第8話 勇者誕生
「ホント、色々ごめんなさいねぇ」
女神セッラによると最近、火の神オプタニオンが激辛カレー作りにハマり、作りまくっていたら激辛大好きなヒーホットドラゴンが襲いかかってきた。
ドラゴンのカプサイシンブレスに操られたオプタニオンが、激辛カレーを食べることを拒否したセッラをここに閉じ込めたのだという。
「あんなの食べたら、唇とお尻が腫れ上がるわ」
「あ、はい……」
トイレの瓦礫に、女神は優雅に腰掛ける。
「さらにその激辛カレーでお腹を壊す人が沢山でちゃったんだけど、私がここに閉じ込められちゃったばかりに、街のトイレが機能しなくてね」
「それで、街がこんなに汚く?」
女神は優雅に頷く。
「オプタニオンは今もドラゴンに操られて、激辛カレー作りをしていることでしょう。この惨状を収めるには、ヒーホットドラゴンを鎮めるしかありません」
なんかリリーのお母さん、突然女神ムーブしてきた。
彼女は手近のトイレブラシを手に取ると、ぐるりと円を描いて、リリーと同じ魔法のシャボン玉を産み出した。
「みんなの居場所は……ここ、ダイニングね」
シャボン玉にキッチンで激辛カレーを作り続ける父親と、魔物に捕らえられて無理やり食べさせられそうになっているリリーたちの姿が映し出される。
サン=ポールさんは白目を剥いて、口からカレーを噴きこぼしていた。もう手遅れだ。
マサラさんは「クッ……殺せ!」と叫んでいるし、レディオさんは「私の唇は極上の潤いなのよぉ」と叫び、リリーは必死に「パパ! 目を覚まして! パパ!」と叫んでいる。
地獄絵図。阿鼻叫喚。
俺は思わず両手で顔を覆った。
みんなを助けたい! でも――!
みんなを助けるために、ここを出て新しいUNKバズーカを調達する時間は無い。
「リリーのおば……お母さん。何か方法はないんですか? 俺、みんなを助けたい!」
「方法はあるわ。『カミノトイレ』の封印を解けば、全てが綺麗に浄化される。でも」
女神は悲しげに目を伏せた。
「『カミノトイレ』に行き、封印を解けるのはウンコスキルを持つ者の中でも、トイレにウンコを詰まらせた事がある者だけなの。ユーダイくん、あなたはトイレを詰まらせたこと、ある?」
俺は、トイレの女神の前で力強くうなずいた。
「この世界に来る前、学校のトイレを詰まらせて、放置してきました!」
「そう……では『ウンコの勇者ユーダイ』よ。『カミノトイレ』へ導きましょう」
女神セッラは立ち上がると、トイレブラシとラバーカップを胸の前に交差させてから、大きく天に掲げた。すると、金色の光が一面に広がった。
やがて光が収まると、瓦礫の中にポツンと、トイレのドアが現れた。
「これが……『カミノトイレ』!」
「ユーダイよ、これを……この金のハンドルと、神器ラバーカップをお持ちなさい」
「はい! 女神様!」
俺はそれらを受け取ると、ドアを引いた。
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