第23話 夏休みが終わりやがて二学期になり


 明日から二学期だ。橋本さんと門倉さんに告白されたけど、どちらと付き合うなんて考えが及ばない。


 水島さんは、彼氏が居るから俺に対してはそんな感情は無いだろうし、緑川さんだって俺の事良い友達って感じに思っていると思う。


 橋本さん、元気が有って可愛いけど、結構俺のプライベートゾーンに勝手に入ろうとするあの態度は好きじゃない。


 じゃあ、門倉さんは?可愛くて性格も良さそう。スタイルだってとってもいいし、自分の立ち位置をわきまえている。

 二十五日だって少し強引だったけど、あそこまで言うからには覚悟が有っての事。


 でもなあ。

 皆俺なんかよりお似合いの人がいると思うんだけど。


 四月の終りに美月に振られてからまだ四か月。でももう四か月。肝心なのは俺の心の中。美月への思いは消えている。だったらいいのかなぁ。




 翌日、九月一日。なんと金曜日。予定では始業式の後、二限有って終わりだ。明日、明後日は土日だ。

 俺は、夏休みの宿題と教科書とノート、それに布袋に入れた洗っておいた上履きをスクールバッグの中に入れると学校に向かった。



 学校について教室に入ると隣の席に座る小見川が

「おはよ工藤。良く焼けているな」

「ああ、夏休みは外に出るのが多かったからな」

「それはハーレムの事かな?」

「…………」


「ふーん、沈黙は肯定と見なされるってところだな。でっ、どうだったんだ。感想聞かせろよ」

「まあ、俺の惨敗ってところだよ」

「惨敗?どういう意味?」

「その通り」



 俺と小見川が話していると担任が入って来た。

「始業式を行います。全員廊下に出て体育館に行くように」


 全員がガヤガヤと出て行く中、俺も小見川と一緒に出ようとすると橋本さんが近付いて来た。

「工藤君、今日の帰り一緒で良いかな?」

「別に良いけど」

「ありがと。じゃあ後で」


「おい、工藤。本当は全敗じゃなくて全勝だろう?」

「…………」

 言い訳が出来ない。



 

 校長先生の話が終わった後、教室に戻ると緑川さんと門倉さんが傍にやって来た。

「工藤君、放課後ちょっとだけ良いかな」

「時間かかる?」

「全然、直ぐ終わるから」

「分かった」


 二人が席に戻るとまた小見川が、

「工藤、やっぱり事実を教えてくれ」

「見ての通りさ。参ったよ」

「贅沢な奴だな。でっ、ナンバーワン候補は誰だ?」

「分からん。あまりその気が無いんだよ」

「呆れた。俺だったら嬉しくて悩むのに」

「変わってもいいぞ」



 小見川と話していると担任が入って来た。

「皆さん、夏休みの宿題を提出して下さい。教科別の宿題は各担当の先生に提出する様に」


 その後、事務連絡を伝えてくれた後、教室を出て行った。予鈴が鳴って、代わりの現文の先生が入って来た。


 二限とも夏休みの宿題の答え合わせと説明だけだったので、簡単に終わった。この後、緑川さんと門倉さんが話が有ると言われたから待っていると先に橋本さんがやって来た。


「工藤君、帰ろ」


 あっ、二人がやって来た。

「心菜、私達工藤君と話があるから一緒に帰るのはその後にして。工藤君、駅前のファミレスに行かない?」

「えっ、それじゃあ私が工藤君と話せない」

「緑川さん、門倉さん。俺、橋本さんと先に約束しているから話すならここにして。ファミレスには行かないよ」

「そうかあ、工藤君、この土日は空いている?」

「用事入っている」

 本当は稽古だけだけど、一人になりたい。


「じゃあ、月曜日で良いかな?」

「それならいいよ」


 二人が、教室を出ると俺達も直ぐに教室を出た。校門を出ると橋本さんが

「ねえ、工藤君、明日少し時間無い?」

「さっき、聞いた通り。用事がある」

「ずっと一日中用事が有るの?」

 なんでそこまで会いたいんだ。


「橋本さん、何か急用でもあるの?月曜日じゃ駄目なのかな?」

「駄目!」


 優子と野乃花は間違いなく工藤君に迫って来る。だからその前に私がしないと。


「うーん。困ったなぁ。本当に用事が有るんだよ」

「じゃあ、二時間でも良い、一時間でもいい。私に時間を下さい」

 この子は本当に食い下がるな。


「そこまで言うなら。分かった、じゃあ明日の午後二時からならいいよ」

 稽古は午前中に行く事にするか。


「ありがとう。良かった、会えなかったらどうしようと思っていた。午後二時に君のマンションのある駅に行く」

「…………」

 どういう意味なんだ。



 俺達は、駅で別れると俺はそのままマンションに帰った。本当は明日の朝の内に掃除や洗濯をして、それから稽古に行ってから買い物という予定だったのだが、買い物は今日中に終わらせて、洗濯と掃除を日曜日にするしかないか。しかし、橋本さん、何の用事があるんだ?



