本格的に
俺はその後、ブラックを回収しに、俺が来る前に戦ってくれていた彼女のもとに向かった。
「ワウン!!」
そこは何の変哲もないビルの屋上。そこにチェス隊の彼女とブラックはいた。
ブラックは俺の姿が見えた瞬間、ぴょこぴょことビルの屋上を飛びまわって存在をアピールする。俺の勝利を祝福しているかのようだ。
(大丈夫だって……すぐ行くから)
俺はそのままビルに着地。それと同時にブラックの突撃という名の手荒い歓迎を受ける。
「おおっと……悪い。思いのほか時間がかかった」
犬によるアロマセラピーで癒しを得つつ、気まずそうにもじもじとしているチェス隊の女に目を向けた。
「あんたも大丈夫か? みたところひどい怪我をしているみたいだけど」
まさか俺から話しかけられるとは思わなかったのか、少しぼうっとした後、ハッとしたようにビクリと体を震わせ、明らかに緊張している声色で返答した。
「あっ……うん! 正直、大丈夫とは言えない傷だけど、応急処置はしたからまだしばらくは問題ない……と、思う」
チェス隊の女はそう言ってくるが、素人の俺から見ても応急処置程度でどうにかなるような傷では無いことはわかる。やせ我慢というやつだろう。
「だから今は、私よりもそこの彼女たちを……」
チェス隊の女が指差す方向に目線を向けると、そこにはひどい怪我を受けて、気を失い横たわっている2人の女の子がいた。隊服を見るに、彼女たちもチェス隊メンバーであることがわかる。
「こいつらは?」
「私と一緒に戦ってた子たちで……大事な友達なんだ。だから……」
(友達……ねぇ?)
俺は黙って横たわっている2人に近づき、その体に触れる。
「……ほう」
2人ともなかなかに鍛えあげられた体だ。女性らしい細く柔らかい体の奥に、確かな筋肉の感触を感じられる。これにスキルが加わると考えると、かなり強い兵士だったのがわかる。
(できればこの2人のスキルも確認しておきたかったな……)
「近くに医療施設はあるのか?」
「本部の中に医務室があるけど……今の私じゃ、この2人を運ぶ力は……」
「いや、それだけで充分だ」
俺は人差し指と中指を動かし、傷ついて倒れた2人の体を浮遊させる。
「……!!」
目の前で行われたその行動に、チェス隊の女は目を見開いて反応する。
おそらくだが、俺の戦いをブラックとともに見ていたのだろう。あれを見れば、誰しもが攻撃を跳ね返すスキルだと断定するはず。そこにこの浮遊を目にしたら、いやでも動揺してしまうのは必定。
(まさかスキルが3つあるとは思わんよな〜)
「ほら、お前も」
「えちょ……」
片手でチェス隊の女を担ぎ上げ、ビルから神奈川本部へと飛び立った。
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