第49話

 事件のあった翌日、喜屋武きゃん彩芽あやめは学校に姿を現さなかった。

 その翌日も、更にその翌日も……。


 ふみ香が気になって小林こばやしこえに訊いてみても、「さてな?」とはぐらかされるばかりで何も話してくれない。

 あの同時多発殺人事件の後、二人の間で何かがあったことは間違いなかった。


 一方、初めて小林から一本とった白旗しらはた誠士郎せいしろうはというと、鬼の首でもとったかのように自らの活躍を吹聴して回っていた。


「ま、この俺の灰色の脳細胞にかかれば、喜屋武の考えた殺人トリックなんて朝飯前やちゅうことが証明されたわけやな。わははははは!!」


「…………」


 ふみ香は少しだけ、喜屋武のことが気の毒だと思った。

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