遠い世界へ

勝利だギューちゃん

第1話

「みんな、元気?」

舞台の上で、ひとりの女の子が観客に、言葉を投げかけている。

それに対して、ファンと言われる観客が声援を贈る。


舞台の上のアイドル。

別世界の存在。


でも、最近までは僕のすぐ近くにいた。

中学時代のクラスメイトの女の子だった。


「私ね、アイドルになるのが夢なの」

「そうなんだ。応援しているね」

「ありがとう。いつか、舞台の上で歌い踊る姿を、観に来てね」

「うん。楽しみにしているよ」


そんな会話をしていたのを、思い出す。

ほんの数年前の話だ。


その『いつか』は、予想以上に早く来た。

今は、高校生。

彼女は芸能科のある高校に進んだ。


わずか数年・・・

彼女は、相当に努力したのだろう。


「よかったら来てね」

「これは?」

「ライブのチケット」

「僕に?」

「うん。応援してくれたの、君だけだから」


今やプラチナチケットとなってしまった。

今、僕がこの場にいるのは、奇跡かもしれない。


彼女は、大勢のファンの声援を受け、光り輝いている。


「もう、僕に出来ることはないな」


僕は席を立ち、会場の外へ出た。

外からでも、熱気が伝わってくる。


彼女はこれから、アイドルだけでなく、女優の道も極めていく事になる。

これからは、陰ながら見守ろう。


最近まで隣にいた彼女が、今では遠い存在になってしまった。

でも、それでいい・・・


「元気で」

心の中でそう、つぶやいた・・・

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遠い世界へ 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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