第50話 必死な新垣さん
野乃花とは、毎日一緒に登校した。お昼も一緒だ。教室の皆も俺達は付き合っているんだという認識でいるみたいで、俺達が二人でいる時は、皆話しかけてこない様になった。
図書室担当になる月、水、金の時は、新垣さんが来てくれるけど、何故か水島さんも一緒に来る時があり、新垣さんが何か俺に話しかけようとすると水島さんが彼女に話しかけていた。
水島さんが、図書室に来なかった日に新垣さんが、話しかけて来た。
「工藤君、今日一緒に帰れる?」
「別に構わないけど」
「良かった」
図書室を閉めて職員室に鍵を返して下駄箱に行くと新垣さんが待っていた。
「ごめん、待たせた」
「ううん、全然待っていないよ。帰ろうか」
一緒に校庭を出て校門を過ぎた辺りで
「ねえ、工藤君は門倉さんと付き合っているの?」
いきなり聞いて来るな。
「質問の意図が見えないんだけど」
「私ね、君の事が好きなの」
「えっ?でも知合って二ヶ月しか経っていないよ。図書委員になったのだってまだ数週間だし」
「そんな事ない。工藤君の事は去年から知っているし、三学期は毎日来ていたから」
「だって、あの時は話す機会無かったし、随分新垣さんに睨まれていた感じがするから、俺の事そういう目で見ているなんて知らなかったし」
「あれは、工藤君がモテ過ぎたから、怒っていたの。私だって一緒に居たいんだって」
「そ、そうなの?」
「うん、だからね、もし工藤君が門倉さんと付き合っていなかったら私、君とお付き合いしたい。付き合っていたとしても君にアプローチしたい」
「でも、話し始めてから二ヶ月にもならないのに俺のどこが好きなの?」
「全部、君を見た時に一目惚れしたの。それから君と色々話して図書員になってくれて、君の仕草の一つ一つが全部好きになった。お願い。私と付き合って。私の全てをあげる。まだ男の人と付き合った事無いから初めてだよ」
おい、俺はなんて返せばいいんだ。
駅に着いてしまった。
「新垣さん、もう一度良く考えて。俺なんかと付き合っても…」
「良いの。好きなんだから!」
「ちょ、ちょっとそんなに大きな声で言わないで」
「じゃあ、そこのファミレスでもっとお話させて」
「ごめん、俺この後用事が有るんだ。だから今度にしよう」
「でも」
「ごめん、急ぐから。じゃあまた」
「工藤君」
不味いな。何とか私に振向かせないと。今のままでは門倉さんに取られてしまう。体を使ってもと思ったけど、興味持ってくれないみたいだし。明後日の金曜日、水島さんを来させない様にしてもう一度誘ってみよう。
クラス委員長は水島さんの事を気に入っている。彼を利用して水島さんを図書室に来させない様にすればいい。
私は翌日、早速クラス委員長に声を掛けた。廊下に連れだすと
「ねえ、水島さんが君の事気にしているみたい。明日にでも誘ってあげたら?」
「いや、それは…」
「例えば、何かクラス委員の仕事を作って、その後、誘うとか」
「でも、そんな事」
「水島さんの事好きなんでしょ。彼女、君から声を掛けられるの待っているわ。頑張りなさい」
「わ、分かった」
ふふっ、上手く行かなくてもいいし、上手く行けば良しだ。あっ、早速水島さんの声を掛けている。
金曜日の放課後、クラス委員長が上手く水島さんに仕事頼んでいる。これでいい。私は図書室に行こう。
予鈴が鳴った。
「工藤君、今日一緒に帰りたい」
「ごめん、今日は門倉さんと一緒に帰る約束しているんだ」
「そ、そう。じゃあまた今度ね」
「うん、さよなら」
野乃花と一緒に帰る約束はしていない。でも新垣さん多分、この前と同じ事を言ってくるはず。だから悪いけど嘘ついた。
俺が、図書室を閉めて鍵を職員室に返して下駄箱に行くと新垣さんが居た。
「あれ、帰っていなかったの?」
「うん、私も門倉さんにお話が有って」
「えっ!」
不味い。約束していないのに。仕方ない、演劇部の部室に行くか。
「でも、まだ来ないよ。俺これから演劇部の部室に行くんだ。まだ時間かかると思う」
「え、そうなの?」
本当かな。彼が演劇部の部室に行くなんて考えられない。校門で待ってみるか。
「仕方ないな。じゃあ私帰る。また来週ね」
「うん、さようなら」
ほっ、良かった。取敢えず部室に行く振りをするか。
本当に部室に向かったよ。本当だったのかな?まあ、校門で待っていよ。
俺が演劇部の部室に行く途中まで来ると
「あっ、工藤君」
「えっ?門倉さん。もう部活終わったの」
「うん、今日はちょっと早く終わった。もしかして迎えに来てくれたの?」
「うん」
まあ、渡りに船という事で。
「ふふっ、嬉しいなあ。じゃあ一緒に帰ろうか」
「野乃花、この子が工藤君?」
「うん」
「ふーん、まあ野乃花が好きならまあいいや。じゃあねえ」
どういう意味だ?
「あれどういう意味?」
「良いよ。それより一緒に帰ろう」
「うん」
嬉しい。祐樹が迎えに来てくれた。理由は分からないけど、彼が私を見てくれているんだ。
私達が校門の所に来ると新垣さんがいた。私達の姿を見ると急いで駅に向かってしまった。どういう事?
「祐樹、新垣さん、ここで何していたんだろう?」
「さあ?」
彼女結構しつこいな。気を付けないと。
まさか、本当に門倉さんを迎えに行っていたなんて。不味い不味い不味い。早く彼を私に向かせないと。
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