王様と王女様に出会った。
応接室で色々見て回っていると国王様がやってきた。
「デンさん。紬ちゃんよくきてくれたね。その子が日本から来たという子だね?
はじめまして。ボクはこのトークオ王国の国王、内藤信悟(ないとうしんご)と言うんだ。元は東京からだよ。よろしくね」
「はじめまして。私も東京……違うな岐阜から来ました。三谷ミホと言います。岐阜から東京へ出たのですがすぐこっちの国へ来てしまったんです」
「そうなんだ。ちなみに経緯を聞いてもいいかな?」
「はい。うちは両親がいなくておばのうちに居候してました。高校が東京の学校になったのですが学校とアパートともに手続きができてなくて途方にくれていたとき、渋谷の猫カフェへ入ったらこちらの世界の紬さんの猫カフェに入っていました」
「また、キミも不思議な感じでこっちに来たんだね」
「みなさんはどうやってきたのですか?」
「ボクはトラックに轢かれそうな猫を助けようとして、気づいたらこの世界にいたんだよ。紬ちゃんは猫カフェのお掃除中だっけ?そのタイミングでお店の猫ちゃんと一緒に来たんだよ。そうそう。ボクはここに来てもう三十年越えてて、紬ちゃんは二年くらいなんだよ。もう一個衝撃の事実!二人共令和四年の4月からきてるんだよ」
「ポカーン」
本当にこの言葉が合っている。情報量の多さがひどいです。国王様は令和四年に猫を助けてこの国に来てもう三十年住んでいる。紬さんは令和四年に猫カフェごと来て二年住んでいる。同じタイミングで向こうを出たのにこちらではかなりの差がある……。それに……。
「あの……私も令和四年の四月から来たのですが……」
三人共に顔を見合わす。国王が口を開く
「三人とも令和四年か……なにかあるのかな……他にも転移者がいるかもしれないね。過去のことをもう少し調べてみるよ。今、他にもいるかも知らないし、この先に来るかもしれないね。ちなみにまだ戻る方法は見つかってないんだ。まぁボクも紬ちゃんも戻る気はないんだけどね」
「あ、それは私も戻らなくていいです。戻ったところで行く当てはないのでここのほうがいいです」
「ミホちゃん……。苦労してたんだね。いいよ。キミはうちの子と同じくらいだから面倒を見てあげるよ。いつでも頼っていいからね。それで普段はそのまま紬ちゃんのところでお世話になりなさい。紬ちゃん。よろしく頼んだよ」
と、言ったところで、扉が勢いよく開いた。
「紬お姉様がいらしてるんですって!? なんでお父様は声をかけてくださらなかったのですか!?」
私と同じ年くらいの子がすごい勢いで入ってきた。この子が王女様なんだろう。
「紬お姉様。ご機嫌よう。本日はどうなされたのですか? このあとお時間ありましたらぜひ私のお部屋へいらしてくたさい」
「すまんナ。おうじょヨ。きょうハシゴトなんだヨ」
「デン様もご機嫌麗しゅう。あら? そちらの方は?」
「ミホちゃん申し訳ない。紬ちゃんのことになると周りが見えなくなっちゃうみたいでさ。
ミキ。その子は私や紬と同じ日本から来た三谷ミホちゃんと言うんだ」
「はじめまして。ミキ様。東京から来ました三谷ミホと言います」
「ミホさんね。よろしくね。年はいくつなの?」
「15歳になります」
「あら。一緒なのね」
「おお、それはちょうどいいじゃないか。二人ともこれからも仲良くしてくれ」
「はい。わかりましたわ。お父様。ちなみにミホさんは今はどちらにお住まいなのかしら?」
「はい。住むところと働くところがなかったのですが、紬さんのご自宅に住みながらお店で働く予定です」
「はぁーーーー!? い、い、一緒に住むですって!?わ、わ、わたわた、わたくしですらまだなのに!?あとから来てよくもまぁぬけぬけと!
紬お姉様!私もぜひご一緒に住まわさせてください!」
「紬ちゃんがよければよろしくたのむよー」
えーっと。なんだろうこれはー。なんでお姉様なんだろう?そして圧がすごい。一緒に住むの!?
「いいんじゃないカ?ツムギ。にぎやかなのかイイゾ」
デンさんもそんな簡単に! 王女様なんですよ!?
「んーみんながいいなら問題ないわよ。お部屋も空いているし。よろしくね。ミキちゃん」
「はい!お姉様!デン様もよろしくね!ミホさんもよろしく」
なぜか私は睨まれてるー。ただ、なんとなく王女様は紬さんのことが好きなんだと感じた。ここは当たり障りのない感じで接した方がよさそう。
若干話の腰が折れたものの、私はこのまま紬さんのお世話になることと王女様も一緒に住むことが決まった。
今、わかっていないのは、
この世界へ来た理由。
三人とも令和四年から来たのに時期がずれているのか。
三人のほかに転移した人がいるのか。
そして日本へ戻る方法
……いや、わかっても戻らないかな。
お城から帰ったあと、すぐに王女様がやってきた。そしてそのままお引越し作業を手伝うことになった。あまり広くない部屋なので荷物も少しにしたみたいですぐ運び終わった。
最後の荷物を部屋へ運ぶと王女様に呼び止められる。
「ねぇあなた。紬お姉様とどういったご関係なのかしら!?どうして私より先に一緒に住んでいるの!? 日本でも一緒だったのかしら!?」
怒涛の質問……というか尋問攻め。返答をする暇もなくぐいぐいと来られる。とりあえず距離を取りながらこれまでの話をもう一度王女様にした。
「大体事情はわかったわ。でもそれとこれは別よ。私はまだ納得していませんわ!ま、まぁここに住めることになったからそれはそれでありがたいけど……。そうね。ありがとうございました。ですわ。これからよろしくお願いしますわ」
「こちらこそよろしくお願いいたします」
「そういえばあなた……」
「ミホだけで大丈夫です」
「そう。ミホ。なんとなく名前も似ているわね」
「なんか申し訳ないですミキ様」
「気にすることないわ。ミホはここで暮らしながらどうしていくの?」
「保護猫カフェで働いていくつもりです」
「そうなのね。学校は通いませんの?」
「学校があるのですか?」
「ええ。私が通っている魔法学校がありますわ。魔法だけではなく一般教養などなんでも学べるのです。よろしければ入学できるように掛け合ってあげましょうか?
「魔法学校ですか……興味はあります」
「じゃあ……」
「ごめんなさい。興味はあるのですが拾っていただいた紬さんにここで働かないかと誘われたのがとても嬉しくて……恩返しもあるので働こうかと思っています。なのでごめんなさい。ありがとうございます」
「律儀だしちゃんとしているのね。うん。気に入ったわ。いいのよ気にしなくて。ただ紬お姉様に迷惑をかけないように頑張るのよ」
「もちろんです。ありがとうございます」
”コンコン”
「ミキちゃんミホちゃん。夕ご飯のお時間なので行きませんか?先に向かってるわね」
紬さんが声をかけてくれた。
それを聞きさっそうとミキ様は部屋を飛び出していった。
「……本当に紬さんのことが大好きなんだなぁ……」
「もちろんですわ!」
廊下の向こうから叫び声が聞こえた。
しかしこんな簡単に王女様が一般家庭に住んでいいのだろうか……。それだけ平和なのかな?
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