 翌朝、俺は朝食を済ませると稽古に出かけた。朝一と言っても午前九時半から二時間の枠だ。初心者は、午後の部からなので、朝は有段者のみ気合が入る。俺も小学校三年からだからもう七年になる。道場でもいわゆる顔になった。


 師範代からは、そろそろ準師範のテストを受けないかと言われているが、そこまで気を入れるつもりはないので丁寧に断った。


 午前十一時半になり午前の部が終わった。俺は汗をタオルで拭いて着替えてから道場の外に出ると

えっ?ばったりと門倉さんに会ってしまった。


「あっ、工藤君だ。こんにちわ。稽古に来ていたんだ。連絡くれれば良かったのに」

「いや、ちょっと悪いし」

「全然、悪くないよ。それより私の家、すぐそこなんだ。寄っていく?」

「いや、流石にそれは」


 今は俺自身汗臭いだろうし、それに誘われたからっていきなりクラスメイトの家に上がるのは非常識だ。


「まあ、そうだよねぇ。ねえこの後時間有る?」

「ごめん、この後も用事が有るんだ」

「そっかあ、残念だなぁ。じゃままた今度」


 やっぱり門倉さんは決して無理をしない。家に帰って行く後ろ姿を見ながら、ちょっとだけ心が揺れた。



 マンションに戻ると急いでシャワーを浴びて昼食を摂った。と言ってもカップ麺だけど。橋本さんは、午後二時にこちらの駅に来ると言っている。

 もうすぐ午後一時半になる。少し早いけど迎えに行くか。あれっ、今日はどうするんだっけ?



 橋本さんから会いたいと言われただけで何をするかも聞いていないし、待ち合わせがこちらの駅なので分からないままに駅に行くと、まだ二十分前なのにもう橋本さんは来ていた。


 白の半袖ブラウスとフレアなスカート。それに肩掛けの可愛ハンドバッグ。とても彼女に合っている。


「橋本さん早いね」

「うん、工藤君に早く会いたくて」

「そう」


「ねえ、今日、工藤君のマンションに行っても良いかな?」

「えっ?!」

「君とゆっくりと話したい」


 何となく流れで俺のマンションの部屋に連れて来てしまった。一度彼女を連れて来ているから抵抗が少なくなっていたのかも知れない。彼女は部屋に入るとそのままリビングのソファに座った。



「今、冷たいジュースを用意するから待ってて」

「うん、ありがとう」


 心菜、充分注意しながらだよ。心の声に励まされながらしっかりと工藤君を見ると彼は冷蔵庫から冷えた炭酸のアップルジュースを出してグラスに注いでいた。それをこちらに持って来ると


「はい、ところで話って?」

「うん、この前、公園でお願いした件の返事聞きたくて」

「…………」


 この時まではまだ何も決めていなかった。だけど俺が黙っていると

「やっぱり私じゃ駄目?」

「そんな事は無いんだけど…」

 ここで彼の頭の中にあるライバルを消す必要がある。その為には


 橋本さんが俺の隣にやって来た。何のつもり?


「工藤君が考えているって事って分からないけど、もし私の至らない所有るなら直すから、だからお願い」

「うわっ!」


 橋本さんが抱き着いて来た。凄いボリュームの彼女のお胸が俺の体に当たって来た。その勢いで倒されてしまった。


「工藤君」


 彼女はゆっくりと俺との顔の距離を詰めると

えっ、そのまま唇にキスをされてしまった。女の子とキスするなんて初めての経験。彼女の唇の柔らかさに驚いていると彼女の左手が俺の右手を掴んでそのまま…。


「工藤君、貰って。お願い」



 緊張と初めての興奮と頭の中の混乱のまま彼女がもう一度唇を合わせて来た。頭が真っ白だった。


 手には彼女のとても柔らかくて、俺の手でも溢れるほどの大きさ。彼女がもう一つの手でブラウスのボタンを外している。不味い。でも…。


 俺の右手を離し彼女が両腕を後ろに回すと、目の前に重力に従った彼女のたわわなナマお胸が俺の目の前に現れた。


 俺の心の中のブレーキが外れてしまった。



 全く何も分からないままに夢中でしてしまった。途中、寝室に行ってその続きをした。良く分からないけど一生懸命だった。




 ふふっ、彼が私の横で目を閉じている。して貰った。これで工藤君と付き合う事が出来る。彼は責任感が強い人。決してこのまま私を無視したりしない。

 あっ、彼が目を開けた。手があっちに伸びた。




 やってしまった。どうしよう。橋本さんに乗せられたとはいえ、どこかで断る事は出来たはず。でも自制心より興味が先に走ってしまった。でもこの子と付き合うのは…。

 あっ、彼女が目を開けた。


「工藤君、しちゃったね」

「…………」

「まだ、私じゃ駄目なの?」

「橋本さん、はっきり言って、迷っている」

「何処がいけないの?」


「君は俺のプライベートゾーンに勝手に入ってこようとする。俺はそういう事されるのが嫌いなんだ」

「じゃあ、じゃあ。それを直せば私を恋人にしてくれる?」

「…本当に出来るなら」

「分かった。絶対に直す。公園で言った二ヶ月のお試し期間中に絶対に直すから」

「そこまで言うなら」

「じゃあ、もう一度して」


 彼は、夢中でしてくれる。余裕も何も無いけど、今は仕方ない。私もそれなりに気持ち良いし。これで良いんだ。



 机の上にある時計を見るとなんともう午後六時を過ぎていた。ここに来てからの事を考えると三時間半もしていたのか。

「橋本さん、そろそろ帰らないと」

「やだ!」

「流石に泊まるのは」

「じゃあ、明日また来てもいい?」

 明日洗濯と掃除しないといけない。仕方ない


「午後からなら良いよ」

 私はここで午前中何しているのと聞こうとして止めた。言えないという事は、これが彼の言うプライベートゾーンなんだ。


「分かった。明日は午後十二時にここの駅で良いかな?」

「いいよ」

「後、名前で呼んでくれると嬉しい」

「構わないけど、学校じゃ橋本さんでいい?それと、学校ではべたべたしないで」

「うん、お試し期間中だものね」

 良かった。悪目立ちしすぎるから。




 次の日も結局同じ事になってしまった。

 

―――――


 おやおや。


投稿意欲につながるので少しでも面白そうだな思いましたら、★★★頂けると嬉しいです。それ無理と思いましたらせめて★か★★でも良いです。ご評価頂けると嬉しいです。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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