怪我
今日は紬さんとデンさんがお出かけしているのでナナさんとお店の接客をしている。
それほど忙しくはないので少し猫エリアでまったりしている。
じろさんが窓からお店の前を行き交う人々を目で追いかけている。
たまに歩いている人にクラッキングをするので慌てて止める。
たしかにハルさんのように鳥のような獣人族もいるから仕方ないけど……。
本当はこのまま猫さんと寝たいけどお仕事中だし人に見られてしまうから眺めているだけにする。
猫の顔はよくみると面白い。
ヒゲは口髭が一番目立つ。長く太くそして多い。
次に眉毛。少し細くて長い
頬毛もある。ただこれは一本がほとんど。ない子もいる。
手の平の付け根あたりにもある。
とても重要な器官で敏感。高性能なセンサー。
ほとんどの猫の髭は白い。黒猫は真っ黒。白と黒の子もいる。茶色は……たぶんいない。
まったりしていると。
『ウゥゥゥワャーー!!!』
『フーーーシャーー!!!』
どこからか喧嘩の声が聞こえる。
たぶん自宅の方から。
様子を見に行くと家の子と外にいる野良の子がガラス越しに喧嘩をしていた。
止めなきゃととっさに体が動いてしまう。
手を出しすぎるとよくないと言われていたのに。
間に入った瞬間。
"ガブリッ"
やられてしまった。
足のスネをガッツリ。
たぶん、気が立っていたので急に横に出てきた足にびっくりして噛み付いたんだと思う。
それにしてもかなり強く噛まれた。
冷静だけどかなり痛い。
一先ず噛み付いている子をなだめる。
すぐに気づいて離してくれた。
血……は出ていない。けどかなり歯形がついている。特に犬歯の跡がひどい。
そのままお店へ戻ることにした。
それにしても痛い。
骨が痛いような感覚。スネなので本当に骨までいっているのかもしれない。
噛まれたショックや痛みではなく、中途半端に喧嘩の仲裁に入ってしまった自分が情けなくて、猫さんを驚かせてしまい噛むという行動をさせてしまったことに申し訳なくで涙が出てくる。
だんだんと痛みも増してきてさらに涙が出る。
「ミホ!?どうしたの!?」
ミキがタイミングよく現れた。
「あ、あれ?学校終わったの?」
「ええ。それよりどうしたのよ!何があったの!?」
喧嘩をしている間に急に入り、猫さんを驚かしてしまい噛まれた。そうさせてしまった自分が情けなくて泣いてしまったことを素直に話した。
「なるほどね……で、足はどうなの?」
「足……痛い」
「ちょっと見せてもらうわね」
ミキが裾をめくりあげる。
「これ、大丈夫なの?相当痕がついているんだけど……」
「大分痛くなってきた」
「でしょうね。私は治癒魔法が使えないから……」
「うぐぅ……。骨までいってるかもぉ」
「治療院やってるかしら?歩ける?」
「たぶん歩けるけど……そろそろ駄目かもしれない」
お店へ入りみんなに状況を説明した。
ハチさんが治療院まで乗せていってくれることになった。
ミキは私を後ろから抱きかかえる格好で……。ミキがイケメンに見えてきた……。
治療院で診察をしてもらうと骨までは達していなかった。
ただかなり深くまで噛まれているため菌が入っている可能性があるのでその処置をしてもらうことになった。
治癒の魔法をかけてもらうのだけど、はじめになにかのベタベタした液体を塗る。
その次に布を当てて包帯で巻く。そのあとに手をかざしてなにか念を送っているみたい。
痛みは徐々になくなり、普通に歩ける程度になった。
治癒魔法はすごい。
しばらくは包帯をつけたまま生活をする。一週間なにもなければ完治らしい。
治療院を出て3人で歩いて帰る。
「ふたりともありがとうございました」
「ナオッテよかったナ」
「本当に。心配したんだから。よかったわ。これからは無理しちゃだめだからね!」
「はい……反省してます。そういえば治癒魔法ってあんな感じなんですね」
「あんな感じ?」
「うん。手をかざしただけで一瞬で治るのかと思ってました」
「あなた、魔法をなんだと思っているのよ」
「普通は詠唱をして発動するけど、上達をすると無詠唱でできるもの?」
「???何を言っているかよくわからないわね」
「ん?」
「帰ったら教えてあげるわ」
「ホネがおれそうダナ。じっさいに、きょうはおれそうにナッタガ」
「ハチさん……」
お店に入ると紬さんたちが戻っていた。
紬さんに状況を説明をするととても心配をしてくれた。
猫に噛まれたり引っかかれたりした傷から菌が入り感染をしてしまうことがある。
とりあえず、この世界には治癒魔法があるため、感染を抑えることができるが気をつけてほしい。もし仲裁をする場合は距離を保つことと逃げられる準備をしておくことが怪我の予防になると教えてくれた。
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