あたしは勇者のお墓のアルバイト。アットホームな職場です。たまに魔王が来ます。

@imagijoe

第1話 勇者と魔王の最終決戦アフター

 かつて、この世界には勇者と魔王がいたのです。


 世界は魔法と剣が互いに絡み合い、折り重なり、ぶつかり、離れ、消滅し、混じり合う混沌に満ち満ちていた。

 一角の幻獣が壮麗な神殿のある緑豊かな丘を駆け巡り、一方でにて羽衣を着た女神がうたた寝をし、その他方では魔獣に襲われた冒険者たちが骨一つ残しもせずに恋人を残して地上から消えていく。

 預言者は絶望を嗤い、未知の黄金を求めた商人は未開の大海へと乗りだし人魚たちの唄に酔いつぶれ、神官たちは鈍重なる神に願いを叫んだ。

 城壁に囲まれた都市の娼婦たちは一時の愛を忍びの貴族と結び、国王の面に小水をまき散らし、王子たちを性器を切り刻んだ。悪魔は貞淑な人妻をかどわかし、その娘と息子を犯し城壁の上から投げ捨て絶望をむさぼり食った。


 魔人たちと騎士は夜と昼と区別なく、互いに殺し合い、互いの死体を天高く掲げ、ひと時の勝利の美酒に酔った。次の日には己の頭蓋骨が酒杯となることも知ることもなく。


 ……そんなダークでファンタジーな世界があったのです。


 そして、そんなファンタジーな世界は15、6年前に終わったのです。


 今も相変わらずファンタジーですが、混沌?何それ?な時代になったのです。






 なぜなら。


 勇者が魔王を封印してしまったから。




 ちなみにその勇者というのは


 わたしの伯父さんです。






 ……もう死んじゃったけど。






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