第一章 第3話 忘れ物

 はあ。今日も学校か。金曜日だから今日行けば休みだけど金曜日が一番大変な気がする。特にも長期休み明けって大変なんだよな。何かやることがあるわけではないけど...たぶん気持ち的な問題なのだろう。それにうちの学校は5月のGW明けに体育祭がある。その準備が大変なんだよな。まあ、俺は特に仕事もないから楽なんだけど...とにかく今日一日頑張るか。週末には今読んでいる小説の最新刊が発売されるし!よし、今日も頑張れそうだな。

 教室に入り、席に着いた。窓の外を眺めると桜がきれいに咲いていた。まさに春という感じだ。ところどころ散っているところもあり、春の澄んだ青空と合わさってとても風情がある。

 HRが終わり一限目の授業に入る、一限目は英語だ。みんな英語を嫌がるけど自分はそうでもない。別に秀才アピールをしているわけではなく、単純になるほど、と思う内容があったりするので嫌いではない。作った文を発表させられるのは嫌いだけど...教科書などを机の上に置き、授業の準備を終えて窓の外を眺めていた。ほんと、窓の外を眺めるの好きだよな。はたから見たらいつも外を眺めているただの痛いやつじゃないか。でもなんか外を眺めていると落ち着くんだよな。たぶん。

「おーい!シュン!教科書貸してくれない?」

いきなり声をかけられたのでびっくりした。話しかけてきたのは優大ゆうだい。去年まで同じクラスだった人だ。明るい性格でクラスが変わった今でも休み時間は話をしたりする仲だ。

「いきなりびっくりするじゃん。なんの教科書?」

「ごめん。国語の教科書貸して。」

「いいけど...優、いつも忘れ物してない?」

「いつもじゃねぇーし!まっ、ありがとう!授業終わったら返しにまた来る!」

まったく。でもそんな彼でもいい友達だ。にしても忘れ物が多いのは変わってないな...まあ、そんなすぐ変わることでもないか...

 授業が始まった。教科書10Pを開いて、と先生が言う。先生が一文を読んだらみんなが続けて同じ文を読んでいく、ということをしていたらふと隣から声が聞こえた。

「ねえ、綾瀬。教科書見せてよ。」

西園寺さんが話しかけてきた。今日は教科書を忘れてくるのが流行っているらしい。いやそんなことはないか。

「いいよ。」

と言うと西園寺さんは机を僕の方に寄せてきた。おお。大胆。

「近づかないと見えないでしょ。」

顔にでてしまっていたようだ。にしても西園寺さんいいにおいするな...いや、変態かよ!と自分にツッコミを入れた。そんなことより、西園寺さんでも忘れ物するんだな。案外いつも忘れてきていたりして...それはないか。優大じゃあるまいし。転校してきたばっかりで疲れているんだろうな。休み時間はいつもみんなに囲まれているしな。その後、特に何か起こるわけでもなく、普通に授業は終了した。会話はというと分からないところを少し教えてあげたくらいだ。

「綾瀬。ありがとう。助かった。」

「いいよ別に。それより、僕がもし忘れてきたときは見せてね。教科書。」

「ええ。いいよ。」

まあ、俺は忘れ物なんてあんまりしないから大丈夫だと思うけど。

「おーい!シュン!教科書ありがとな!」

いきなりはびっくりするな優...今日で早くも2回目だよ...

「うん。今度は忘れるなよ。」

「おお!気を付けるよ!てか二人は机くっつけてなにしてんだよ。あっ!もしかして、付き合ってるとか!」

一瞬教室中の視線がこちらに向いたのは気のせいか?気のせいであってほしい。

「おい!やめろよ。西園寺さん困ってるだろ。それに付き合ってねーよ。」

「おお、そっか。悪い悪い。」

まったく、悪いやつじゃないんだけどな...

「西園寺さんごめんね。悪いやつじゃないんだ。」

「別に大丈夫。」

これには西園寺さんもにっこり。なんてことはなく苦笑いだ。まったく。西園寺さんと俺が付き合うなんてあるはずないのにな。あいつは何を考えているんだか。

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隣のツンデレさん 瑞原ヒロキ @Mizuhara55

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