またぶらぶらと

 次の日、朝にもともと強くなく、深夜に行動することが多い俺は、袖女に叩き起こされ、今、外に出ている。


「ふぁ……」


 もともと袖女の部屋は寝床としてしか使わないことを約束していたのでこの扱いは当然なのだが、寝て着替えたらすぐに外に出されるのは中々に辛い。


 袖女も気を遣って朝ご飯ぐらい作ってくれるんじゃないかと思ったのだが、そんな事はなく、窓から外に追い出される。なので朝ごはんを取っておらず、お腹がペコペコなのだ。


(……コンビニでも行くか)


 1日目に見つけたコンビニに行くため、まだ寝ぼけている脳を何とか動かし、おぼろげな記憶で道を選んでいく。


 そうやって道を歩いていると、とある店が目に入り、俺の体をピタリと止める。


「おお……」


 その店はとても小さく、外装は無数の草木に覆われているおかげで逆に目立っている。看板に書いてあるメニューを見てみると、コーヒーやオムライス、サンドイッチがあることから、喫茶店であるとわかった。


(……よし、ここにするか!)


 神奈川でこんなお店、他に見たことがない。こんなところで出会えたのも何かの縁。ここはその縁に逆らわず、この店で腹を満たすべきだと俺の脳が判断した。


「……どうも〜」


「いらっしゃいませ」


 中は予想通りのモダンな作りで、ヒゲを整えたダンディなマスターが出迎えてくれた。


 椅子や床などからかなり長い間経営している店だとわかる。悪く言えば古臭い、よく言えば年季の入っている。そんな喫茶店だ。


(だけど、こうゆうのは嫌いじゃない)


 俺は内装を一望した後、カウンター席に座り込んでメニュー表を手に取る。


 メニューには外の看板に書いてあったメニューだけでなく、グラタンやパスタ等、かなりがっつりしたものも頼めるようだ。


 ここら辺の料理は食えるだろうか。お腹と相談してみる。


(……さすがに朝からは無理だな)


 結果、俺のお腹はがっつりした料理を食べることを拒否。なので、ここは普通に眠気覚ましのコーヒーとトーストを頼むことにした。


「すいません。コーヒーとサンドイッチを1つ」


「はい。少々お待ちを」









 ――――









「どうぞ」


 それから数分、パンのかぐわしい香りとコーヒーの香ばしい香り、その2つを引っ提げ、俺の下へとやってきた。


 今考えると、朝から喫茶店に入ってコーヒーを頼むなんておしゃれなことは全くやらなかった。


(朝の喫茶店……初体験だ……)


 目の前の光景によだれが出そうになるのをこらえつつ、初めての体験に胸を躍らせた。

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