東京憑依編 第十三章 混合
突然の驚愕
「…………嘘だろ?」
俺がこんな事になったのには、少し前にさかのぼる。
――――
暗い暗い闇の中。気絶している時の暗闇ではない。夢も見ないほど深く、心地よく深い睡眠の時に感じる闇だ。
その闇はゆっくりと光が差す事はなく、覚める時は急に、何の前触れもなくまぶたが開くものだ。
いつにも増して今回は安眠できた。目覚めるときはベッドに未練なく、すばらしい目覚めを体験できることだろう。
そしてついに、闇は一瞬で晴れ、そのまぶたを開いた。
「…………」
………知らない天井だ。見知らぬ臭い、複数人の足音、人肌に触れた空気が生暖かい。まるで普通の一般家庭の家のようだ。
(………知らない天井?)
「
「………へ?」
ベットから起き上がった俺が目撃したのは、ゲーム機に俺の家とは違うタイプのPC。体全体が見える大きな鏡、小学校の頃から使っている様な歳不相応の勉強机。壁紙も今さっきまで俺が寝ていたベッドも、何もかもが寝る前とは違った。
そして下から女らしき声が聞こえる。下から聞こえると言う事はおそらくここは2階なのだろう。
俺は急いで鏡の前へ移動し、自分の顔をチェックしてみると……
「な、なんだよ……これ……」
そこに写っていたのは超絶美形のイケメン。鼻筋がすらっと通り、髪の毛も白。まるで少女漫画に出てくる男キャラの様な顔立ち。俺の普通顔とは比べるべくもないほど、いやに綺麗だった。
「…………嘘だろ?」
俺は自分が置かれた状況に困惑しながらも、ドアの方向へ視線を向け、ドアノブをひねり、部屋の外へ出る。
俺の2階と言う予想は当たっていたらしく、部屋の外は廊下になっており、その奥には下へ続く階段も見えた。別にここら辺は用心する必要もないので、足早に階段に近づき、降りていくと…………
「あ! お兄ちゃん遅いよ〜学校遅れちゃうよ?」
「珍しいわねぇ、剣斗がここまで寝るなんて……まぁ、いいわ。ご飯できてるわよ」
そこにいたのは見知らぬ人物。黒髪のツインテールで俺の事をお兄ちゃんと呼ぶ女に、茶髪の30代ぐらいの美人。絶対に見た事ない2人がリビングらしき部屋で待っていた。
「………何が一体どうなってるんだ」
――――
「………」
あの後、俺は困惑しながらも朝ごはんを食べ終え、学校までの通学路を歩いていた。
なんだ? 一体何が起きている。俺は確かに袖女を見送り、その後すぐに床についたはずだ。そのままいけば、次の日には任務もないのびのびとした日を過ごしていたのに。
(くっそ……頭がうまく回らない……まだ混乱してるみたいだな……)
「どうしたのお兄ちゃん? 大丈夫?」
「え……あ、ああ……」
俺は隣にいる俺の妹らしい人物に心配される。正直、名前も知らない人物に心配されても、全然ありがたいと思わない。
名前を聞こうかと思ったが、もし本当に俺がこの女の兄だったとしたら、違和感を持たれる可能性があったので聞けなかった。今は俺に対して何も感じさせない事が大切。
「あっ! 学校! 見えたよお兄ちゃん!」
「え………」
俺は俺の妹らしい人物の声に反応し、頭を回しているせいでうつむいていた頭を上げ、俺の通う学校らしい建物を見る。
(………え?)
それは見覚えのある建物。俺の記憶の中心、俺の生きる意味となった建物に近く、昔一度来たことがある場所。
「ここって………東二……?」
東京第二養成高等学校………俺の母校、東京第一養成高等学校と同じく、スキル保持者を育成する、いわば姉妹校である。
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