第35話 とうとう負けたけど騎士団をカッコよくできた

 「きぃぃぃぃやっほーーい」

 大きな荷車が坂を駆け上がってくる、本来の業者席に姦しセットが並んでる足元を隠してるので割と優雅に見える。

 さっきの話を聞いてちょっと反省、この世界で見た物に似せるようにした。


 牧場で干し草を運ぶときに使ってた車、二人で左右の車輪を直接漕いで方向は力の合わせ方で左右に切りブレーキは地面に棒を突き付けるもので荷車との境に風受けの幕がある。


 これを模して足元のカバーの下に三組並びのクランクペダルを付けて見えない荷台の下で後輪までプロペラシャフトで連結、当然左右の車輪の回転差を埋めるデフも付ける、車輪に付けていた回転調整は左座席に、ハンドルは真ん中に、右座席にブレーキを置いた。


 荷車の後ろは拡大鉄でドア付きの風受けを作りホロの下半分を鉄製にして鰓のような風受けを付ける。

 試してみるとペダルをこぐ必要は無かった、上り坂で少し漕ぐぐらい、子供達も手伝うとブレーキなしでは危険。


 喜び勇んでこちらに駆けてきたポーステさんに留め人のセイアさんが待ったをかける。


 「坊ちゃんあれに今すぐ紋章とこの伝声塔の名前を入れてください」

 「そうだねあれは無いよう」

 クリームさんが歩いてきて言う。

 「あたしらが見ると人が輝いて見えちゃう」

 「そうなの?」

 「あたしたちの馬車・・」

 演技か、演技なのか、すごいな。しおしおとなったポーステさんから目を移すとマイヤーさんが居た。

 「何言ってんだい、家の第二第三第四だろう?」

 ドロウンさんが頭をかいてる、なるほど。でもこの人たち旦那の一人って、何でもないです。

 防具として団長式盾、武器としてスリングを渡し最後の手段スリングに使えるボウガンの矢を渡した。

 リリカセンサーが働いたみたいだから。


 最後にお風呂をユニットバスにして専用の水タンクを置き日本の物より大きい熱交換器を付けてトランプと砂糖を配り朝の鍛錬をしてお暇した。



 今私は馬車の中セリアーヌさんの膝の上でテミスさんにほっぺたをつつかれている。


 「膨れてるふくれてる、ふふ」

 「いいじゃないか、ガラはあれで終わりだ君は今からだろう?」


 違う反芻してるんだ、あの時の一歩があと少し必要だった、ならその手前で右足に体重をもう少し残せば、だめか、筋力か。

 ところでリサとリリカ、前でなにをはあはあしてるんだ?。

 「あ、ちょっとセリアーヌさん、何してるんですか?」

 頭の後ろでごそごそしてる。

 「や、なんかごめん」

 「何で謝ってんですか?自分でして」

 頭の後ろに付けられたリボンを取ろうとすると。

 「「「「ちょっと待って、もうちょっと」」」」

 いや別にいいけど美の付く四人に真剣に言われたら断れないけど。


 昼の休憩中シンクセットの片付けを見ながら行程の確認をする。衛星写真を見て今日の宿地の確認みたいな。

 「東はよその土地だろ確か」

 「だよ、渓谷通るしかないね」


 サソウス領が三文領と呼ばれる一つがミレジの町にある、西から山脈の一部がここまで出ていてほぼ町を分断して東は他領のバーラッド領、町を通れば普通に移動できるが一部の人がこの地形を黙って見てるわけもない、バルバラの発祥地と言えばわかりやすいか。


 とても発展しているが私たちが何事もなく通れる可能性は無い。全くない。漫画のようにない。

 そして見ているのは写真ではなくリアルタイムなわけで。

 「何だこいつら」

 「ジーニアスっぽいけど微妙に違うな」


 山脈を馬車が通れる唯一のルート、この林に人影を見つけてデバスさんが言うとセリアーヌさんに小突かれたジョイさんが目を凝らす。


 「じゃあコルトバだね、装備そのまま使ってるって話だし」

 「もっと北の山脈の薄い所じゃなかった?」

 クリームさんが言うのにマリナさんが確認する。

 「戦争する人数じゃないな、偵察か?」

 「探してる様子じゃないよ大型テントも張ってる」

 「待ってる」

 リリカが一言いう。


 スキルがはっきりしてから意見を聞くようにみんなで決めた。

 「そうなるか」

 「坊ちゃん夜走れるかい?」

 「いけるよ」


 投光器を馬車に付けるのは無理でも先々の木の枝なんかに紐づければ最小限の明かりが出せる。

 「でも襲われるのも嫌だね」


 「それなんだけどさー」

 セリアーヌさんが上目遣いで詰め寄ってくる。

 クリームさんが近寄ってきたユウを抱き上げてじっと見る。

 女性が大きなオオカミの子を抱き上げる姿はなんかかわいいよな。

 「僕たちの扱いだけ違う気がするんだ」

 騎士団の面々の目線が痛い、そお言うことね、割といい装備してるから気にならなかった。


 皆の装備を貰って錬成し直し、ウィンドウを通して拡大鉄と縮小鉄に変えて加工。

 女性陣は殆どを拡大鉄でガラさんは二の腕と足周りに軽い鎧と重さは増すが縮小鉄で細身の剣を、デバスさんは攻撃を貰うのを前提にした装備で全身鎧をハチの巣状の縮小鉄で作り拡大鉄で成型する、盾は上半分に薄いスリットを五本入れて幾らか見えるように。


 ハンマーはカテルの兄貴で実績のある五倍縮小鉄で、小さくなって破壊力倍増初見で防げる生物は存在しないはず。


 テミスさんとマリナさんが笑いながら走り回っている。マリナさんは目をつぶってとんぼ返りを決めながら野菜を破裂させてるし、テミスさんは残像が出るような前後左右移動をこなす、よくちぎれないな。見られたごめんなさい。


 クリームさんもとても嬉しそうに空間を飛び回っている、中盾を持って緩く、早く、ふわりと、鋭く、まさに変幻自在、地を蹴る音もほとんどない。強度は低いが練度が高い風使いの見本のような動きだ。

 

 セリアーヌさんは正に真逆、轟音一発辺りを薙ぎ払って突っ走る。こちらの高笑いはうれしいよりも癖だな。

 一応盾に追加としてショックとダンパーを付けた、撓るだけだと威力が落ちるため粘りを追加した。

 反撃は難しいが避ける事は可能なので見やすいように上半分に放射状にスリットを入れた、手榴弾対策だ。


 ガラリアさんが二三度剣を振って止まっている。

 「見える、見えるぞ、俺のスキル鷹の目がはっきり見える」

 怖いから次。

 「叩いちゃだめだ、殴っちゃだめだ、地面でもだめだ」

 デバスさんが下を見て何かと戦ってる。

 慌てて振り返る、リリカが溜息をついて、リサがガンバポーズをしてくれる。


 やっぱりそう思う??

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る