第112話 王都別邸で就任パーティー 母上もいるよ!

 お城での就任式後、ソフィーさんベルルちゃんに挟まれて事務手続きだ、

 色々な書類にサインさせられるが正妻側室がチェックしたうえで僕が書く、

 たまに変なものが紛れ込んでいるらしく弾いてたので全てがお城関係では無さそう。


「何かバタバタしてますね」

「ミストくんの就任式を妨害しようとした連中の関係ですね」

「ミスト様は何の問題もありませんわ、

 きっと後でまとめてリア騎士団長から報告がありますわ」


 ひょっとして僕の命が狙われているんじゃ、

 心当たりは……うん、身分不相応な奥さんがふたり居るからね、

 僕が命を落とすか失脚すれば最高の聖女が手に入ると思っている人がいても、

 おかしくはないんだけれど、暗殺とかそんなことする隙はあるんだろうか?

 考えるとやはりハニートラップで命を落とす危険性に行きつく、気をつけないと。


「ほら、ぼーっとしてないで」

「は、はいっ、この書類は?」

「兵役関係ですわ、もしもの時はフォレチトンからも人を」


 そっか、私兵も作らないとな、

 いまは王都から、騎士団から借りてる状況だ、

 もちろんずっと居てくれると助かるが、自前も必要か。


「次はねミストくん、フォレチトンに正式な冒険者ギルドと商業ギルドを……」



 書類手続きが終わり夕方には解放され、

 王都別邸までまたパレードだが警備が前より厳重だ、

 一番先頭を騎士団長であるリア先生が務める徹底ぶりである。


「ねえソフィーさん、ベルルちゃん」

「はいなんでしょう」「いかがなさいました?」

「この歓声あげてる人たちってさあ、僕にじゃないよね?」


 あ、ふたりして外向いた!

 ですよねえ……やっぱり事件解決したの、ふたりだってわかるんだな。


(あとは単純に若い聖女様を見たいんだろう、あ、ついでにアメリア先生も)


 僕の前の馬車で声援に応えるアメリア先生を見ながら僕らは王都別邸に到着した。


「おかえり、ミスト」

「母上!母上じゃないですかー!」


 やっとちゃんと直接会う事ができた!

 僕は思わず胸に飛び込む、うん、ふっくらしていて健康そうだ。


「子爵就任おめでとう」

「ありがとうございます、その、昨日はよそよそしすぎて別人かと」

「ごめんね、聖教会の役員になっちゃったから立場的に、ね」


 あぁ、母上の匂いだ、嬉しい。


「よく頑張ったわね」

「その、僕はなんにも」

「本当に何もしなかった訳ではないでしょ?出来る範囲で精一杯やったのなら誇って良いのよ」


 褒められてる!

 僕、母上に褒められている……泣きそう。


「そういえば父上は」

「忙しいわ、ミストに負けてられないって」

「はは、爵位追い越しちゃいましたからね」


 強く抱きしめてくれる、が、ソフィーさんたちが近づくと逃げるように離れた。


「またあとで、ね」


 まだちょっと怖いのかな、

 僕らはキリィさんモリィさんに促されて中へ、

 メイド長エスタさんがタオルをくれる、軽く首元と顔を拭いた。


「ミスト、すまない、私はとりあえずここまでだ」

「リア先生、先導ありがとうございました」

「一緒に踊ってやれなくて残念だが、伯母上を頼む」


 忙しそうな女騎士団長だ、

 さっきお城で書類持ってきた人の話だと、

 史上初の女騎士団長という事でもっと派手にしたかったけど断ったらしい、

 ひょっとして僕のこのパレードとかに水を差したくないからかな?

 なんて思うと申し訳ないけど、本当に僕に嫁入りしてくれるのだろうか……?


「さてミストくん、これから四人程、会って欲しい人がいるの」

「今すぐですか?」

「そうですわ、大教会の重要幹部、冒険者ギルドの総ギルド長、

 商業ギルドの総ギルド長、最後に聖教会の大幹部ですわ」

「あーはい、いかにも会わなきゃいけない人っぽいね」

「ミストくんはとりあえず返事だけはちゃんとしてあげてね」


 とまあここ王都別邸にも来客の間があって、

 そこで次々と会ったのだが詳細はめんどいので省略、

 あえて言うならみんな僕を最初に見て僕に話かけてくれて、

 僕が答えられないような話になってから聖女ふたりが対処してくれた、

 ちなみに最初が大教会で最後が聖教会だったのも意味あったらしいけど、まあいいや。


「えっと、これでもういいの?」

「はい、きりがありませんから」

「ちなみに次、五番目に会うとすればヴァンヴェイル公爵家でしたが、お断りしました」


 ええっと誰だっけ?

