが怖いので、ごめんなさい」

「だ、だからって、縄で縛らなくても!」


 どこから持ってきたんだろう、

 後手で背後から? それとも寝間着の間に入れてきた?

 まさか最初からベッドのどこかわからない場所に仕込んでた、とか?!


「一応足も、ごめんなさい」


 こうしてベッドで大の字に縛られた僕、

 一体全体、ど~なってるの?! どうしてこうなった!!


「エスリンちゃん!」

「その、初めてだから、痛かったらごめんなさい、加減がわからないかも」

「ちょ、ちょっと、どういうこと!」


 一旦廊下へ出て何やら箱を持って来る!


「道具もいっぱい用意しました、サリーさんにも一緒に選んでいただいて」

「あんのメカクレ変態クレイジーレ●がああああ!!」

「……サリーさんのこと悪く言われると、ちょっと意地悪してしまうかもしれません」


 なんでー?!


「ミストさんと、いろんな、様々な初めてをできるの、嬉しいです」

「いや、何から何までするのっていうか、何するのー!」

「愛しています。ミストさん、私のありったけの愛を受け取ってください、

 まずはこの羽根で全身を、くまなくじっくり……」


(ひ、ひ、ひいいいいいいいいいい!!!)


 こうして僕のエスリンちゃんとの初めては長時間、一方的に無茶苦茶にされた

  だめ貴族だもの。 ミスト

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