第16話 あたしが拾ったのか拾われたのか
あたしの名前はバニラ成人して幾らか経つ、この間から留め人のローデルという男に厄介になっている、元の男と旅行に来たんだけど馬車で一緒になった女を口説くのにあたしの親を辱めた。
始まったこともあってイラついたのか顔面にけりを入れてしまいそのまま馬車を飛び降りて逃げてきた。
あいつは足が遅いから追いかけてくる事は無いだろう、さて馬車で半日来たまさに森のど真ん中、どの街でも着くのは夜中、駆け足はいいけどお金がない。
何も取らずに逃げてきた、ポケットに下着があるくらいだ、子供のころからこんな感じだけど何とかなってきたが。
「さすがにこれはやばいかな」
そう思ったときに何か聞こえた気がした。人の声かまさか行者の人が探しに来たのか。
耳を澄ませてみる、虫の声がやかましいが確かに聞こえる、反対側だ。
目を凝らすと獣道の奥に人影が見えた。
一瞬身構える、伝声塔も見えないこんな森の真ん中に人?、森の番人の噂を思い出した。半強制的に一人にされて森に住まわせられる。
当然病む人も出てくる私も割と落ち込みやすいのでよく友人に”同じこといつまでも考えちゃダメ”って言われる。
確か過去にえぐい事もあったはずだが最近は聞かないらしい、塔守の人と共生してたり領主に認められると農地を貰えることも有るという。
ただ男の場合女を求められる可能性は高いそうだ、けどそれって別に普通じゃないかと思って友達に言うと”ヤリ逃げされるのよ”と言う。
やっぱり普通だろ。
一応いつでも逃げれるように利き足に体重を掛けて待つ、正直助けは必要だ。
「やあこんにちは、俺はローデル留め人をやっている、突然人がはぐれたみたいになってたからどうしたかと思ってね、大丈夫?」
あたりだ、いや運の方、野営の準備のいい留め人は求めてさえくれれば結構世話を焼いてくれるときいた。
「すごく離れてたみたいですけど?」
「本職だからね」
「そうです?、あの、先に言っときますけど」
「何?」
「あたし今あれなんで二、三日はダメですよ?」
「う~ん、それは残念、いや今思っただけだからね、はは、友人に頼まれてね人の話を聞きたいんだそれが狙い。」
「お話?」
「うん、人づての話とか、飲み屋にも吟遊さんが来るんだろ、何でもいいんだ何かないかな?」
「また何で人と接触できない人に頼むんです?」
「同郷の人らしくてね話が合うんだ、それにここだとただで教えてくれる。」
なるほどカモが落ちてきたかといそいそ来たわけだ。
「それってあなたの益は有るんです?」
「なるほど・・お腹すかない?」
そうして出されたパンにソウセージと野菜とチーズ、知らないソースをかけた物を挟んで食べた、これがもう絶品!!、柔らかいパンに大きなソウセージくどくなりそうなそれを野菜と赤いソースとチーズが爽やかに流してくれるピリッと来る刺激は何だろう、一緒に出されたお茶も最高にあう、何よりも温かい、これが契約の報酬で益は別だそうだ。
お茶を入れていたポットを始め、見ると装備も凄い、コップも鉄っぽいのに熱くならず冷めない、コップとかポット、食器、食品を入れていたミニ水屋はストーブだそうだ、背負っている背負子は伸ばすと長椅子になった、ここで寝たら気持ちよさそうだ、前には大きな桶のような物をうつ伏せにしてテーブルになってるし屏風とか言う風よけもある、何よりこいつ臭くない自分の体臭が気になるぞ。
これが声伝えの話、これが自分の話、これが穀物の話、これが貴族の話、・・そして石鹸や風呂も定期的に貰えるらしい。
待てやこら、あたしの生活より良くないか?。え、トイレはない、そう。
あれちょっと待ってそのタンクの水、食器洗ってるけどこの辺に川とかないよ、え、補充されるから平気?毎日貰える、ホントに、どう見ても十リットルくらいしか入らないタンク、水が切れたことは無いそうだ。
腹ごしらえも済んだし歩きながら話をしよう結構さびれた飲み屋で聞いたちょっとくる話だ、明日も話してやろう、そう思って二時間ほど歩くと雨が降ってきた。
出鼻をくじかれたな、そう思うのとやったと思う気持ちがこみ上げる、聞くと、逆に聞き返されたので、食えるのなら一緒にいたいと言った。
「いいやごめん、今はできないし深い意味じゃないぞ」
「嫌われないだけいいさ、逃げ出す人も居てね結構傷つく」
