第40話 月詠みの巫女とお話をした
「夜半にごめん、一寸見て貰いたくて、カニ美味しかった?」
「アハハハ笑っちゃうくらい美味しかったよ、どこにも売ってるとこが無かった」
「そう言えば虫とか大丈夫なの?」
昨日の事があったので聞いてみた。
「俺は畑とか持ってないからね、完全排除してるよ」
成程、生活には昆虫も役に立ってると聞くしな。
「野菜を貰えるのはほんとにありがたい。大丈夫、山を消した時ほどひどくないよ」
無意識に助けを求めたのか、全然覚えてない。
「山を消したって・・」
「しー」
焚火の反対側にストレチャーの背を上げて座っているスーチさんと背を伸ばしてコクコクしてるバニラさんが居た。
「そう言えばプリンって食べる?」
「肌色のやつか、甘い匂いを何か思い出すぞ」
「じゃあ明日のおやつに持ってくるよ」
「楽しみだな」
「じゃあまた」
「おう」
今日は卵を使わなかったので余っている今から作っとこうかな。
「なあ、この衝立の向こうどうなってんだ」
ガラさんが顔を出している。
「企業秘密です」
「何秘密?」
さすがのマナリペア、気分すっきりで軽口が出ちゃった。
「女の子が出てきたり、時々秘密会してたり教えちゃだめな奴か?」
「知ったら帰れなくなりますよ」
「それは困る、まあ変な薬使ったわけじゃなさそうだしいいや」
「鷹の目ずっと使ってたんですか?」
スイっと顔をひっこめた。
「ありがとな、引っ掛かってたんだわ」
負け惜しみ半分ってとこか人間だもの男だものカッコよくはならないよね。
ガラさんは四十半ば色々あるだろう。
明日は負けんが。
皆がそれぞれの寝床に帰っていったらリサとリリカが横に来た。心配もするだろう当然。建物の当たりは付いている。
「コハクって名前でどれほどの人と交流できたかも分からない十四五歳の子」
「わかった」
「はい」
ウジルノウ邸の外れの林の中に焼却場があり近くに小さな祠があって奥に地下道があった、多分この奥。
扉が三つあった、どれも厳重に施錠されていて、今のところただ一人のツキヨミの巫女を隠している。
テコ集落はなくなっていた、虐殺までは無いと思うコルトバでツキヨミの巫女の噂は普通に流れている。
さて最後の扉を潜ったわけだが。
「いやぁぁぁあ、助けて、助けて、ごめんなさーい」
あのもしもし。
「許して、許して、おねがいします、えーん」
言葉は悲壮だがときどき笑っている、演技したいみたいだけど、喜びが抑えられないのか?。なら良いけどナツフカさんのことも有る。
しばらく見ているとリリカが言った。
「よかったね、心配だった?」
騒ぎが急に収まってくぐもった返事が返ってきた。
「間違いじゃないか、あの子は実はいないんじゃないかってずっと思って、フクリちゃんは大丈夫?」
感情を必死に抑えて聞いてくる。
「僕が絡むとみえにくい?」
「いるかいないかも分かりにくい」
そうなるのかと思いながら息を整える。
「僕には色んな知識があってさ、大丈夫何も問題はないよ」
「よかったよ、それでお風呂、お風呂に入れる?」
「準備してますよー、よいしょっ」
駒の付いた湯舟を押し入れてお湯を満たす。
「これ?、いいね、こんなの」
「あっこらリサなにをする」
「だーめです」
目をふさがれた、しょうがない。
ここは地下室だが空気はよく循環されている、シーツは独身レベル、服は普通だが食事はフクリちゃんと同じ、粗食が何とかと言う話を聞いた事があるが本人の意思かどうかが一番大事。
「やっぱり拭く位しか出来なかったの?」
バシャァ。
「コハクはお湯だけどね」
お互いの姿は見えたのか。
「何か食べる?」
「いじわるだじぇ」
確かに、パンと野菜がここにあるんだもんな。
リリカがたこ焼き押しを決め顔でするのでたこ焼き、お好み、焼きそばの粉セットでおもてなし、私が焼きそばを作った。
二人ともチラチラ見ている、初めてだったか。
コハクさんが風呂を上がった時に丁度全部できた。パンとジュウスもトレイに置いておいてワゴンに乗せて渡す。
ミニトングを一緒にだしたらお箸でいいと言われた、知識だけでなく体感も得られるらしい。
「これ、キャベツ甘ー、辛甘ーなげー、これトロ、中トロ熱っあははは」
体感に味は含まれないのかご満悦、良かった。
後ろを見るとリリカがドーラン君とたこ焼きを分けている。ナツフカさんがふんわりとそこに居てロリエスちゃんとシンシアちゃんを連れてお好みが焼けるのを待っていて、次の夜番だからとテミスさんが焼きそばの残りを見ている。
テミスさんにちゃんと焼きそばを作り皆満足して帰っていきコハクさんに話を聞いた。
ソーサルレイでウジルノウに見つかったのは事実でその時スキルは開眼していなかった、ドウル・デニ・ジーニアスに今年も無茶な税を吹っ掛けられ消沈して座り込んでいたと当時の護衛の騎士から聞いたのだという。
最初は普通に暮らせていたが大きな流れが西の都市に来ると占ってから狂い始めた。助けを求めるようにホシヨミの事を話してしまい当時両親をホシヨミの力で事故に見せかけて殺害したゾルダンを、子飼いのバラバルも含めて脅迫、サインラル男爵暗殺直後にすべてを取り上げたと。
宿車に向かいながら反芻する、ムジナたちがマウントを取り合ってややこしくなったっという事か。
そう思いながら専用の寝台スペースのドアを開けて崩れ落ちた。
「どうしたのオムルくん」
「ごめんリサ姉」
「そうなるよねぇ」
なんもかんも台無しだー、此処で寝るかクリームさん!!!。
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