 でも貴族相手はひとり会うと次々とで切り所が難しそうだからね。


「いらっしゃってはいるのでパーティーで会話くらいはしてあげてですわ?」

「う、うん、わかった、それより僕のスピーチ大丈夫かな」

「ミストくんが語る事であれば何でも大丈夫よ、ミストくんが語る事が意味あるの」


 そんな内容は何でも良いみたいな!

 実際そうなんだろうけれども、ええ!!


「あと状況がわかりきっていなくて娘を薦めてくる貴族もいますので言葉には注意してください」

「薦めるって就職先に?」

「いえ、ミストくんの将来の第三、第四の妻にです」

「ええっリア先生とエスリンちゃんがいるのに」

「だからです、そこはまだ未公表ですから」


 でもその流れだと僕が辺境伯まで行ける見込みがあるって事か、

 子爵ですでに側室ひとり許可されている時点で既定路線なんだろうね、

 もちろん何もしないで成れる訳ではないんだろうけれども。


「では私たちは着替えてきますね」

「ミスト様もお着替えですが、その前に個人的にお会いしたい方がいるようですわ」

「えっ誰だろう、行ってらっしゃい」


 ソフィーさんベルルちゃんと入れ替わりに入ってきたのは……!


「子爵おめでとう、いやあ立派になって嬉しいよ」

「Cクラス卒業になったからといって冷たくすんなよ!」

「アレグ! メイソン! その格好! ぷぷぷ」


 頑張って貴族してますみないな姿に笑ってしまう。


「笑うなよ、これ、ここで用意してもらったんだぜ」

「ミストが買ってくれたんじゃないのか? 持って帰って良いって聞いたけど!」

「あっそうなんだ、うん、いいと思うよ、ぷぷっ」


 笑ってしまったが僕だって本来は人の事なんて言えないはず、

 ただ地位が子爵になってしまったから言われないだけで、見た目なんてそんなもんだ、多分。


「それで今更なんだけれどさ」

「うんどうしたアレグ」

「ベルルちゃんまで、どうして嫁に?」

「あっそうか、知らないんだ」

「そうだよ! ずるいよ! 詳しく聞かせろよっ!」


 うん、ふたりには友人としてちゃんと教えないとね。


「いいけどその、先に言っておくけど、

 ソフィーさんもだけれど、どうして僕が好きなのかわかってないんだ」

「なんだそれ? ひょっとして騙されてる?」

「えっ、僕を騙してどうなるの」

「知らないよっ! ひょっとして壮大などっきりかもなっ!」


 うむう、メイソンの言う通りどっきりだとしたら、

 僕はもう立ち直れないかも? 

 でも元々が何もない準男爵の息子だからなぁ。


「ええっとまず流れから説明すると、アレグとメイソンと学院で別れてから……」



 魔薬草事件解決の流れ、

 それが事件解決に僕を利用したのではなく、

 僕を助けるために事件を解決したという事を説明し、

 その後の卒業試験やり直しまでの流れとともに、

 リア先生が第三夫人、アメリア先生が愛人になった事まで話した。


「……という訳で辺境伯にならないといけないんだ」

「ミスト、ひとつ確認していいか」

「どうしたのアレグ」

「今この俺と話してるミストって、本物か?」

「そうだけれど、何か」


 考え込んでいる、何を推測しているのだろう?


「となると、ソフィーさんたちが偽物か」

「いやいやいや、なんでそうなるの」

「わかったー!」

「メイソンうるさいよ、何?!」

「この出来事が、この世界こそが、偽物なんだよ!!」


(な、な、なんだってーーー?!)



 友人たちとわけのわからない妄想で盛り上がる

  だめ貴族だもの。 ミスト



 コン、コンッ


「ミスト様、お着替えをお持ちしました」

「あ、ありがとうエスタさん」

「ここのメイド本当にレベル高いよな」

「なあミスト、何人か持ち帰っていいかっ?!」

「……給料払えないだろう、ふたりとも」「あ」「あっ」


 そして友人もだめ貴族。

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