乱入
「……は?」
「……おい、どうした? わしの強すぎるスキルに震えたか? それとも阿保すぎて理解できなかったか?」
ジジイは冗談じみた感じで俺に問いかけてきたが、ジジイの発言はあながち間違っていなかった。
実際、俺の頭の中では、そのスキル内容に絶望している部分とそのスキルに理解が及ばなかった部分。半半になってしまっていた。
「まぁ、簡単なことを言えば、未来よちならぬ未来攻撃。未来身代わりだな。お前が放った攻撃も、未来のわしに肩代わりしてもらうことで攻撃をなかったことにしたんだ……ま、その代わりにその未来にたどり着いた時にダメージを受けるんだがな……まぁ、そのダメージも一度にじゃなく、分割すればいい話だしな」
「お前に攻撃した時も同じ原理だ。違う時間軸の未来のわしたちと一緒に攻撃した……お前には、わしの拳300発分の攻撃が入っているはずだぞ?」
「…………」
掴めた。やっと掴むことができたスキルの内容。その全貌が明らかになった。
後はそのスキルに対して対策を考えるだけ。
(さぁ、どうする……? 反射を使うか? 闘力操作を使うか……?)
俺はしっかりと考え、ジジイのスキルに対しての策を考えていく。
考えて……
…………
「……お前、わしに対抗できんだろ?」
――――
「……何言ってるんだ? こっちは対策ありまくりだぜ?」
「いや、嘘だな。お前にもう勝ち目はない。お前自身が1番わかっていることなんじゃないか?」
「……なぜそう思う?」
「最初の時点で何となく察していたぞ? ……最初、あれだけ時間を与えておきながら、お前は小石での攻撃やただ殴ってくるだけの攻撃ばかり……その中に、わしの有効打になるものがなかった以上、お前はスキルを駆使しても、わしには勝てない。そう結論づけるには十分だった」
「…………」
要するに、このジジイは俺のスキルがどうあがいても自分に勝てないと言う仮説を立て、戦っていたと言うことだ。
……いつも俺がやっている戦法。それを逆に使われた。
いや、一歩上をいかれたと言う方が正しいだろう。
……いや、それがなかったとしても、俺には打つ手はなかっただろう。
このジジイの言う通り、俺の脳ではいまだに勝つ方法が思い浮かばない。
反射や闘力操作を使って防御しようにも、未来のジジイの2発目3発目までは防げない。たとえ守れたとしても、それは勝ちに直結しない。
逆に攻撃に転じても、どんな一撃の威力をあげようが未来のジジイに攻撃を肩代わりされて無効化。
八方塞がり。
「終わりだ」
うなだれた俺の頭に、拳が襲いかかった。
――――かの様に思えた。
「っ……!?」
「何が……!?」
瞬間、頭上から何かが降ってくる。着地したときの重い音や瓦礫の舞う量から、その物体の大きさが伝わる。
「チッ……次から次へと……」
ジジイはまたしても現れた物体に苛立ちを隠しきれていない。さすがに今夜だけで、2回もこの場所に何かが入ってくるのは不快なようだ。
一方、俺は…………
(なんだ……!?)
逃げたほうがいいと言う事はわかっている。しかし、突如現れた物体に好奇心を刺激され、その場から動けずにいた。
人間だからこそ溢れる好奇心と言う感情。それが俺を引き止め、その姿を確認しようと目を見開いていた。
そして、注目を集めている物体はと言うと……
「動いて……!?」
ズシン、ズシンとまるで歩いているかのような音を立てている。その音がどんどん大きくなっていることから、近づいてきていることが分かった。
そして、その身を包む砂埃が晴れ、その姿があらわになる。
4メートルほどの体躯、黄土色の毛並み、体中に黒のラインが入り、その風貌からは圧倒的な強者の貫禄と言うものを思わせる。
「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
夜の闇にその身を包み、月の光をバックグラウンドに……
その虎は、強く強く吠えていた。
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