第5話 俺はいま、異世界で冒険してる!!

 森を抜けると、目的地のティローはすぐそこだった。そこの治安が悪そうな裏通りを、リリーは臆することなく入っていく。


 異世界の女子ってみんなこんな感じなの? 俺のクラスの女子もまぁ強いけど、それ以上にリリーは強いぞ? てか、俺負けてね?


 目的の店につくと、そこにはマサラさんが使うような剣や、ゲームでみたことがあるような武器がいっぱい並んでいた。俺は自然とテンションがあがる。


 ウンコスキル専用武器ってどんなんだろう? 剣かな? 斧かな? 剣がいいな。だってかっこいいじゃん!


 俺が武器を眺めている間に、リリーは鍛冶屋の親方となにやら話しをしていたらしい。

「リリーちゃんと親方が呼んでるわよ」とレディオさんに呼ばれて、俺は気難しそうな親方の前に立った。


「話しはリリーさ……んから聞いた。しかし俺は、お前が本当にウンコスキル持ちかどうか、この目で確認したい」

「どうしたらいいんですか?」

「今から言う、3つの魔物のウンコを拾ってこい」


 親方は俺に「ダンシングバード、臆病ウルフ、狂乱ハネウサギ」のウンコを拾って帰ってくるように言った。ただしリリーと二人でだ。


 俺とリリーは二日がかりでこの3種のウンコを集めて親方に渡した。すると、親方は怖そうな顔をグニャリと緩めて「よくやった!! おまえは本物のウンコスキル持ちだ!」と言って、父さんより大きなごつい手で、俺の頭をガシガシ撫ぜた。


 親方は「よいしょ」とカウンター下から丸い筒状のものを取り出した。


 俺、これ知ってる。ゲームでみた。バズーカっていうやつだ。


 親方は道具を使って3種ウンコをほじり、中から小さな石のような結晶を取り出してバズーカに組み込んで、えい! と魔法をかけた。


 するとバズーカがブゥーンと唸って、キラリとガンメタリックに輝いた。


「完成だ。ウンコスキル専用武器。UNKバズーカだ」


 これはその名の通り、拾ったウンコを弾として撃ち出すバズーカ砲。


 それから7ディエの間、俺は親方からUNKバズーカの使い方や注意点、その他諸々を文字通り叩き込まれ、ティローを後にした。


 狂乱ウサギや爆裂ディアーのようなコロコロ系は、リリーのシャボン玉でひとまとめにして弾にすると、広範囲の攻撃が可能だった。


 もちろん、ゲキヤバヒグマや盗賊クマーみたいな強力な魔物はそれ1個でも充分な攻撃力だ。


 俺たちの旅は一気に楽で安全なものになった。


 マサラさんは、なにかあるとすぐ「クッ 、殺せ」って言ってちょっと面倒くさいけど、めちゃくちゃ強い。剣士っていうけど、その戦い方は剣で切るっていうより、筋力でぶん殴るって感じだ。


 レディオさんはそんなマサラさんを「変なビョーキみたいなもんだけど、腕はたしかよぉ」と言いながら、上手くけしかけて使っている。


 ときどきリリーとクラスの女子がするような会話をしてキャッキャしているかと思えば、人間の盗賊を相手に、ものすごく野太いドスの効いた声で凄んで、メチャクチャ怖い。


「私、こう見えて次期大賢者よぉ〜」と言いながら、毛虫の魔物にギャーギャー悲鳴を上げるから、本当に強いのかどうなのかわからない。


 ときどき弾になるウンコ拾いが必要だけど、強力な魔物に出会っても、俺たちのパーティーは完璧だった。


 道中で盗賊グマーに荒らされていた街を助けたり、商隊のキャラバンを守ったり、ダンジョンの探検もした。


 勿論、楽しいだけじゃない。大変だったり怖い事もある。18 ディエの予定だった俺たちの旅は、予想よりずいぶん時間がかかっているけど、それよりも……


 すげぇ! 俺、いま異世界で冒険してる!!

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