第五章 伯爵への道は死の砂漠にあり編

第130話 ミストシティってなんですか?!

 フォレチトンでの子爵就任パーティーから三週間、

 夏が真っ盛りの今朝、僕は例の噴水前で待ち合わせだ。


「アレクス、サーシャ、セス!」

「おう、おはよう」

「おはようございます領主様」

「お、俺も領主様って呼ばないといけないのか?!」


 焦るセス、それをみんなで軽く笑う。


「セスは入り口の街で町長をやってもらうからね、

 僕が辺境伯になった頃には準男爵か男爵かな?」

「は、はいっ、領主さまっ!」

「そんなガラじゃないから安心してよ、ミストでいいよ」


 アレクスとサーシャは恋人つなぎだ、

 僕もソフィーさんかベルルちゃんを連れてきても良かったかな?

 と一瞬思ったがセスが可哀想すぎる。


「ここの女神像も立派になったなぁ」

「ほんと、私達がここに住んでた頃はすでにボロボロだったのに」


 実はこの女神像噴水、僕の爵位が上がるたびに大きく立派になっている、

 ソフィーさんベルルちゃんが魔石と魔法で加工して今や芸術品のレベルだ。


「それでミスト、このベッド、毎回見るたびに笑えるな!」


 セスが指摘する、噴水前に設置してある大きなベッド、

 いつのまにかちゃんと説明書きが立てかけてあって内容は、


『領主お仕置ベッド

 ここフォレチトンの領主ミスト=ポークレットが何か大きな粗相を犯した場合、

 奥様方によりこのベッドで公開のお仕置が行われます、未使用時は誰でもご自由におくつろぎください』


 これではまるで露出趣味の変態領主である。


「ここよくマンタじいちゃんが寝てるよな」

「最近はちゃんと服着てるね、何かあったのかしら」

「さすがに人が増えたからね、一万人都市で全裸はまずいよ」


 自称この国で十七番目に偉かったと自称するマンタじいちゃん、

 ペットのワーウルフにも最近、服を着せて連れて歩いているみたいだ。


「いつもこんな大きなベッドで寝てるのか?」

「ひとりじゃないからね、あごめん、セスにはまだわからないか」

「くそう、くそう」


 そして、それらを取り囲む大教会、聖教会、孤児院兼小児病院も本当に立派だ、

 廃墟だらけだった住居地区も今や空いている土地を探すのが大変なくらいだけれど、

 あの大きな都市が完成したらこっちの住民はどうするんだろう? と少し心配している。


「そうそう、この間も『うちの子を助けてください』って金持ちそうな家族が来てたぞ」

「入り口の街に? もうすっかりフォレチトンは難病の子の、最後の望みって噂が流れてるね」


 実際にソフィーさんベルルちゃんが何とかしてしまうんだから事実だ、

 あんまり来すぎてふたりが変に忙しくなると困っちゃうんだけれども、

 それなりに大きな寄付金も貰えたりして、街の経済としては助かる部分もある。


「じゃあまずは商店街から行こうか」


 四人でフォレチトンの視察、

 とはいえ遠くから警備が見張ってついてきてくれている、

 もし領主の身に何かあったら……ソフィーちゃんかベルルちゃんが居るならいいんじゃない?

 なんて口に出したら多分、奥様にお仕置されるので黙っておこう。


「このおもちゃ、売れてるらしいね」

「私もアレクスとの子が産まれたら、これをやらせてみたいわ」


 ベルルちゃんとソフィーさんが開発した知育玩具だ、

 大きな透明の水晶に液体化した七種の魔石が入っている、

 風属性、水属性、火属性、土属性、光属性、闇属性、最後に透明な無属性。


「魔力のない俺でも結構、模様とか作れるのがいいよな」


 セスの言う通り、魔力がまったくなくても指の体温とか生命力に吸い寄せられて色が動く、

 見本を軽くなぞってみると最初に突いた緑の部分がつつーーーっと伸びる、

 魔力を開花させる『祝福』を受けたあと、このおもちゃで遊び続けると魔力量が一気に増えるらしい。


(魔石も大中小いっぱいだぁ)


 昔は魔力の補充さえもままならなかったこの市場、

 今や欲しいサイズや属性が選び放題、数も光と闇を除けば買いたい放題だ。


「冒険者ギルドも、商業ギルドも立派になったよ!」


 僕が誇らしげに紹介するも反応は薄い、

 いつも見飽きてるからだろうけど、昔はこんなもの無かったので、

 よくがんばったねすごいねくらいの返事は欲しい所なんだけどなあ。


「うーん、冒険者ギルドに頼む依頼とかないし、なあ」

「ええ、カジーラへ用事があっても綺麗で安全な、広い道ができているもの」

「そういえば最近、護衛すらなくやってくる観光客も増えてるな」


 平和で良い事である、

 今の冒険者ギルドは主にずっと南方の、死の砂漠目当てだ、

 もちろん初心者はフォレチトンの外れにある普通のダンジョンに行くが、

 オーク肉はわざわざ狩らなくても格安で入手できる、成果は魔石くらいか。


「あ、ダンジョン温泉行きの馬車だ」

「もう出発するみたいね」

「どうするミスト?」

「うん、温泉に入るかどうかは別にして、乗ろう」


 ちゃんと銅貨をじゃらじゃら払って乗り合い馬車へ、

 夏の暑い中、観光に来た家族連れと、おっさん四人組と相乗りだ。


「やさしいオークさんがいっぱいってほんと~?」

「ああ、危険なオークと違って遊んでくれるぞ」

「でも外で会うオークはみんな危ないから気を付けるのよ」

「は~い」


 ほほえましい感じの親子連れに反して、

 おっさん四人組は真剣な表情で冊子を見ている。


「第五レースのオークがなかなか臭いぞ」

「人気二匹に偏り過ぎてるな、これ両方が来るって事ないだろ」

「七レースも硬いと見せかけて荒れるぜこりゃ」

「今日こそは母ちゃんに美味いミミック肉たらふく喰わせてやるんだ!」


 とても同じ行先とは思えないが何目的か見当はつく、

 うーん、これは中身を別々に分けた方が良いかも?


(今の現状を見てから、あらためて考えよう)


 とまあ綺麗に舗装されたキラキラロードを進むと丘を越え森を抜け、

 見えてきたのは崖下に広がる見事なまでの、ほぼ半分近く出来ている巨大都市だ。


「お、あの看板!」

「えっ?」


 セスの指さした先に大きな看板が見えた、

 そこに書かれていた文字は……!!


『ようこそ ミストシティへ!

 現在絶賛建設中 一部プレオープンしています』


(ミストシティって、何いぃぃぃーーーーー?????)


 巨大都市に、知らない間に僕の名前が!

   だめ貴族だもの。 ミスト

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る