いきなり
「うーんしょ……」
その日の夜。袖女特製の夜ご飯を食べた俺は、体を伸ばしながらパソコンと対面していた。
「うーん……」
普通に考えて、前の任務で300万を手に入れたのだから、もう任務を行う必要は無いのだが、元々、俺が任務を行う理由は自分の訓練の為であり、金はそのおまけだ。
それに、袖女だけパートに行かせて、俺が家で毎日が日曜日っていうのは、なんだか情けない感じがする。
「って言ってもな〜」
歯ごたえがありそうな任務が1つもない。今更護衛任務など受ける意味もない。
(明日は無しかな……)
そう思い、冷蔵庫から飲み物持って持ってこようとしたその時。
「……お?」
パソコンにメールの通知が入ってくる。俺のパソコンにメールが入ってくるような用件など、たった1つしかなかった。
メールの通知が来た瞬間、俺は冷蔵庫に向かう足を止め、ものすごい形相で食い入るように画面を見る。
そうやってメールを開くと、そこにはやはり任務のメールが記載されていた。
『大阪派閥本部に侵入し、十二支獣を殺害しろ。報酬 一体につき1000万』
「コイツは……」
見るからにヤバそうな任務。いかにもな名前をしている"十二支獣"。
俺はまたしても、新たな未知に遭遇しようとしていた。
――――
「昨日ぶりですね……で、聞きたいこととは?」
「よく言うぜ、わかってるくせによ」
次の日。俺は黒スーツを呼び出していた。
「お前ら闇サイトが昨日送り出してきた任務……その中にある"十二支獣"ってのは何なんだ?」
「……は? 十二支獣? ……まさか、十二支獣殺害任務が出されたのですか?」
「え? 知らないのか?」
俺がそう答えると、黒スーツは頭を抱えた様子でぼそぼそと少し愚痴る。
「はぁ……あの方々は……」
「……? どうした?」
「……いえ、なんでもありません」
どうやら今は愚痴る時ではないと認識したのか、すぐに仕事モードに切り替える。
「……私はあくまで報酬の引き渡し役なので、任務の内容までは把握してないんですよ」
「そうなんか」
いや、よくよく考えてみればそりゃそうだ。任務を受けているのは俺だけではない。1日に何十人何百人と捌くのだ。そんなもの、社員それぞれに別の役目を与えなければ回らない。
「まぁ……そりゃそうか。でも十二支獣については何か知ってるんだろう?」
「そりゃ知ってはいますけど……」
「ならそれを教えてくれ、金が必要なら出すからよ」
「別にいいですよ……教えるぐらいなら」
そう言って、黒スーツ静かに話し始める。
「十二支獣と言うのは要するに、先日話した動物の兵士……その隊長クラスのものと考えて構いません」
「隊長クラス……神奈川のチェス隊みたいなもんか」
「はい。そして、その十二支獣に分類される動物と言うのはいつも決まって
「干支ってあの?」
「ええ、そして、十二支獣の数字が多ければ多いほど、その強さは別格だと言うことがわかっています」
「数字……?」
「順番ですよ。例えば、鼠は1番目。龍は5番目でしょう?この場合、龍の方が明らかに強いことがわかっています」
「なるほど、そういうことか……つまり、猪が1番強いってことなんだな?」
「はい。ですので、その任務を本当にお受けになるのでしたら、猪型の兵士には絶対に近づかないほうがいいでしょう。無論、十二支獣ではない猪型の兵士も、いるにはいるのですが……最強の十二支獣の可能性がありますからね」
(なるほどな……つまり、狙うは順番が若い奴ら……鼠や牛って訳だ)
「しかし、順番が若いからって安易に攻めてはいけませんよ……1番順番が若い鼠も、ハイパーランク並の力を持つと聞きます。いくら黒ジャケットと呼ばれたあなたでであろうと、難しいかと……」
「ハイパーランクか……それなら何の問題もない……この任務、受けるよ」
「……そうですか」
黒スーツは少し考え込んだ後、意を決したようにこちらに向き直る。
「心配するようなことを言ってもしょうがないですね……どうかご無事で」
「ああ」
俺と黒スーツはその後も少し話し、別れることとなった。
――――
「…………」
と、言うわけで、今日の夜、袖女と一緒に大阪派閥本部に突入することが決まったわけだが……
「どうするかねぇ……」
もちろんのことだが、堂々と何の策もなく突入するわけにはいかない。感覚が狂ってきて、今はそこまで感じなくなったが、これは立派な犯罪なのだ。殺される危険性も考慮しなくてはならない。
それを加味して、できるだけ安全に十二支獣だけを殺害する方法。
それを考えていると、空に高速で飛行する鳥を見つけた。
「…………やっぱこれしかないか」
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