そういって野営具を設営しだす後姿がかわいく見えてしまう、ダメだぞ、いやなにがだ。頬が熱っぽい、わかってしまう。どちらかと言うと凹凸の少ない顔は好みじゃないはずなんだが、こうパーツ一つ一つの線が繊細でついじっと見てしまう。
「丁度この前の戦利品にパラソルを貰ったんだ見てて」
そういって丸めた布状の物を広げて見せるどや顔がまたなんとも、この時説明されたいろいろな野営具も凄いものだったんだが今は君を見ていたい。
曖昧に頷くだけのあたしをどう思ったのか気まずそうにするのを見て天元突破した。
「ねえ、拭くものとかある?」
「あるよ、これ」
そういって出されたものは綿を細かく糸で結い留めた見たことのないものだった。
「これ?、あ、気持ちいい」
「俺が親に頼んで作ってもらってるタオルっていうんだ、よく売れるらしいよ」
「うん、石鹸も貸して」
「はいこれ、あ水もだね」
「いらないわよ」
あの狭い空間で自分が匂うなんて死ねる、そう思って服を脱ぎだしたあたしを固まって凝視している。
いけない気を付けるんだあたし、母様に言われた、裸マウント、セックスマウント、料理マウントは女を下げる。
見せつけてはいけない、演技もダメ、自然にするのも違う、彼に見られる自分だけを意識する。
程よく雨が流れ出したので石鹸を使う、わきの処理はいつしたっけ、右わきに小さな黒子があったはず、取り留めのないことを考えていると彼が向こうを向いてストーブに火を入れていた。
少し気落ちする自分がいる同時にこちらを向けてやりたいと思う。
「さっき言ってたお風呂ってどうするの?」
「昨日貰ったから次は明後日かな」
まだこちらを見ない。
「そう、じゃあ来なさいよ、洗ってあげる」
「い、いや、そんなことしたら、ほら、今でも、な?」
あたしは知っているこの拒否はヒッパレの合図。
「去年や一昨年に始まったわけじゃないわよ?あたしはあなたとくっつきたいの」
最後が閉まらないうまい言葉が出てこなかった、けど彼が微笑んだ!、お宝!!。
それから二人で全身洗い合いキスをして慰め合って狭いベットで私が上になって寝た。
びっくりするほどよく寝た彼に起こされて気が付いた少し目を伏せて体をひねると抱きしめられた、留め人は女二人を振り回すと聞いてたけど、上で寝れるなんて知らなかった。
長椅子に二人で座って顔を拭きっこした、子供のころ以来。
お互いをわら半紙という紙を水につけて拭く、使い捨てのハンカチらしい。
唇を少し広げるとぷにぷにと触ってくれる、なんか嬉しい。
最後は手拭いで水をつかって拭き上げる、あっ、ほんとに水が戻ってる。
良い匂いがするので後ろを見るとシチュウが鍋にかけられていてサンドイッチもある昨日あれから都合四回休憩したり食事したり、くっついたりしながら思ってた事を聞いてみる。
「その食事ってどうなってるの?」
「水と一緒に補給される」
あたしは思わず胸元を隠して周りを見る。
「大丈夫何でも印をつけたもの以外見えない方法が有るんだって」
そお、なに、どういうこと?
「それに彼に見られても気にならないよたぶん」
そっちの気もあるの?ちょっとドキドキするけどまあ痴態じゃなきゃいいわ。
「ねえ明後日はどうする」
「一緒にいてくれるの?」
「今でも燃えたからね」
「ありがとう」
「こちらこそ」
彼といると虫が来ない動物の気配もない、聞けばそれくらいは自由にできると、つまり全部自分の家、夢っ、私の夢!!
★
そして昨日やりました、燃えました木の幹を抱かされて、虐められたりしたけど、最後はあたしが襲ったし、いや五回目の刺激がね、今は後悔してるけど、ひりひりする。
いまあたしは例の桶にお湯がたまっていくのを見ながら食事をしている。
バーベキュウとやらを食べながら彼があたしがした話をしてるのを見ている、天に向かって??
話が終わってしばらくすると大きなバッグが天から落ちてきた、怖!!、なに、なぜどうして?え、呼ばれた。
大きなバッグ、りょこうかばんというらしい縦百八十位横六十幅七十で下に大きな車輪が二つ付いている。ハンドルを肩に掛けて半分引きずるように車輪を転がして移動、蓋を開けるとベッドで下の空間に荷物を入れれる、しかもなんとこれ水に浮くんだそうだ、気泡鉄拡大バージョンって彼がかわいい顔で言う、もう二十歳超えてるだろう良いけどいやそのままで、うん、そのままで。
でも知らなかったなー、留め人って神様とお友達なんだ。
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