第13話 衛兵と換金
王都に着いた俺たちは、まず衛兵の詰め所に向かった。
悪名高い盗賊には賞金がかかっているかもしれないからだ。
もちろん、何の証拠もなしに「倒した」と言うだけでは金はくれない。何かしら証拠がいる。
それは、その盗賊のトレードマークだったり、愛用する武器だったり、もし何もない場合は生首をそのまま持っていく。
というわけで、俺たちは血抜きした生首をゴロゴロと腰に下げて王都を歩いていた。
生首は髪の毛をベルトと結んである。
正直、免囚の目が痛い。それに加えて俺は、自分で言うのもなんだが有名だ。俺がハヤト・メロウスだと分かると色々と面倒なことになるので、顔を隠しているのも怪しまれている原因の一つだろう。
まあ、そもそも冒険者や傭兵なんていう武器を持つ職業は疎まれがちだ。人を殺して飯を食っているわけだし、町中でも武器を携帯している荒くれ者を好きになる方がおかしい。
とはいえ、そういった武器を持つ職業の中で人気者物もある。例えば勇者や騎士、衛兵などだ。まあ、所謂正義側の仕事や、役人として武器を持つ仕事だな。
「さっき盗賊を何人か狩ったから、賞金を貰いに来た」
「分かった。身分証を見せてもらおう」
サマー王国に住んでいる者は、皆何かしらの身分証を持っている。移住したら発行してもらえるし、無くしてもお金を払えば再発行してもらえる。就いた職によってはそこでの身分証も貰える。これを持っていないのはスラムの人間か、指名手配中の犯罪者ぐらいだ。
俺は別けあって二つの身分証を持っている。勿論、勇者ハヤト・メロウスの身分証とBランク冒険者ユウの身分証だ。
ここではもちろん、Bランク冒険者ユウの者を出す。
「これでいいか?」
「……ああ、特に異常はないな」
身分証を流し目で見た後、生首と手配書を一つ一つ照らし合わせていく。
やがて、終わったのか金の入っているのであろう麻袋を持ってやってくる。あの膨らみ方を見るに、中々大量だな。
「五人の盗賊の内、二人に賞金がかかっていた。持っていけ」
「おう、ありがとよ」
許可をもらって麻袋を受け取り、中身を確認する。中身はほとんどが金貨だ。
「それにしても」
俺がウキウキで金貨の入った麻袋をベルトに結ぶと、衛兵は不思議そうに尋ねてきた。
「あの五人の盗賊は中々の手練れだったはずだ。賞金首の二人もかなり有名なのに、よくBランクの兄ちゃんたちだけで殺せたな」
俺はピタリと作業を止める。ここで下手を打てば俺に後ろ暗いことがあるのがバレる。別に勇者だとバレても捕まったりはしないだろうが、面倒なことになるのは違いない。
「寝込みを襲ったんだよ」
「そうか、まあ、上手くやったんだな」
衛兵は特に不審がらずに笑顔で俺たちを見送った。
「ほらよ」
俺は金貨の入った麻袋から分けておいた、半分の金額が入った別の袋をアリアに手渡す。
「ええと……これは?」
「お前の報酬だ」
「受け取れません。ただでさえ師事しているのに。それに、私が殺した盗賊には賞金がかかっていませんでした」
アリアが遠慮するが、俺は手に麻袋を押し付ける。
「いいか、お前も命を懸けて一緒に戦ったんだ。貰っておけ。金の問題はパーティー内でも大事だ。これが悪いと、パーティーが崩壊する」
アリアは渋々といった顔で麻袋を受け取ると、ベルトに結んだ。
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