吾輩は猫であるを微塵も知らない私が吾輩は猫であるという物語を書くということ
@hibikiwwtarako
第一幕 プロローグ
私は猫である。いかにも猫に名前という概念が存在するのかという問題はさておくとして私は自分の呼び名とでも言うべきものが思い出せない。なにぶん気がつくと薄暗くじめじめとした所でニャーニャー鳴いており、それ以前の記憶が自分でも恐ろしくなるほどに無いのである。ここで私が「自分でも恐ろしくなるほどに」などと表現したのは、なにも言い回しに文学的センスのようなものをチラつかせ、私の語り手としての才能をひけらかしたかった訳では無い。正確に言えば私のそれ以前の記憶は無いのではない。確かに存在したという根拠の無い確信が私にはあるのである。あるのではあるがこれまた文学的な豊かさを含ませるのであれば、存在したはずの私の記憶は春を迎えた山々の白粉の如くいつの間にやら消えてしまったのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます