成し遂げている約束
俺がゆっくり放った拳は、いとも容易くグリードウーマンだったものの腹を貫いた。
痛みによるショックか、注射器で注入した薬の時間制限か、グリードウーマンだったものは、自分だけ時が止まったかのように動かなくなる。
「……そうか」
やがて、その皮膚と肉はドロドロと溶け出し、元の体へと戻っていく。
(なるほど……体そのものが変質するわけではなく、周りに肉をつけるタイプの形態変化……体の脂肪分を使っているのか? よくわからないな……)
俺はその薬に違和感を感じながら、まだ意識があるであろうグリードウーマンにだけ聞こえるよう、小さな声で話しかける。
「……おい」
「ん……あ?」
「……お前が何のために拳を振るうのかは知らん。だが、他の奴らとは違い、自分の楽しみのために戦っているのではないというのはわかる」
俺はゆっくりと、グリードウーマンに聞こえるように話を続ける。
「……心配することは無い。いずれ俺が世界を変える。だから……」
これは、いい相手がおらず、成長を感じられなかった時間に来てくれたグリードウーマンに対してのせめてもの礼。
そして――――
「眠っていろ。俺が起こすまで」
この女には、利用価値があるから。
そうして、俺の胸の中で、グリードウーマンが眠りに落ちた。
(……顔はいいな)
袖女とは真逆のキレイよりな顔立ち。やはり神奈川派閥はレベルが高いんだと実感させられる。
「……よし」
目的は達成した。後はグリードウーマンを神奈川本部まで連行するだけだ。
(……あ、そうだ)
空中にいたあの時、グリードウーマンの背後にいた頭貝殻のあの女。そういえばあれもグリードウーマン並の大犯罪者だったはずだ。
(名前は……シュルカーだっけ?)
俺はなんとか、頭の片隅にある大犯罪者の名前を思い出すと……
「読めてるんだよ」
いつの間にか俺の背後にいたシュルカーに即座に反応。ナイフでの攻撃に対して、反射を使い弾き飛ばす。
(シュルカーはスキルにさえ気をつけていれば問題ない)
そして、反撃しようとした瞬間――――
「そこまでよ」
その異様なまでの威圧感に、俺とシュルカーの動きは止まった。
「まったく……私が不在の間にやってくれたわね」
神奈川派閥の実質的トップ。黒のクイーン、
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