身の上話

 さて、黒犬の名前もブラックに決まったことだし、これからのことを考えなくてはならない。


 ここで忘れてはならないのは、俺の最終目標はあのクソ幼なじみとそのその周りのストーカー騎士団、三山、その他の東一の生徒全てだ。大阪での生活は、あくまで捕まらないようにするためだけのものであり、のんきに隠居隠居生活をするわけでは無い。それを忘れてはならないのだ。


「とりあえず、資金源を確保しないとな……」


 残りの資金は450万とそこら。この量では、家賃プラス生活資金でいつ底をつくかわからない。もしかしたら1年以上は過ごせる金額なのかもしれないが………本来なら高校生の俺では、この金額でどういう生活ができるのかもわからないし、何年も特訓だけで過ごせる金額とは考えづらい。ここは安定した収入を獲得し、より万全に体制を整えた上で自分を磨いていかなくては。


「どうせいつかは離れるんだから……辞めやすいバイトのほうがいいか? しかし収入は少ない。だとすると、就職した方が……いや、しかし、身分の証明書もない俺を雇ってくれるところなんてある訳が……」


 そう、それだ。俺には身分の証明書がない。これでは就職はおろか、バイトさえ雇ってくれないところが出てくる。

 高収入な所であるほど、その傾向は大きいだろう。つまり、俺の身分では高収入は難しいと言う事だ。

 だが、働くならば、やっぱり高収入が望ましい。


「……やっぱ闇営業しかないか」


 東京と神奈川であれだけ大犯罪ぶちかましたのだ。今更裏の仕事をやるのに躊躇はない。なおかつ収入も高く、身分証等も必要ない。なおかつ大阪から離れる時も、余計な相手側への説明などもほとんど必要ないだろう。今の俺の立場から見て、これ以上に都合の良い仕事は無いわけだ。


 ……やってみるか。


 さて何をしようか。ボディーガード? 取引の代役? とにかく収入が高いものであればあるほど良い。しかし、その仕事へたどり着くためのルートを確保しなければならない。意気込みがあっても仕事につけなければ意味は無い。


「だが、こういうときのために……ネットがある」


 ネットというのは広大だ。ありとあらゆる情報や問題が掲載されている。最近では"ネット面接"なんてものもあるほどだ。闇営業サイトの1つや2つ、あってもおかしくはない。


 俺は早速、事前に購入しておいたパソコンを開き、そうゆうサイトにつながりそうな単語を打ち込んでいく。


 ちなみにブラックは俺のパソコンに興味津々なのか、俺の足によじ登り、俺のパソコンに辿りつこうとしていた。


 そんな事をしていて約10分。ついにとあるサイトにたどり着くことにことに成功した。


『大阪版闇営業サイト 千斬』


(嘘くっさ……)


 だが、闇サイトと言うのはどんなものでも嘘くさいものだ。俺はそう割り切りつつ、任務一覧にダブルクリックし、どんな仕事があるのかを確認する。そこには、先に俺の言った取引の代役やボディーガード、俺の予想だにしなかった任務。ありとあらゆる闇営業が記載されていた。


 その中に、特に目を引くものが1つ。


『大阪の大富豪 万場まんば金博かねひろの金庫に眠る宝 金の象像を奪え  期限 無し   報酬 300万』


 すばらしい。まるで俺のために作られた様な任務だ。盗むタイプの任務なら、2ヶ月前にどでかい窃盗を終えた後。今更この程度のことなど、お茶の子さいさいだ。


「よし、こいつを……」


 俺は早速、了承ボタンをクリックし、その任務を受ける。どうやら俺の他にも、5人この任務を受けた奴らがいる様で、他の参加人数の数が写し出されていた。


「なるほど……任務達成も早い者勝ちってわけか……しかも参加人数も表示されると……」


 どうやら宝を手に入れた後は、任務達成のメールを入れれば、集合場所と時間が記された返信が返ってきて、そこに宝を持って行けばその場で報酬金と引き換えてくれる様だ。

なかなか良心的な作りじゃないか。闇サイトの中では当たりを引いたらしい。コンピュータウィルスが侵入したような警告は無い。


 さて、これで俺も任務に参加する事になったわけだが……問題は任務の開始時刻だ。他の参加者は間違いなく俺より先に任務に参加しているわけだから、準備も既に済んでいるところもあるだろう。ならば、俺の任務開始時刻は……


「……今日の深夜。一気に攻めるしかない」


 先の神奈川で、昼に盗みを働くことの危険性が嫌でも理解できた。まだ日が明るい時だと、俺がどこに逃げたかを目で追われてしまう。なのでここは定石通り、深夜に。そして大胆に、今日。一気に進めていこう。


 そうと決まれば、最低限の情報だけでも迅速に回収しなくては。俺が今から始める作戦は、どうあがいても情報が不足してしまう。どちらにしろ情報が不足するならば、しっかりと濃い情報を集めるほかないだろう。


 俺はネットを巧みに使い、万場家について、調べあげることに決めた。









 ――――









「ふーん……なるほどね」


 万場家は割と最近の富豪らしく、株が大当たりしたことにより、一気に億万長者になったらしい。ドンダケ株上がったんだよ。


(万場家の中に、株を見極めるようなスキル保持者がいたのかもな……)


 なかでも、万場金博は領主でありながら、かなりのオークション好きらしく、その中で金の象像を手に入れたらしい。

 家の場所は大阪派閥の首都大阪。ここから車で20分ほどのところだ。



「……よし」


 俺はパソコンをパタリと閉め、1連の動作の終了に、ふぅと一息つく。






 大阪派閥での初仕事も、どでかいものがもらえそうだ。

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