変わりゆく
「このお方に何をしている!!」
俺の拳を止めたのは騎道雄馬だった。おそらく才華からは帰れと言われていたんだろうが、我慢できず後をつけてきた形か。
「てめぇ……騎士の次はストーカーか? ずいぶんと多趣味なもんだなぁ?」
「だまれ、この世のゴミが……生徒に向けてのスキル行使は校則違反だぞ? ずいぶんと口は達者なものだ」
「うるせぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
これ以上闘力を使用すれば闘力が0になり気絶してしまう。才華を背にして騎士の様に立つ騎道に向かって残った左腕をふるう。
「2人とも!! やめて!!」
「ッ……!」
才華の叫びで一瞬動きが止まる騎道。
これはチャンスと左腕で思いっきり騎道の顔面を殴りつける。
鈍い音を立てて叩き込まれた左腕だが……
「所詮無能力者……この程度か」
打撲の跡すら付けられずほぼノーダメージのようだった。
「お前のような奴には殺そうとする気もおきん……これでもくらっておけ」
騎道は無造作にあげた左腕で俺の顔面を殴り……俺は石ころのように吹っ飛んだ。
――――
(くそっ……くそくそくそくそくそくそくそぉ!!)
深夜になった。あの後、俺は保健室に運ばれ周りの良い見せものになってしまった。
騎道が学校側にスキル行使の報告をすれば、俺の退学は免れないだろう。
もう何もかも終わりだ……
俺はこの世の終わりのような顔で、お通夜モードになり、俺だけが知っている散歩道を歩いている。
俺は昔から散歩するのが趣味だ。悲しい時や苦しい時、悩んでいる時はいつも自分1人で路地裏や公園を歩きまわっていた。
散歩は俺を何とかしてくれる。そういう謎の信頼感が散歩にはあったのだろう。気がつけば深夜の路地裏を歩いていた。
だが……
(もう……駄目だな……)
もはや絶望的だ。心なしかいつもより空気が冷たい気がする。
(まだ6月の後半なのにな……)
今のうちに夜逃げしろと言う暗示だろうか。そんなバカなことを考えていると。
「グフフッ!! やっぱり君は最高だね!」
曲がり角の奥から声が聞こえる。低い声色から歳をとっていることがわかった。大きくなっていく心臓の音ゆっくりゆっくりと曲がり角を除くと……
両脇に大人の女性を侍らせた役人の服を着た男と、ペストマスクをつけて顔が見えずローブに包まれている男がいた。
「ごほん……ありがとう。感謝するよ。これでまた僕の地位を維持できる。」
「そんな礼どうでもいいんだよ。んじゃぁ、例のものをもらおうかな?」
そして役人風の男がペストマスクに渡したものは……スーツケースいっぱいに詰め込まれた……大量の札束だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます