第32話 平穏な日々


 私、緑川優子。昨日工藤君と遊園地に行って最高の状態で終えたはずなのに、彼から来たメールは心菜を選ぶという内容だった。

 

 朝、学校に登校した後、野乃花にも聞いたけどやっぱり同じような内容でがっかりしていた。里奈は何故か、まあいいよという感じでさっぱりしていた。何か怪しい。


 いつもは来ているはずの心菜が来ていない。どうしたんだろうと思っていると…。

なんと工藤君と手を繋ぎながら教室に入って来た。


 皆の注目の的になった。


「ねえ、工藤君、橋本さんと手を繋いでいる」

「あの争奪戦は橋本さんの勝利?」


「はあ、橋本さんのあの胸は工藤の手に落ちたか」

「一度でいいから触りたかった」

「何言っているんだ、お前は」



 俺達は、教室に入ると一度手を離した。自分の席に行くと

「おはよ工藤、争奪戦は橋本さん勝利か?」

「おはよ小見川。ああ、心菜を選んだ」


「きゃーっ、工藤君、橋本さんを名前呼びしたわよ」

「聞いた 聞いた。これは本物ね」


 心菜がバッグを机の横に掛けるとすぐに俺の傍に来た。

「祐樹、お昼一緒ね」

「うん、そうしようか」


 きつい視線を感じてそちらを見ると緑川さんと門倉さんが悔しそうな顔をしている。水島さんは、何故かニコニコしているけど。



 心菜と話をしていると予鈴が鳴った。

「祐樹、じゃあ後でね」

「うん」




 午前中の授業が終わりお昼休みになると直ぐに心菜がお弁当を持ってやって来た。

「はい、これ祐樹の分」

「えっ、作って来てくれたの?」

「当たり前でしょ。彼女なんだから」


 ちょっと視線が痛い。




 私、門倉野乃花。工藤君とデートをした。とてもいい雰囲気で別れたからもしかしたらと思ったけど、送られてきたメールは優子と似たようなものだった。

『門倉さん、とても素敵な一日をありがとうございました。もし君とお付き合い出来たらどんなに幸せか分かりません。でも俺は橋本さんを選びます。ごめんなさい』


 そのメールを貰った時は悔しくてちょっと涙が出た。その後、直ぐに優子に連絡して話をした。そして出た結論は


 半年もしない内に別れる。


 だった。

 心菜は真面目で良い子だけど性は結構奔放な子。多分工藤君とは上手く行かないんじゃないかという考えだ。


 だから、それまでは悔しいけど我慢して、改めて決着をつけようという事になった。だけど不思議な事に里奈は、もう良いと言っていた。


工藤君との間に何が有ったのか知らないけどライバルが少なくなるのは良い事だ。それにもしその時優子を選んだとしても彼女だったら祝福できる。でも心菜は何故かもやっとする。とにかく今は我慢だ。




 お昼休みになり優子と里奈と一緒にお昼を食べていると里奈が小声で

「優子、野乃花。あの二人は長くは続かないわ」

 私と優子が出した結論と里奈が言って来たことが一致した。どういう事?


「里奈、どうしてそう思うの?」

「ふふっ、それは内緒だけどね」

 絶対に里奈が工藤君とデートした時何か有ったんだ。まさか…。




「祐樹、もうはっきりしたんだから、あの三人は気にしない」

「そう言われても視線が」

「大丈夫。それより再来週から中間考査よ。今日から図書室で勉強会しよう」

「そうだな」



 それから放課後は金曜まで毎日図書室で心菜と二人で勉強した。受付の女の子には睨まれたけど。

土曜日は、洗濯掃除と稽古が有るので、会わなかったけど日曜日は朝から心菜が俺の部屋にやって来て、ずっとした。


 午前中一回目が終わった時、

「ねえ、工藤君。お願いが有るの」

「なに?」

「・・・して」

「えっ!」

「お願い」


 俺は心菜にお願いされた事をするととても喜んでいた。こんな仕方もあるんだ。それがきっかけで別の事もお願いされた。それもしてあげた。


 そしたら今度は、俺のあれを・・・してくれて。ちょっと驚いたけど。


 午後三時過ぎ、もう流石に疲れた。

「心菜、ちょっと休もう」

「もう一回したら」




 もう駄目、疲れて意識を失ってしまった。


 ふふっ、祐樹に色々して貰った。前より全然いい。でも何か物足りない。何故なんだろ?でもいいんだ。大好きな祐樹とこうして居られる。これだけでも嬉しい。彼の綺麗な寝顔を見れるのは私だけ、嬉しい。



 結局、この日は午後五時まで水を飲む以外はしっぱなしだった。お腹も空いたけど、心菜を送って行くと結構な時間になる。

 仕方なしに、洋服を着るとそのまま彼女の家のある駅まで送って行った。その後、マンションの部屋まで戻ると、もうお腹が空き過ぎて限界だったのでカップ麺とチャーハンをチンして食べた後、シャワーを浴びて寝てしまった。疲れた。




 翌火曜日から金曜日までの中間考査が始まった。この週は流石に会う事は止めて俺も心菜も家で勉強した。



 そして中間考査が終わった翌土曜日俺はいつもの洗濯掃除と稽古を終わらせて、一人で部屋に居ると心菜から連絡が有った。


「祐樹、明日も朝から行って良いよね」

「いいけど。午前中買い物しないといけない」

「じゃあ、そっちの駅の改札で待合せしようか。午前九時でいい」

「良いけど、心菜その時間に来るの大変じゃない?」

「ふふっ、いいの、いいの。祐樹と会えるんだもの」

「そうか、じゃあ明日九時で」


 心菜、そんなに俺の事思ってくれているんだ。心菜を選んで良かった。



 翌日は、午前九時に改札で心菜と会った後、直ぐ側のスーパーで買い物をした。その後部屋で二回ほどした。

 流石にこの前の様な事にはしたくなくて心菜が作ってくれたお昼を一緒に食べた。でもその後、また三回もした。心菜ってほんとこれが好きなんだ。でも偶には映画とか外で食事とかしなくて良いのかな?



 帰り際に彼女に

「なあ、偶には映画とか外で食事とかしなくていいの?」

「いいの、私は祐樹こうして居ると幸せだから」

「そうか、それなら良いんだけど」



 そんな感じで十月も過ぎ、十一月も終りの土曜日の夜、心菜から連絡が有った。

「祐樹、突然でごめんね。明日急に家の用事が出来て行けなくなったの」

「そうなのか。残念だけど仕方ないよ。家の用事なら。学校でも会えるし」

「うん、そうだね。じゃあ、学校で」


 俺はスポッと空いてしまった日曜日、最近行かなくなっていた午前の稽古に行く事にした。


 翌日午前九時半に道場に行くと師範代が日曜日午前は久々だなと言って喜んでくれて、この日は手合わせもしてくれた。

 二時間みっちり稽古をして、タオルで汗を拭いた後、道場を出ると


「「あっ!」」

「工藤君!珍しいね。日曜日は心菜と会っていると思っていたのに」

「今日彼女、家の用事が急に出来たとかで会えなくなったんだ」

「ふーん。そうなんだ。じゃあ、私と遊ぶ?」

「それはちょっと、流石に出来ないよ」

「ふふっ、真面目な工藤君じゃ無理かな。じゃあまたね」


 工藤君が駅の方向に歩いて行った。でも心菜の家の用事って?…まさかねえ。まだ二ヶ月半だし、流石にそれは無いかぁ。


―――――


投稿意欲につながるので少しでも面白そうだな思いましたら、★★★頂けると嬉しいです。それ無理と思いましたらせめて★か★★でも良いです。ご評価頂けると嬉しいです。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。


 

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