第8話「その答えはどうしようもない程に――――ギルティだ」

「なぁ王様。俺の姉さんが嘘を言ったのかな? それともあんたが俺を騙そうとして、嘘を言ってるのかな? なぁ王様、どっちなんだ? バカな俺にも分かりやすく教えてくれよ?」


 そう尋ねるリュージの声色は、まるで地獄の底から響いてくるかのごとく、おどろおどろしいものだった。

 ライザハット王を今すぐにでも殺したいという衝動が爆発してしまわないように、必死に激情を抑えていたからだ。


「……」


「さっさと答えろよ? 最初に俺は言ったぞ、誠実なやつは嫌いじゃないってな。そして沈黙は不誠実の表れだ。次に黙ったらその時点で殺す。二度は言わない」


「あ、あああ、あなたのお姉さまが……う、嘘を言ったのではないかと……」

 黙っていれば殺すと言われ、ライザハット王は絞り出すように答えた。


「それがお前の結論か? よぉぉぉぉく、思い出せよ?」


「そ、そうだ。こ、これで間違いは………………ない」


「そっかそっか、そういうことか。悪いのは俺の姉さんか。いやはやまったく、その答えはどうしようもない程に――――ギルティだ」


 リュージは冷たく突き放すように言うと、もはや問答無用とばかりにライザハット王を容赦なく袈裟斬りにした。

 ライザハット王が信じられないといった風に大きく目を見開きながら、あお向けにぶっ倒れる。


「な、なぜ……」


 床に倒れ、口から大量に血を吐きながら、ライザハット王が驚きの表情でリュージに問いかけた。


「なぜだと? 俺の姉さんがあの状況で嘘を言うわけがないだろう? 嘘を言う必要がない。つまりあんたが今、嘘をついたんだ。こんなの子供だって分かる道理だよな? まさかそれで俺が騙せるとでも思ったのか? ははっ、笑わせてくれるぜ」


「かはっ、こほ……そ、それは……」


「しかも、だ。こともあろうにお前は、被害者である姉さんを嘘つきに仕立てあげようとした。これはなんて不誠実なんだろうか。このに及んで不誠実であり続けるお前に、許される余地はなく。その罪はもはや死でもってしかあがなえない」


「だ、だが……ワシがお前の姉を、犯したと言えば……お前はワシを、殺しただろう……?」


「そんなの当然だろ? 姉さんの尊厳を奪ったクズを、なんで俺が生かしておかないといけないんだ?」


 リュージがライザハット王を小馬鹿にしたように鼻で笑った。


「それでは、ワシがどちらを、選んでも……結局、殺されていた、のでは、ないか……」


「ははははっ! 今さら気付いたのかよ?」

「なん……、だと……?」


「そうさ、あんたが助かる可能性は最初からゼロだったんだよ。なぜなら俺は、他でもないお前を殺しに来たんだからな」


 つまりはそういうことだった。

 どう答えたとしても、ライザハット王には死の運命を回避することはできなかったのだ。


「なっ! 答えれば……助けて、くれると……約束した、では……ないか……」


 ライザハット王は息も絶え絶えになりながら、信じられないといった顔でリュージを見つめる。


(ははっ、いったい何を言ってるんだこいつは?)


 ライザハット王があまりにも愚かだったので、リュージはおかしくてたまらなかった。


「やれやれ、お前は本当に救いようのない馬鹿だな。そんなもの嘘に決まっているだろ」

「な……にっ」


「お前に復讐するために生きてきた俺が、お前を生かしておくわけがないだろう? 聞きたいことを聞けたから、もうこれ以上お前には用はない。後は当初の目的通り殺すだけだ」


「――っ」


「王様ってのはそんな簡単なことも分からないんだな。力づくで自分の言う通りにさせて、用が済んだらポイっと捨てる。今まで散々、自分は同じことを他人にいてきたってのによ?」


「ワシを、騙し、たのか……? この、卑怯者めが……」

 ライザハット王が口から血をこぼしながら、憎々しげにリュージを睨んだ。

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