第二話

 始めに感じたのは夢のような心地よさだった。とても大きい高級そうなベッドにただ一人、横になっている。ベッドの端に向かってごろごろと回転すると、ベッドから落ちた。ドシンと音が鳴り、尻もちをついてしまった。ベッドは中々に高かったらしく、すごく痛い。……痛い??

 よく考えれば、わたしはこんなに大きなベッドに寝るような人間でもなければ、こんなベッドを置けるスペースのある部屋の持ち主でもない。

 だからこそ夢だと思いベッドを転がったのだが、ならば痛覚など感じる訳がない。

 寝ぼけていた頭が急に冴えてきた。

 今、わたしに残された可能性は三つである。

 一、コンビニで倒れたわたしは救急車に運ばれ、病院に運ばれたがそれを理解できていない可能性。つまり、わたしの脳や目に異常がある。

 二、わたしは胡蝶之夢を体験し、今、現実世界に戻ってきた。

 三、あの男の子に異世界へ飛ばされた。

 一番現実的なのは一なのだろうが、わたしは三の可能性を期待していた。

 え、だって異世界だよ!? ファンタジーだよ!? ヤバくない!?

 夢にまで期待した展開だ。とても気分が良くなってきた。はあ、もしそうだったらどうしよう!? いや、そうに違いない。あの主人公みたいに趣味に翻弄して一目置かれる存在になっちゃう!? それともあの乙女ゲームみたいに男子全員から好かれちゃったりして~!!

 と、そこまで考えて気がついた。わたしは誰なのだと。

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