みっちり指導
「ふっ……はぁ……」
袖女はその後も、全身にオーラを循環させては失敗、回転させては失敗し続け、今回でついにその場にしゃがみ込んでしまった。
「限界か?」
「はい……これ以上やると、オーラがなくなっちゃいます……はぁ」
オーラがなくなるまでの放出回数は十数回ほどだ。そう考えると、袖女に内包されているオーラの総量はそこまで多くないように見える。
(1回の戦闘ならともかく……連続して戦闘すると、オーラ切れを引き起こしそうだな)
どうしたものかと考えて数秒、実際に俺も行ったとある方法を思い出した。
「おい。袖女」
「なんでーすか?」
袖女はよほどくたびれているのか、骨のない緩んだ声で返答する。
「放出できるオーラはまだあるか?」
俺の放ったその言葉に、袖女は何を言ってるんだこいつと言いたげな表情になり、反論の言葉を述べる。
「さっき言ったじゃないですか、これ以上全身にオーラを回転させると――――」
「別に回転しなくてもいい。お前の気を保てる分のオーラだけを残して、それ以外を外に出すのは可能かと聞いているんだ」
全身にオーラを巡らせる場合、どうしても全身分、オーラを使う必要がある。つまり、一括で多量のオーラを使用するのだ。
袖女は、もうこれ以上全身にオーラを回転させる分のオーラはないと言いたいのだろう。だが、俺の言っていることはそれではない。単純に、袖女の意識が途切れるギリギリ寸前まで、オーラを減らせないかと言ったのだ。
その意図が理解できたのか、袖女はアゴに手を当て、考えるような素振りを取った後、結論が出たのか、こちらに目を向け、言葉を放つ。
「わかりました……けど、それで一体何をするんですか?」
その言葉に、待ってましたと言わんばかりに言葉を返した。
「スキルってのは筋肉と同じだ。いじめ抜くほど使い道が増えたり、スキルそのものが強くなったりする……ゲームのMPのように、力の総量が決まっているスキルは特に」
その言葉に、袖女はハッとした顔をして、急いで残りのオーラを放出しだす。
これは、俺の闘力操作でも行った訓練だ。
(俺の場合は、実戦の中で毎回闘力を切らしてただけなんだけど……)
まぁ、実戦の中でやるのも訓練の中でやるのも、さほど大差は無いだろう。
「うぐっ……!?」
そう思っていたのもつかの間、オーラを放出していた袖女の体が、急に倒れ始めた。
「おっと……」
しかし、俺と袖女の距離はさほど離れていなかったため、余裕を持って支えることに成功した。
「す、すいません……つい、出し過ぎてしまいました……」
「謝るな、最初はこんなもんだ。意識自体はあるんだろう?」
「は、はい。なんとか……」
「そうか、じゃあ……」
俺は袖女の目を見つめて……
「また明日もできるな!」
「……え?」
袖女の何かにヒビが入った音に、俺は確かな快感を覚えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます