第4話 体育祭が終わったら


 体育祭が終わった。俺達はクラスに戻ると橋本さんが寄って来た。

「ねえ、工藤君。この後さ…用事ある?」

「いや、無いけど」

「だったらね。私と打ち上げしない」


「ちょっと待ったあ。橋本さん、何一人で抜け駆けしているのよ」

「そうよ。打ち上げだったら一緒でしょ」

「工藤君、私達と一緒にしない?」


 俺は橋本さん以外に寄って来た女子達を見ながら唖然としていると

「えーっ、工藤君は私と…」

「「「だめ!」」」


 周りを見るとニタニタしている奴もいれば無視を決め込んでいる奴もいる。小見川に目をやると

「あっ、俺帰るから」

「そ、そうだな。疲れたし、汗かいているし。俺も帰るよ」

「「「「えーっ!」」」」


「工藤は行ったら」

「小見川。俺を見捨てるのか」

「いや見捨てないけど。そういうの苦手だし。まあ頑張れや」

「俺も苦手なんだけど」


 俺に声を掛けた女子の一人が他の男子達にも声を掛けている。これは不味いぞ。あっ、戻って来た。


「工藤君、他の男子も行くって言うし、行こうよ」

「いや、小見川が行くなら」

「こらっ、俺を巻き込むな」

「ねえ、小見川君。一緒に。ねっ!」

 一人の女の子が目をキラキラさせながら胸元で手を組んで上目遣いで小見川を見て来る。


「ふふっ、小見川諦めろ」

「くっ、しかし」

「ねえ、小見川君」

 女子がぐっと小見川に寄って来た。小見川は体をのけ反りながら


「わ、分かったか。それ以上は」

「えっ、行ってくれるの。やったぁ。じゃあ、工藤君決まりね」

 小見川が呆れた顔をしている。



それが決まると女子達は一斉に教室を離れた。

「あれ、行かないの?」

「工藤、お前本当に分かっていないな。戻って来れば分かるよ」


 五分もしない内に四人が戻って来た。みんないい香りがする。

「なっ、分かっただろう。まあ、男でも気にする奴はいるけどな」

 そう言えば一緒に行く予定の男子何人かが一緒に消えていた。



 最近は駅の近くには色々ある。ここのカラオケボックスはこの時間はまだ安いらしい。それに学生割引もある。なるほど。


 受付を済ませた男子が、ドリンクはそこのバーから飲み物持って行くから皆好きなの注いでと言って来た。



 それから、十人席の部屋に九人で座った。一応、男子側五人、女子側四人という感じで別れた。

 俺は何をどうすればいいのか分からなくて見ていると、こういう所が慣れているらしい男子が、


「工藤ってさ。俺達の名前知っている?ほとんど話した事もないから分からないだろう。自己紹介してから歌うか」

「それがいいよ。打ち上げは懇親会も含んでいるからね」


「じゃあ、俺からな。俺は前田弘行(まえだひろゆき)。バスケしている」

 なるほどそれで背が高いんだ。


「俺は一条弓弦(いちじょうゆずる)。吹奏楽部でバスクラしている。演奏会の時は見に来てくれ」

 へーっ、こんな奴いるんだ。


「俺は、田中秀衡(たなかひでひら)。一応野球部でセンターだ。まだ補欠だけど」

 なるほど。


「俺は小見川雄介。陸上部だ」


「俺は、工藤祐樹。帰宅部。特徴無し」


「まあ、工藤以外はみんな顔見知りだ。女子頼むな」


「はいはーい。一番目は私、橋本心菜。帰宅部でーす」

 この子、部活入っていないんだ。


「私、緑川優子(みどりかわゆうこ)。吹奏楽部でフルートしています。弓弦とは幼馴染だよ」

 へーっ。


「私、門倉野乃花(かどくらののか)。演劇部でーす」

 確かに輝くものあるな。


「最後は私、水島里奈(みずしまりな)。帰宅部でーす」


「ようし、じゃあ。皆グラス持って。乾杯だ」

「「「お疲れ様!」」」



 それからはみんな好きな歌を歌っていた。俺は全くダメだったので、歌うのは諦めて貰った。


 皆仲が良いのか。固まらずに色々話していたけど、段々…俺の周りに寄って来て

「ねえ、工藤君。明日と明後日何しているの?」

 そういえば土日だ。


「私も、時間開いているよ」

「そうそう、私も」

「だめ、工藤君は私と」

「だめだよ。心菜。一人占めは」


「あははっ、そろそろ帰る時間だね。じゃあ俺はこれで」

「「「「駄目!」」」」


 俺は他の男子を見るとみんな諦めろという顔をしている。



 結局、カラオケには二時間しっかりといた。他の男子に目配せしてなんとか俺への集中は防げたが、これ現実だと大変そうだ。




 やっとみんなで表に出ると緑川優子さんが

「あれ、あそこ」

「「どこどこ?」」


 美月が高田と恋人繋ぎしてこっちに歩いて来た。

「ふーん、毎日ね」

「「そだね」」


「帰ろ帰ろ、あんなの見ていると目が腐っちゃうよ」

「工藤君帰ろ」

「えっ?」

橋本さんが、いきなり腕を掴んで来た。


「心菜、抜け駆けは駄目って言ったでしょ」

「だってぇ」

「とにかく、公平で勝負だよ」

 なんの勝負だ?


 それを見ていた他の男子が

「あははっ、工藤。大変だな」

「工藤、こいつら結構しつこいぞ」

「ああ、気を付けてな」

「「「じゃあなあ」」」


「工藤俺も帰るわ」

「小見川。お前もか?」

「俺を誘った罰だ。がんばれよ」



 男子では一人きりなった俺は、彼女達を説得して…したはず、何故か水島さんと門倉さんが俺と同じ方向の電車だと分かった。橋本さんは反対方向に八つ目と聞いている。緑川さんは徒歩通学だ。


 

 改札で別れる時、橋本さんが悔しそうな顔をしていたけど仕方ない。水島さんと門倉さんと一緒に電車に乗ったが、俺が直ぐ二つ目の駅で降りると残念そうな顔をしてそのまま乗って行った。


 その日は、流石に疲れもあって風呂に入った後、早々に寝てしまった。




 翌朝、と言っても午前九時を過ぎていたが、冷蔵庫の中が空っぽの為、駅前のスーパーに行くと改札の近くに知った顔がいる。橋本さんだ。誰か知り合いがこの辺に住んでいるのかな?あっ、こっちを見た。


 手を振りながらこっちに走って来る。可愛い水玉のワンピースだ。


「工藤君!」

「橋本さん、どうしたの。この辺に知り合いでもいるの?」

 いきなり俺の顔を指さして


「知り合いは君だよ」

「えっ?」

「昨日本当は二人で帰りたかったけど、皆に邪魔されて、でも会いたくて。この駅だって聞いているから、ずっと待て居た」

「待っていた?何時から?」


「午前八時から」

「えーっ!なんで?」

「工藤君と会いたいから」

 凄い子だな。


「ねえ、工藤君の家に行きたい」

「えっ、ちょっ、ちょっと待って。展開が速いんだけど。どういう事?」

「私、ううん、工藤君のマンションに行きたい。駄目かな?」

「うーん、今、俺食料の仕入れに来たんだ。だからそれが終わらないと帰れない」

「じゃあ、一緒に買い物しよう」

「えっ?」

 何故か、俺の手を引いて入口で買い物籠を持って中に連れられて入ってしまった。




 今日と明日の食糧と水やジュースを買い入れるとエコバッグに入れてスーパーを出た。

「へーっ、本当に工藤君って自炊しているんだ」

「おかしい?」

「ううん、全然。感心しただけ」


 そんな話をしている内にマンションに着いた。

「ねえ、本当に俺の部屋に来たいの?」

「うん」

「でも俺男だよ。怖くないの?」

「うん」


 はぁ、朝午前八時から俺を待っていて、ここまで連れて来てこれで帰れは無いか。

「分かった、じゃあ部屋に行こうか」


―――――


 ここで出て来た男子と女子、今後意味有っての事でスペース割きました。自己紹介だけでしたが、個別には今後という事で。


書き始めのエネルギーはやはり★★★さんです。ぜひ頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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