第六幕 とある仮説

「嘘ではないね?」

彼は本当の意味での〝念〟の為と言った程度に形式上の確認をしたあと、私の返答を待たずに続けた。

「実は僕、ある仮説を元に僕の過去を調べていたところだったんだ。君はここを東に進んだ所にある肋新地という集落のはずれに柳の木が印象的な夏目荘という…」

私は状況が読めず脊髄で彼の言葉を遮っていた。

「ある仮説…?」

「そう。お預けをくらった猫のような君に結論から話そう。まあ猫なんだけどね。×××。」

猫が豆鉄砲をくらったような顔をした私は全てを悟ってはいたものの、確信をついて欲しく強請るように彼の口が再び開くのを待った。

「僕、いや、僕達は×××××××のだ。」

彼の言葉は期待半分諦め半分、おまけに不安と疑心も半分ずつという小学生の方が幾分かましな物が作れるのではないかと思うほどの計算式にいとも簡単に答えを出してしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る