猫と猫と人と猫

 子猫たちは日々成長をしている。


 前は片手で楽に持ち上げれたけど、今では両手じゃないと持てないくらい。


 大人猫ともすっかり仲良しでくっついて寝ている。


「紬さん。この子たちは兄弟とかではなく無関係なのに、こんなにも仲良くなるのですか?」


「そうね。生まれも育ちもまったく違う。ましてや日本から来た子もこの世界の子ですら仲良くなるから不思議よね」


「みんな生まれはバラバラなのですか?」


「ええ。同じ場所から引き取った子たちもいるけど同じ血族というわけでもないの。その子たちは捨て猫が多い場所でお世話をしている人が知らない間に増えてしまっている状況だったの」


「ひどいですね」


「その方はあまりお金のない方だったから避妊手術も追いつかなくて増えてしまって。なんとかお金を工面して手術が終わったらまた違う猫が捨てられていての繰り返し」


「えー。それだと終わらないじゃないですか」


「本人は増やしたくなかったみたいだけど、どうすることもできず、結局、手術済みの猫を2匹だけ残してあとは私が20匹以上引き取ったわ」


「そんなにもですか!?」


「どうすることもできなかったからね。本当はその2匹だけをお世話をしていく予定だったんだけど。ただあとで聞いた話ではまた増えてしまっていたみたいなの。日本の時間がどうなっているかわからないけど今どうなっているのか心配ね。こちらと同じように時間が動いていたら……」


「誰かが手助けをしていないと大変なことになっていそうですね」


「それとね……あと、その方と言うわけではないのだけど……。ちょっと難しい話をするわね」


「はい」


「ミホちゃんも捨てられない物ってあると思うのだけど、それが度をすぎると"ためこみ症"と言う精神的な病気になるの。これは部屋や家が埋め尽くされるほど、物を貯め込んでしまい日常生活に支障がでたり、社会生活にも影響を与えることがあるの」


「ためこみ症ですか。初めて聞きました。確かに捨てられない物はありますね」


「ためこみ症の人は、もしかしたら将来必要になるかもしれない。と思ってしまったり、捨てるときに罪悪感を感じたりするのね。また、捨てることができずに貯め込むことで、一時的に安心感を得られると感じてそれが習慣化してしまうこともあるの」


「将来使うことがあるかもしれない。というのはよくありましたね」


「それで、これは物に対してだけではなく動物が対象になることもあるの。これはアニマルホーダーと言われるの」


「アニマルホーダーですか」


「ニュースとかで多頭飼い崩壊とか見たことないかしら?」


「ありますね。ケージに入れっぱなしとか排泄物がそのままで衛生状態がよくなく虐待として問題になるやつですね」


「そう。アニマルホーダーも当初は保護してお世話をしっかりしていたと思うけど、一度はじめるとどんどんと保護をしていってしまう。自身でコントロールしないと過剰保護になっていることが多いの。お世話がちゃんとできていればいいけどね」


「それができなくなると多頭飼い崩壊になるんですね」


「悲惨な現場になると言葉にできないほどのことも起きているわ」


「テレビで見たことがあります……」


「そうならないように気をつけないといけないの。私たち保護活動している人もよく陥るからミホちゃんも気をつけてね」


「わかりました」


「うん。可哀想な猫たちをみると全部助けたいって気持ちになってしまうけど、その現場から助けても自分が可哀想な猫を生み出してしまうこともあるからね」


「死に場所を変えただけみたいなものですかね」


「言い方はキツイけれどその通りよ」


「話は逸れたけど、そういう所からきた子たちもいるわ。20匹の他は多くても6匹かな。1匹だけで来た子もいるわ」


「グループみたいになったりはしないのですか?」


「ある程度仲のいい子で集まりやすくはあるけど人みたいに露骨に作っていることはないわね」


 そういえば店内に猫の一覧表があったのを思い出す。


「店内の一覧表に誰と兄弟とかは書いてますが同じ所から来たとは書いていないですね」


「そういえばそうね。書いてあってもいいかもね。ありがとうね。参考にするわね」


「すみません。偉そうなこと言ってしまって」


「ううん。全然そんなことないわ。大丈夫よ。色々アイデア出してもらえると助かるわ。また何か思い浮かんだらよろしくね」


「わ、わかりました!」


 若干のプレッシャーを感じつつもお仕事を任された気分で少し嬉しい。


 一覧表を改めてこう見ると本当にバラバラな所から保護されてきている。自宅にいる子たちも出身はバラバラ。


 それでもこれだけ仲良くいられるなんて不思議。


「仲がいいのは不思議よね」


 まさかのタイミングで考えが被っていた。


「ある程度成長するとオスは独り立ちするの。新しい家族を求めてね。まぁ単純に追い出させるだけなのだけどね。でもメスは残ることが多いの。残って子供を産んで子育てをするのだけどそのときに母猫だけではなくて祖母猫も子猫のお世話をすることがあるの」


「孫のお世話をするのですね」


「うんうん。だからメス同士は仲のいいことが多いの。ちなみに……猫って交尾排卵動物と言って交尾をすると排卵をするからほぼ妊娠するの。しかもタイミングが同じくらいだと違う猫の子を妊娠できるのね。それぞれの子供を妊娠してしまうから模様や色がバラバラな子が産まれるの」


 猫怖っ

 

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