俺の名前はユーダイ! UNKの力で世界を救え!
みつなはるね
第1話 ドアを開けると、そこは異世界でした。
俺は学校のトイレにいたのに、どうしてこんなところに居るんだろう。
急な腹痛でトイレに飛びこみ、事後に水は出るけどウンコが居座っている事に絶望した。
ヤバい! 溢れそうだ。もう仕方がない。
俺はソレを隠すようにトイレットペーパーを乗せて蓋を閉めると、周りに人の気配がないのを確認して、そっとドアを開けたのだけど……
目の前に広がる景色は学校のトイレではなく、一面が緑の大草原だった。
これはどういう事? 俺がいたのは学校のトイレだぞ?
俺は怖さと好奇心でそっと足を踏み出す。靴底から足裏に伝わるのは、硬いタイルではなく柔らかな草と土。
もう少し進んで、あたりをグルリと見回すと……今出てきたトイレが霞んで消えた。
「うわぁぁ!!」
思わず叫びながら後退ったとき、ムニュっと柔らかい何かを踏んだ。
踏んだと同時になんか、臭った。
恐る恐る足元を見ると……
「ウンコ踏んじゃったぁぁぁ」
俺は慌てて靴底を草に擦り付ける。
「俺の新品の神足がぁぁ」
飼い主ウンコ踏めと、呪いの言葉を呟きながら、踏みつけたウンコを睨みつける。
その時、閃きのように頭の中に生き物の名前が浮かび上がった。
「殺戮マダラウマ……の、ウンコ?」
――なんだよ。殺戮マダラウマって。
肉食の凶暴なウマ――
――肉食のウマ? わけわかんね。
頭を振って靴底のウンコを取る事に集中していると、妙な気配を感じて顔を上げ、もう一度あたりを見回した。
ウンコをこそぎ落とす事に熱中していた俺は、どんどん元いた場所から離れていた。どこに消えたトイレがあったのかもわからない。それどころか、ちょっと先あたりの丘の上に、奇妙な小さな馬のような生き物が一頭、また一頭と姿を現した。
ブフォ、ブフォっと荒い鼻息が聞こえる。
「……あれが、殺戮マダラウマ?」
やけに殺気だった生き物の数が、少しずつ増えていく。
ちょっとヤバいかも。
その時だった。
ピュッと口笛の音がして、次に小石が飛んで俺の足に当たった。
斜め後ろの岩陰から、赤い髪の女の子が顔を覗かせ、口元に人差し指を当てて小さく手招きをする。
俺は徐々に増える丘の上のマダラウマと彼女を交互に見ると、靴底のウンコを草で拭いながら、そっと彼女の方へ後ずさった。
「そっと、静かに」
弓を携えた彼女は、緩く編んだ三編みを背中に垂らした可愛い女の子。クラスの女子と変わらない雰囲気だけど、違うのは弓を構えて、めっちゃいい匂いがすること。なのに俺の足元ウンコ臭い。
「アイツらの狙いは私。ほら、これ」
そう言って彼女は背中のカゴを顎でしゃくってみせた。中を覗くとシャボン玉のような球に包まれた花と、バスケットボールぐらいあるまだら模様の茶色い大きな卵。
「高く売れるのよねぇ。巣から持ち出したのはいいんだけど、最後にドジ踏んじゃった」
そう笑ってから、ちょっと形の良い眉を潜めて俺の足元を見た。俺は気まずくなるが、彼女はお構いなしだった。
「あんた、マダラのウンコを踏んだのね。ちょうどいい目くらましになる。岩伝いに逃げるよ」
彼女は「そっと、静かに」と注意して後退しはじめた。ここで置いていかれるわけにはいかない。
俺は彼女の後を追いかけた。
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